Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート115
16 Aug 2024更新

2011年8月12日 撮影・谷川岳


 暑いです。山の上ではいくらか涼しいですが、本来なら夏山でも朝晩は少し寒いという感覚だったはずなのですが、今やぬるい感じであります。夏になるといつも思うことでありますが、少し運動したりするだけで体がオーバーヒートしてしまって午後はもう使いものにならなくなってしまうので、これなら寒くても仕事が進む冬の方がいいよ!と思ったりするのですが、冬は冬で寒くて筋肉暖まらないからこれなら少しでも気軽に動ける夏の方がいいなぁ〜なんて思っているような気がするのですが、皆様はどんなもんでしょうか。勿論、冬は寒いだけでなく「日が短い」という気が滅入る条件もありますので一概に暑さ寒さだけでどちらがいいかなんて選べないのですが、やっぱりそのときの無い物ねだりをしているだけですかね?春秋はもう今や短すぎて一瞬のできごとなのでどちらがいいか、なんて俎上にも上がりゃしない。まとめると夏は暑すぎて疲れる、冬は暗い時間が多くて気が滅入る、対決だと思いますが、ともかく暑さでもう体が疲れて疲れて。。。もう早く夏が終わってちょ、と思うのは私だけでしょうか。いや違うんだ、やはり最近の夏は暑すぎる!
 ということで今回のレポートは暑い暑い谷川岳界隈からのものなのですが、いざ振り返ってみると今年より随分涼しい年だったような気がします。。。撮影は2011年8月12日、トップの写真を見る限りだといくらか形になっているのでぼちぼち撮れたのね、と思ってくれる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本登山道調査&晴天下のガイド用写真を望んでおりましたので結果的には惨敗、いや大爆死でありました。天気予報では晴れとは言っていたものの天気図的には怪しく、いやしかし行っておかないと終わらなそうなので行ったらしっかり雲を食らった、というところです。
 出発は前日の夕方、いつものように何も考えないようにして新幹線に乗り込み、高崎から普通列車で水上へと向かい、次いで土合へと進みます。何度も同じことをしているともはや遠出の旅行気分などというものはほぼなく通勤ルートと化してしまいますので、ここはぐっと堪えて行かないと面倒くさくて家を出るのを躊躇ったりしてしまうのです。殊に出かけた先で理想の天候に恵まれなかったら全くの無駄で、時間の無駄、体力の無駄、交通費の無駄と無駄のオンパレードになりますから、「谷川岳行こうかぁ〜」なんていうウキウキ気分は微塵もありませんのです、はい。そういう訳で無心で夜の土合駅へと辿り着き、シートを敷いて勝手に寝たのでありました。明日は晴れてね!と祈りながら。。。
 翌12日の朝3時に起床、3時半には出発致しました。まだ辺りは真っ暗なので晴ているのかどうか、星はチラチラと見えたような気もしますが、とにかくここから標高差約850mの松ノ木沢ノ頭まで行ってみないことにはどうにもなりません。土合で晴れていても日の出とともになんだか湿った雲が湧き上がってきて早速一日が終了、ということが標高の高くない谷川岳ではよくあることですので、全く油断はできないわけです。なので考えてもしょうがないので、ともかく樹林帯を抜けるまではいつも悩まないことにしております。
 暗い中を黙々と登ること約2時間弱、5時20分頃に谷川岳の眺めの良い松ノ木沢ノ頭に出ました。少しばかりの山上らしい爽やかな空気、樹林から抜けて浴びる心地よい朝の日差し、そして堂々たる姿の白毛門。ここに来るまでに天候がすごく不安で、うまくいくのかどうか本当に心配でしたけど、やっぱり何とかなるものです。持ってる!そう思って谷川岳の方を見やると、、、なんと稜線ガッツリと雲かぶってるじゃありませんか。。。う〜む、いきなり終了?いやしかしあの雲のかかり方だと焦らずじわじわと進んでいるうちにおそらく綺麗さっぱり無くなるんだろう、などとこの時は微塵も天気予報を疑わず、やれるはず、、、などと思っておりました。
 しばらくは松ノ木沢ノ頭で粘っておりましたがそう簡単には雲は取れない模様、仕方がないのでいつでも戻れるように牛歩で白毛門を目指しておりましたが、雲が取れないままあっさり白毛門に着いてしまった。この辺りでもうダメそうだな、と正直予感はしておりましたが、諦めの悪い私はおそらく30%くらいはまだだまだ終わらんよと思っていたと思います。いや、45%くらいはまだ思っていたかもしれない。まあ雲のかかる谷川岳もこれはこれで雰囲気があって悪くはないのだが、ともかく目当ての景色が撮れないことには負けであります。
 笠ヶ岳に着いたころにようやく負けを確信したような覚えがあります(遅い)。なぜならば、自分のいる場所も思いっきりガスに巻かれ、なんなら雨降り出しそうな感じになってしまいましたから。ここからはもうこれといってどうにもできず、とりあえず予定のルートを歩くことだけに専念することに。あとはとにかく歩いて朝日岳まで行って、宝川温泉に下るだけ。写真は撮れなくても一応登山道調査にはなりますから、まあ本当に一応の一応、何か意味のある行為なのかもしれないと言い聞かせながら行くしかないです。なにせこの年はこのちょっと前、7月末に新潟・福島豪雨があったばかりですから、群馬側とは言え登山道が崩落していることもあるのかもしれないわけでして。しかし振り返ってみると平日とはいえこの真夏に誰ともすれ違っていないような気がしますので、もしかして皆さん、今日天気が悪いって知ってた?

怪しいものではありません

 真っ白で視界ゼロの朝日岳を通過し、下の沢までは標高差700mほど、別にこれといって登山道が荒れていることもなく30分もかからずに宝川へと下りました。下りは早いですね。朝日岳で少し粘ろうかとも思いましたが、振り返る山上をみると一向に良くなる気配はありませんので下ってきて正解のようです。というかもう下っちゃったのでどうしようもできないですけれども。ここからぼちぼちと沢沿いを歩き、むしろ標高差700mの下りよりもここからの平坦な沢道の方が時間がかかったような。。。いつもの渡渉点まで辿り着き、靴を脱いで沢を渡りました。
 何だかおかしいな。。。と異変に気づいたのは渡渉してからの平坦な登山道と林道歩きでした。時折抉れて道がなくなっているところもあり、まあそれでもちょっとした距離、10mくらいですからちょっと高まいたりして対処できるのでいくらかやっぱり豪雨の影響を受けてるんだなぁと思うくらいでしたが、先に進むにつれ沢側の路肩ががっつり削れているところもあったり、下流に行くにつれ被害が大きくなっている感じでした。ただそれでも登山道的には歩けないほどでもないので注意書きくらいで済まされる程度なのですが、林道ゲートを過ぎて小広い平地に出たところで状況は一変致しました。山側の法面が横約150m、高さ50mくらいがごっそりと崩落しているのです。ぐわー、これはすごい。そしてその土砂が全部平地に流れてきていて、もう道なんてものはありません。一面土の山が出来上がっていました。これを乗り越えていかないと宝川温泉に辿り着けない。なんだか色々樹々も散乱していますので若干の注意は必要ですが、これが崩れた瞬間にここにいたらたまったもんじゃないなぁとは思いました。
 まあでもこんな土の山は乗り越えればいいでしょ、と歩き始めた矢先!なんとまだ固まっていない!土よいうより泥!気づいた時にはすでに遅し、地面に力がかかった瞬間ズボッと腰まで泥に埋まってしまったではありませんか。ウワー!!助けてー!サムソンティーチャー!と叫んでみるも無論周囲にはサムソンティーチャーらしき人はいない。いや、焦るな、無駄な動きさえしなければ無駄に沈むこともないはずだ。まるで空中で静止するように、腰の位置でなんとかピタッと止まり、これ以上沈まないようにゆっくりした動作でゆっくりと体を泥から引き抜いたのでありました。この先は沈まないよう、地雷原を歩くように(歩いたことないけど)なるべく固まったところを確認しながら慎重に歩いていきました。腰から下は泥だらけでありますけれど、宝川温泉で体を流すほかない。入る予定なかったけど。
 なんとか苦境を脱すると向かいの方からそこそこ若い女性が2人歩いてきた。この先道悪いから気をつけてと言ってあげたらどうも沢登りに行くらしく、ナルミズ沢はこっちでいいのかと聞かれました。沢登りするのなら、まあこの位の登山道の荒れはそんなに気にすることもないね、そうですナルミズ沢はこの道を突き当たったところから入っていくんですよ、と教えてあげました。遠方から来たようで土地勘がないような感じでしたが、ひとまず下半身が糠漬けのおじさんの言うことを真面目に聞いてくれたのかどうか。なんか全く信用ならないような感じが出ていたかもしれません。こんな私でもナルミズ沢くらいなら2回ほど歩いたことがありますが。
 ということで、何とか宝川温泉まで歩いてまいりました。汚れを落とすべくそのまま宿の門をくぐっていきましたが、やはりこちらも豪雨の被害を受けたようで確か休業中だったような気がします。宿で少し話を伺いましたが土砂が露天風呂にも入ってきて修復中だそうで。下半身の泥を落とさなくては帰宅できませんので辺りをふらついていたら外の駐車スペースに水道を見つけ、無事洗い流すことができました。

 一人寂しく
 泥を洗い落としながら
 思いました

 私は一体何しに来たんだろう。。。

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