レポート104
15 Sep 2023更新
2004年9月15日 撮影・北岳

ずいぶんと間が空いてしまい申し訳ございません。前回出してから山入ったり、世界陸上があったり、HDDをドリルで破壊したりと色々と忙しくなってしまい滞っておりました。花の動画はようやくアップできそうですが、作曲をしていると文字が書けなかったりというのもあって何となく遅くなってしまいました。すみません。
しかし一体いつになったら涼しくなるんでしょうか。これでもかというくらい暑い、というか熱い夏でしたが、何だか気温が高いというより日差しが痛くて、ちょっとでも昼間にトレーニングしようものなら疲れ切って一日が終わってしまうという感じでした。一体どれだけの水分と、炭酸飲料と、エナジードリンクと、サクレを消費したことか。。。そりゃあ蚊も出てこないわけだ。そろそろ夜くらい涼しく寝たいところですが、一向に気温が下がらないぞ。
ほんの数日前にも約3000メートルの稜線に登っておりましたが、夜から朝がちっとも寒くない。9月もそろそろ半ばに差し掛かろうというのに、日の出前が寒くないなんてちょっと恐ろしい。昼間は変わらず暑いし、9時には雲が湧いて10時にはガスる。まだ完全に夏である。というか真夏は朝方はダウンなど全く入らず、夜明けから半袖だったから少しは寒くなったのかな。う〜む、これでは紅葉はもうダメなんじゃないか?とは言えずいぶん痛んでいるナナカマドの株も結構あったが、まだどうなるかはわからない元気な株もあったので、希望は失わず期待したいものです。
さて、今回のレポートですが、だいぶ古いのを引っ張ってきました。もうかれこれ19年前のもので、私も若く若く、26歳の頃のものであります。何せ写真はフィルム時代のものですから綺麗に載せられているかは微妙ですのでお許しくださいませ。すごく印象的なことがあったわけでもないので、、、(いや、あったかな、とりあえず書き綴っていると思い出すかも)。微妙な季節ですので記憶も薄ら薄らですが、ちょうど浅間山が噴火した年、晴れ渡った北岳の山頂から噴煙の帯を引く浅間山がよく見えたのを覚えているような。たしかこの山行中にもまた噴火したような。まあとりあえず書いてみて、少しずつ思い出していきましょうか。
出発は2004年9月14日、記録を見る限りではお昼に広河原から歩き始めておりますので夜行とかでもなく、至って普通に朝自宅を出ているようです。天気予報では良い天気が続いておりましたので出かけたと思いますが、この頃は衛星ひまわりくんの調子が悪かったとかで天気予報の精度が悪く、とにかく山に行ってみないとわからん!ということが多かったので、何も考えてなかったかも。初日の天気は曇りであまり良くありませんでしたが、翌日からは晴れそうなので意気揚々と登っていったと思います。脳回路のどこをしつこく探ってもこの日の広河原から肩ノ小屋までの記憶がまったく見当たらないのですが、重い荷物を背負いつつも3時間かかってないのでたぶん白目向いて歩いていたんでしょう。
フィルム時代はとにかく荷物が重くて(実は今の方が重くなってたりするのですが、、、)、カメラがペンタ67、フジ69、フジ617、他35mmカメラに加えてレンズ何種類かでボディだけでも3〜4台、テント、寝具、食糧と夏山装備で40kg弱を背負っておりました。それで広河原から肩ノ小屋までいつも2時間半から3時間かからない感じで歩いていましたから、何が何だかさっぱりわかりませんね。今でもやれと言われたらやれるでしょうけど、この頃は楽しんでたような。。。若さでしょうかね。今だったら「何の為にそんなに急ぐの?」と思っちゃいそう。何でもそうですが「欲求」がないと頑張れないものです。
翌日15日は朝から晴れでしたので早速山頂へ登り、撮影。とりあえずスッキリ晴れてしっかりと間ノ岳が撮れたのはいいのですが、中腹に目をやるとなんともちょっとびっくりしたような。9月半ばにしては紅葉が早すぎないか。。。?と思ったのでした。最近では色づきすらなくなってしまうような年も多かったりしますが、20年前くらいだとだいたい稜線の紅葉が9月22日ぐらいから、中腹は10月頭という感じなのですが、う〜む約半月早い。そういえばこの年2004年は花の先も早く、7月15日あたりで見頃になっていたので季節が巻き巻きだったのかもしれませんね。しかし色づきは悪くなかったのでその点では今よりもいいかなぁ。今年2023年の花も非常に早く、7月15日どころか10日くらいが見頃のところもあったほどですが、じゃあ同じように紅葉も早く、色づきもそこそことなるかというと、おそらく違うでしょう。。。やっぱり昔の方が冷え込みはしっかりあったし、夏もしっかり雨も降ったしで同じようでだいぶ違うわけです。ともかくそんな訳で、とりあえず山に入っててよかった、早めだろうが紅葉も撮れちゃいそうだと期待しながら稜線を歩いて行きました。この日の予定は肩ノ小屋からボーコン沢の頭を往復、のんびり撮影してまいります。
八本歯ノ頭付近に来ると予想通りちょうど紅葉が見頃でした。さほど大きくは育たないですがダケカンバがあり、なかなか良い黄色に染まっております。間ノ岳と重ね合わせてあれやこれやと試行錯誤しますが、角度的にはやっぱり間ノ岳は北岳山頂からの景色に敵うものはないんだよな。。。などと納得いかないながらもシャッターを切ります。所謂この間ノ岳の北沢の東斜面が東に来れば来るほど開けてきてしまうのでのっぺりしてしまうんですね、ベターっとした感じで。北岳山頂からだとそこをしっかりと繋がっている稜線でガシッと止めてくれるので、いい角度になるわけです。なので鯵の開きみたいな間ノ岳になるんですけど、紅葉もあることだしまあいいか、、、と。
まあそこまでは今回は思ってもいなかったボーナスみたいなもので、目当てはボーコン沢の頭からの吊尾根と北岳バットレスでございます。しかしこちらも当然思わぬボーナスで、ハイマツの中にポツポツと目立つ紅葉が十分な見頃でした。とりあえず初秋のバットレスが撮れればいいか、と思って足を運びましたがしっかりと秋の風景が撮れちゃいましたので満足であります。標高としては2800mくらいありますからまあ紅葉しててもおかしくはない時期なのですが、こんなにも綺麗に紅葉するのはやっぱり1週間は早いかな、と。八本歯からボーコンにかけては歩いてくる人もほぼおりませんので、静かで、且つまったりと撮影ができました。稜線上のウラシマツツジも真っ赤に染まっており、こちらでもバットレスと合わせて写真が撮れました。
ボーコン沢の頭から北側、広河原に向かって尾根が延びており、そちらあたりに見頃のダケカンバがありましたのでちょっと道を外れて向かってみました。そこまで行くと紅葉と鳳凰三山を重ねられそうだな、と思ったわけです。う〜む、でもどうだろう、木は立派でいいのですが、遠目で見るより近づいてみると鳳凰山とはうまく重ねられなそうで、ここよりは八本歯ノ頭付近で撮った鳳凰山の方が良さそうでありました。しかしここまで足を運んだおかげなのか、おそらくこのときにはじめてここから広河原に続く道の「嶺朋ルート」という看板を見つけまして、ここから下れる道があるのか、と思ったと思います。二俣とかからも背後に尾根があるのは知ってましたけど地図に道はないし、しかしボーコン沢の頭がバットレスの対面ならばそのままこの尾根も対面、ちょっと違った角度からのバットレスを撮ることもできるんではないか、道があるなら容易に撮りにいけるんではないかと欲が出てきてまいりました。
とりあえずは15日はぼちぼち撮れましたので、予定では翌日16日は間ノ岳方面、17日は下山という流れですが、嶺朋ルートが気になって仕方ありません。肩ノ小屋のテントに戻ってからは、向かいの尾根をずっと眺めておりました。尾根の途中、少し下ったところの一角に岩場があり、どうも眺めも良さそうである。。。その岩場はボーコン沢ノ頭からさほど標高を下げないところにあるので、撮影目的の私としてはその地点まで行って往復してくればいいわけなんですが、道がありそうなら広河原に向けて下ってみたいなどと思い始めておりました。どうしよう、ここは一発間ノ岳を捨ててそっちに行ってみようか。
翌朝16日、朝焼けに染まる富士を眺めながらとりあえず北岳山頂におりました。まだ悩んでいたのでとりあえず撮影のためだけに山頂に登ってきたのですが、それから一度戻り、10時くらいだったかその辺りの時間は定かではないのですが全装備を持ってもう一度山頂へ、吊尾根分岐からは予定の間ノ岳往復撮影へと向かわずに再びボーコン沢の頭方面へと向かったのであります。2万5千図も持ってきてないし、やや不安なところもありましたが「ルート」ということでトレースはあるんだろうからおそらく下れるんだろう、そんな軽い気持ちだったと思いますよ。
ボーコン沢の頭までは何やかんやで再び違うカットを撮りつつ、いざ広河原に下山してみましょう、というときには午後1時になっておりました。下りで時間かかってもおそらく3時間くらい、夕方には広河原でテントを張ってのんびり過ごしているんでしょう。
嶺朋ルートを下ること30分くらいで目星をつけていた展望地にやってまいりました。さすがに午後、もう太陽の角度も良くないし、雲も上がってしまったりで写真的には良くないがとりあえずロケハン、ここからの見栄えはかなり良いことが確認できました。まあもっとも、この後何度もここには足を運び写真を撮ることにはなるのだが、その記念すべき一発目と言うところか。そのもうちょい下にももうひとつ開けるところがあったが、結構樹々が邪魔してだかあまり良くなかった。
さて、目的の撮影地の確認もできたことだし、あとは下るのみである。標高的にはおそらく2400mくらいまで下ってるのであと1000mほど、瞬殺である。踏跡も何だかんだでついてるしぐいぐい下っていった。ところどころテープもあったので何も疑わずハイスピードで力任せに下っていきました。
ところが、である。どこの地点だが今となっては全くわからないがいくつも道が分かれている場所に出てしまった。獣道っぽくもあるんだが、人の道にも見える。今思い起こせばこの時点で登り返せばよかったのだが、何だか大丈夫そうな気もして、さらには「YOU、下っちゃいなよ。」という天の声が聞こえたような気もしたのである。そもそも2万5千図も持っていなく、全く意味なく無理する必要もないのだが。。。天の声に導かれるまま下ってしまった。これがグルーミングというやつか?
ということで、滝に出た。今でこそGPSでこんなことにはならないが、当時はそんなものはない。今自分がどこにいるかよくわからなくなってしまった。さすがに30mはありそうな滝なのでどうしようがどう巻こうがこの方角で下り続けるのは無理がある。この時でおそらく午後3時ごろ、まだ明るいのでとにかく登り直すしかないと思い、荷物が重くて気が滅入るが登り返すことにしました。これ以上はさすがにテキトーに進み続けるわけにはいかない。下れてもどこに出るんだかわかったもんじゃない。
では登り返そうとした、その瞬間!なぜか足元の道が崩れた。おそらく第三者的に見たらあいつ何やってるんだという感じでたいしたことないんだろうが、急に足元をさらわれた当の本人からするとこのまま滝に落ちるんでは?と思うくらい焦ったわけで(荷物も重いしね)、とにかく両手で掴めるもの掴んで転がっていかないよう必死に地面にしがみついた思い出が。とにかく事なきを得たわけですが、このときに右の顎を深く切ってしまい、血が吹き出すわ吹き出すわ。まあおそらくこれも第三者的に見たらそんなに吹き出してないんだろうが、道間違えて焦っている当の本人からするともうどうにも大変な状況である。しかし、そんな時ほど冷静に。溺れたときにもがいては余計に死期を早めるだけである。とにかくえっちらおっちらと登り返すことが今できる唯一の道である。最悪登り返せばまたボーコンの頭に出て、大樺沢経由で下ればいい。とにかく体力だけは無尽蔵にあるのでゆっくり行けばいいさ。
YOU、登り返しちゃいなよ!
登り返しの途中で小さな沢音がしたのでとりあえず水を確保しに下った。実際登り返しに何時間かかるかわからないので水だけは切らしてはいけない、なんて偉そうなこと言ってるが道迷いしといて何言ってるんだか。まあでも水があると何よりも安心するものである。ゆっくりとよくわからん道をこれまたこれでいいんだかもよくわからんが、登り返しているうちに次第に辺りは暗くなっていった。
非常に重い荷物を背負っているわけで、そんなすぐに登り返せるわけでもない。当然疲れてくるし、もう真っ暗だしで進みも非常に遅い。しかし心境を聞かれると、どうでも良い感じである。自分の体力的に夜明けまで歩き続けることもできるので何ら心配なこともない。面倒だなぁ、くらいだろうか。水もあるから途中で食事を作ることもできるがそれも面倒なので、せめてあの展望台くらいまで位置がわかる場所まで戻ってからにしたいと思った。
もはや踏跡も獣道でもない暗い森をただひたすら登っていたわけだが、何か人工的なものを見つけるとルートに出たのかと思うようになった。何度も錯覚を見て、ふむう、人は何でも自分の都合の良いものを見たがるのだな、と余裕こいて俯瞰して見せるのだが、どうも錯覚ではない赤テープを見つけてしまった。おいおい、錯覚じゃないよな、とちょっと驚くわけだが、ともかくどー見ても道に出たのである。お約束通り、頬をつねったり、叩いたりしてみるが夢じゃない!今度こそ!YOU、それ下っちゃいなよ!
一体ホント、どこで道を外れたんだか、道に出たらそこからは早いもので、1時間もかからずに広河原の、古くはロッジと吊橋の間の広場に出た。このときすでに午後11時、見上げると樹林の隙間からではあるがきれいな星空が広がっていた。
広河原でテントを張り、ようやく落ち着いた。ひと仕事終えてしまうと体力が残っててもどうでも疲れというのはどっとやってくるもので、晩ご飯食べるのも面倒で早く寝ることにした。自販機でコーラを買い、ひと呼吸で飲み干し、すぐさま寝袋にくるまって寝ました。ああ、無駄に疲れた。。。
ということで、撮影と関係ないことで無駄に格闘してしまったお話でしたが、まさに若い未熟な者の拙い物語でありました。何か思い出せるかな、と思って書き始めたものの、案外イベントがありました。本当にこんな大変だったのかは、なんとな〜くのうる覚えですが。
でも実際、覚えていることと、覚えていないことがある
もしかしたらしてる可能性もあるし
してないかもしれないし
YOU、何言ってるかわかんねーよ!