Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート134
24 Dec 2025更新

2013年12月22日 くじゅう山


 気付いたらいつの間にか年の瀬である。いや、薄々は気付いてはいたのだが(なんのこっちゃ)。やっぱり昔に比べると格段と冬らしさはないなぁとは思うのですが、そこは流石に年の暮れ、山にはいくらかは雪もあったようで、先日は舐めてかかったら思いのほか体を酷使させられてしまいました。いや、もちろんやっぱり昔に比べると大したことないんですけどね、結局のところ舐めるか舐めないか、準備するかしないかで大変さはだいぶ変わってくるわけです。そりゃあ昔の状況で挑んでいれば大したことないわけですが、おそらく雪なんてほとんど踏まないだろう、楽しく登ってくるかなどという気持ちで入れば痛い目に遭うわけであります。
 時々いつのどこどこの山が大変でしたか、と聞かれることがあるのですが、そういうわけでシチュエーション次第でどうにも変わるものであります。先日の山みたいに「まあこのくらいなら甘い飲みものとかスープとか、そんなにいらんでしょ」などと言ってあまり持っていかなかったりすると「うわーもっとカロリー取らないと〜!」と苦しむことになったり、やたら準備して持っていっても余りまくって運んだだけになったり、と色々です。でも舐めてかかって苦しんでいては世話が焼けるというもの。どうせ時間が余るだろうと無駄に映画だけはたくさん持っていったのだが、見る時間などない、まったくバカの極みでありました。余裕こかないこと!これを来年の目標にしたいと思います。でも、余裕こくんだよね、結局。
 さて今回の写真ですが、冬のくじゅう山です。撮影は2013年12月22日、雪山ルート集の素材集めのために行きました。くじゅうは雪が降ったからといってルートが大きく変わったり、グレードがひどく上がったりするわけではなくどっちかというと雪景色になるくらいのものですが、日本全国の雪山を広く薄くまとめるためには九州の山をひとつくらい入れたい、それにくじゅう好きとしましては紹介しておきたいという無駄な(?)こだわりからチョイス致しました。それに冬のくじゅうは独特の景色が見られますので、そういった風景面でもやはり載せるべきと思ってリストに入れたのでありました。
 だがしかし、気分が良いのは構想を練っているときだけ。遠方ともなれば気軽に撮りに行くわけにもいかず、失敗したときは撮り直しも難しい。天候を見極めて行動しないと痛い目に遭うわけですが、この年はとにかく素材撮影で全くの余裕がなく、複雑なパズルのピースを一寸の間違いなく当て嵌めていかなくてはならないような状態にあったので本当に苦心致しました。そんなタイミングよく確実な行動決定で全部上手くいくわけないでしょうに、でもやらなくてはならないのです。ちなみにこのときは16日17日で焼岳に登っている。そこから次の晴れでどこか撮らなければ、、、といって「よし、くじゅうだ!」とはなかなかならんでしょうに。ただのギャンブルですよもう。
 そういうわけで出発は12月21日、天気予報に合わせてすべてを手配していたら飛行機代なんて結構高くついてしまいますから、このときはギリギリまで天候を読んで「のぞみ」で九州へ向かいました。さすがに前日に飛行機を利用する度胸はなかった、といったところでしょうか。そうしてお昼に博多着、そこから豊後中村へと向かい、バスで長者原に着いたのは午後3時半頃でございました。到着時の天候はしっかりドン曇りというか雪が舞っておりましたが、そうでもしないと綺麗な霧氷の雪景色は見られないわけで、でも本当に翌日晴れるのかどうかちょっと不安になるくらいの空模様でした。当然すぐに日が落ちて薄暗いなか法華院温泉を目指すわけですが流石九州、日の入りが遅いのは有り難い。北アルプスなんぞに比べると積雪がたいしたことなくて実に可愛らしい。こう、安心して雪山が楽しめるというのはいいものである。多くて足首上くらいの積雪、でもその割りには周囲の樹林はすっかり霧氷っぽくなっていて、おいしいところだけ楽しめる感じがグッド。そんなこんなでひどく真っ暗にならないうちに無事お宿に着くことができました。何せ冬山の中に入って温泉があるわけだから、こりゃあ気分も楽チンでございます。冬山がどこもこんなシチュエーションで楽しめたら、本当に楽しいだろうに。
 翌日22日。お気楽気分でひと晩を過ごし、翌日はしっかりと朝食を食べていざ出陣!といきたいところでしたが外を見てみると周囲の景色はガスガスガス。一面真っ白で視界も非常に不良でございました。いや、でも晴れてくるはずなのだからここはひとつ焦らずに、、、と言いたいところだが、予報ではもう晴れているはずである。翌23日は早く帰ろうとを考えているのであまり撮影時間もなく、この日に撮らないとまずいんですよとお空に声を投げかけてもどうにもならない。ちなみにせっかく来たんだからもうちょっと予定を長く見積もっておけばと言うかもしれませんが、スケジュール的に他にもまだ年内にどこか撮らなくては終わらず、さらに年末年始はまた違うところに行くのでそんな時間はない。この日に晴れなくてはならんのである。ならんのであるって言ったって、どうにもならんものはならんのである。
 とりあえずは小屋で待機していては劇的に晴れてきた場合対応できませんから、全くダメでも稜線には上がっておこうと7時くらいに出発しました。北千里浜を通って久住山へと向かうわけですが、なかなかのホワイトアウトっぷりで、15m先はよくわからんといった状況でした。なぜか土地勘があるので本能に従って歩くわけですが、何というか地形に対する記憶力みたいなものがいくらかあるのでそう悩むこともなかったですが。やっぱり冬山は無雪期にしっかりと登っておくというのは大原則ではあると思います。そうして稜線に上がって避難小屋まで来ましたが、まあなんというか天気は一向に変わらずです。でもひとまず待機であります。気持ちはちょっと焦り気味。ダメだったらどうしよう、そんなことばかり呟いておりました。
 待機すること1時間、状況はあまり変わらない。時間は8時半を過ぎている。ちょっとずつ本気で怖くなってくるがどうしようもないわけで。いくらかは視界が広くなってはきたが、空は鈍い色のままだった。ずっと避難小屋にいても仕方がないので暇つぶしに牧ノ戸へと向かうことにしました。待ってても寒いので何かしら動いて時間を潰す、そうして途中で天候も変わるかもしれない、牧ノ戸には心を温めてくれる自販機がある、ということです。一番最後の理由が決定打だったかもしれない。
 牧ノ戸へと向かっている途中でだいぶ遠くまで見渡せるようになってきた、のだが、その遠くまでずっと霧氷の森が続いており、うおおおお、とちょっとテンションが上がってきました。それでもまだ日の光がないのでグワッと盛り上がる感じはないのですが、それでも十分に見応えがある。だがしかしあと何時間かければこの雲が取れるだろうかと思い悩んでしまうほどまだ雲は濃く、厳しい状況が続く。周囲に登山者などほぼおらず、日曜日だろうがそりゃあこんな日に登ってこないだろうと思いますよ。晴れてくることをちょっとは期待しましたが、やはり曇空は変わらず、牧ノ戸に過ごすごと逃げていったのでありました。もはやここまでか。

わしを倒せるものがおるか!

 10時前頃だったか、牧ノ戸に着いたときも変わらず曇り空だった。もう首を括るしかないな、と覚悟を決めてゴシゴシと雪で首を洗いながらホットココアを飲んでいたところ、何が何だかわからんが一気に雲が移動し始めまして、いきなり日差しがグワッと差してまいりました。こうなることはわかっていたぜ!そうして不思議なことに雲が一気に移動し始めると同時に一気に駐車場にすんごい数の車が到着し始めました。次から次へと来る、まるで大漁旗を掲げた漁船が港に戻ってきたときのようにいきなり登山者がわらわらと押し寄せてきたのです。九州はこういう文化なのか?いくら簡単に山に入れるからといって「晴れた!」「行くぞ!」みたいなテンションである。中にはもう犬も連れてきていつものお散歩コースのような空気感を見せており、その高いテンションに圧されてこっちが負けそうである。いいなぁ、こういう山との親しみ方は。
 そんなわけで私も俄然やる気が湧いてまいりまして、再び牧ノ戸登山口からの登り直しです。沓掛山に上がるとまだ稜線には雲が残るものの、星生山や扇ヶ鼻を見渡す広い景色が広がります。そして一帯が全部霧氷!この無敵感!そう、私はやればできる子なんだ!そう思わせてくれる瞬間でありました。今回もまさか負けるなんて微塵も思っていなかった!と先ほどまでの弱気はすべて演技だったのだ、と万能感に浸りますが、すべては天気が為せる技、こういう躁鬱状態ばかり続くとおそらく脳に相当悪いでしょう。まあつい先日は焼岳でちょっと消化不良だったから、丁度良いということにしてください。
 沓掛山からはもうすべて周りが被写体状態で、低木についた霧氷はさながらサンゴの様。本当に綺麗ですから、面倒でもくじゅうの冬は絶対におすすめです。まあいつの季節もおすすめなのですが。そうして撮りまくりながら(というほど撮っていない)、再び久住分れの避難小屋付近に戻ってまいりました。(というほど撮っていない)というのは、やはりそこは美食家ですので、どんなに素晴らしい景色ばかりでも構図、画にならなければシャッターを押さないというこだわりがありまして、う〜ん、これは本当に後からもっと何でも撮っておけば良かったとも思うのですが、おそらく撮れないんでしょうね。何でも撮る、というのはむしろ何も撮れない、と言っているものでしょうから(と偉そうに言ってみる)。
 西千里浜、久住分れの手前ではだいぶ雲も晴れ、真っ正面に三角錐の格好良い久住山が姿を見せます。以前NHKBSにっぽん百名山くじゅう回に出演したときに、ここからの久住山はヒマラヤのプモリのよう、と紹介したのですが、まあ標高は違い過ぎますが、冬の久住山の景観は感動度合い的には匹敵するものがあります、多分。でも本当にそれくらい格好良い。そしてその先へと進むと最高峰の中岳が見えてきます。。。あの最高峰さえ撮れてしまえば、、、最低限形になる、来た甲斐がある。。。何だかんだで完全には雲が取りきれずいくらか周囲にまだまだ濃い雲が流れては残っておりますが、とりあえず光が当たって空が青ければ!
 凍りついた御池を通過し、何とかですが最高峰中岳を無事収めることができました!と言いながら久住山は良くても三俣山や大船山の方は結構雲が濃いので見渡してみると実は微妙なのですが、まあいいでしょう!これにて九州の雪山パートは抑えたのです!良かった良かった。晴れてくると本当に一気に登山者が増えて周りにもぞろぞろと人がいましたし、先ほどの散歩のワンちゃんも無事登頂、なんだかのどかな雪山でした。この時点で午後2時を過ぎていましたから、う〜ん本当にギリギリです。余裕があってもあと1時間といったところでしょうか、天候の回復が2時間遅れていたらと思うとゾッとしますが、そういう運命には私はないッ!
 その後はまた北千里浜へと下って法華院温泉へと戻りましたが、午後3時くらいだったか、また雲が広がりはじめて薄暗い空になってしまいました。なので山が夕日に染まるということもなく、たまたま運良く雲が短時間だけ抜けて晴れ間が出たという、何ともタイトロープな撮影でございました。翌日はまたドン曇りでしたので、本当にこの午前10時半から午後2時半くらいまでの4時間、この4時間のために遠方からギャンブルしてうまくいった、などと思うともう脳汁いっぱい出ちゃうわけです。もう天然フェンタニル、フィラデルフィアゾンビ状態です。ハワー。

 流石にこの任務をこなせただけで
 お腹いっぱい
 テンションは上がりますが
 そのぶん当然疲れます

 少し休みを入れたい。。。
 そう思って翌日からの天気図を見ると。。。

 北アルプスが晴れるらしい。。。

 23日に帰宅して、
 24日には中房温泉におりました。涙
 (レポート43へ続く)

TOP

Past Articles

※過去の記事は4回まで掲載。それ以上は順次削除します。

TOP