Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 78
22 Feb 2021更新

2015年発行「日本の山 究極の絶景ガイド」使用写真「磐梯山」


 さて、ようやく冬の谷川岳の撮影も終わり、そこから怒涛の編集やらカラーリングやらをなんとか乗り切ることができました。しかし本当に最後の最後、冬のロケで肝心のロープウェイが土日営業のみという厳しいハードル、ここで晴れないといけないというのは本当に厳しい条件でした。ただでさえ晴れにくい谷川岳なのに、撮影チャンスは土日のみって。。。ちなみにじゃあ西黒から登ればいいじゃん、と思いますけど、冬の撮影はほぼスキー場でありまして。。。お客さんもいないと絵にならないのです。
 振り返ってみると本当に大変な一年でありました。いやまず、ただでさえ天気が難しい谷川岳、というのが一番なのでどういう一年でも一番大変な場所には変わらないのですが(笑)、それに加えて新型コロナ、7月はまるまる一ヶ月晴れなかったとか、よく乗り切ったものだなぁと思います。さて仕上がりはといえばそりゃあ観光PRビデオと言われてしまえばそれまでですが、この条件下でなんとか撮り下ろすことができたのは結構なものだと思うのですがどうでしょうか。苗場山では道路工事の関係で2時間くらいしか上にいられない、とかいう鬼畜条件もあったなぁ。。。(遠い目)。もちろん泊まればいいじゃんと言われればそれまでですが、ひとつの場所に時間をかければ当然もうひとつの場所の時間が削られるわけで、そう簡単なものでもありません。というかそれくらい撮らなきゃいけない項目も多かったというのもありますし、7月いっぱい悪天ということで夏の時間が短かったのもありました。しかしなんとか乗り越えて、まあ及第、というところまでなんとか持ってこれたのはやはりメンバーのおかげです。自分も含めて3カメ体制、ドローンも当然全員飛ばしますし、歩荷さん、ディレクター、音響、そして最後のナレーションは短縮版ドローン大縦走ナレーターという、ほぼ丸々ドローン大縦走チームでございました。4月オープンらしいですので、皆様ぜひよろしくお願い致します。
 そんなわけで以前からアナウンスしております自分の方の動画が遅れております。いつになったらYouTubeに出るんだ遅えぞ、というお便りをいくつかいただいておりますが申し訳ございません。というかこちらも観光PRビデオみたいなものなのですが、一人で全部作っている分やや自分テイストは入っております。すみませんが今しばらくお待ち下さい。そっちはそっちで仕上げて、そのあとにさらに自分テイストだけのものも作ろうと思ってはいるのですがそこまではなかなか時間が。。。
 今シーズンは冬に入ってから雪が降らない、どうなるかな。。。撮れるのかな、というところから始まり、年末に急にドカ雪、こんなに一気に積もるのも怖いものがあるなぁ。。。となり、気付いたらポカポカ陽気で冬終了モードという、なかなか難しい流れでしたね。昨年はひどかった樹氷も今年は結構見られる感じになっているかと思いますが、ここ最近の暖かさでもう終了モードでしょうか。忙しないシーズンでございました。貧雪も困ったものですが、こういう極端な流れも困ったものです。一昔前は10月下旬、11月初旬くらいから順調に雪が降り始め、安定した冬山が楽しめたものですが、ここ最近は12月も半ばにならないとダメだし、暖かくなるのも早いので、結局冬らしい絵を撮るのがなかなか難しくなっております。冬のみならず夏は夏で晴れない日が増えたし、秋は紅葉の色が悪いし、とほぼ1年中じゃねーかと言われるとそれまでですが、本当に難しくなっております。桜と新緑くらいかな、来ないはずのないものは。でもバックの山に雪が少なくなっているというのはあるので春も被害を食らってますね。そりゃあ山に行けば他にも朝日とか夕日とか美しい景色というのはありますけど、ある意味でそういうのはバカのひとつ覚えというか、、、正直海でも街でも朝日とか夕日は美しいと言えばそれまでで、やはりとにかく美しい山の季節、何てことないけど、ドラマチックというほどでもないけど「美しい」と思える日常的な「山」の景色が撮りたいわけです。そういうのをうまく詰め合わせて、写真のみならず映像化もしていきたいところなのですが、そういう当たり前にあったものが撮りにくくなってきてるのはつらいところであります。はてさてこれからは、以前当たり前にあったような日常的な風景を追い求めて撮ったほうがよいのか、今ある風景に順応していくほうがよいのか、考えるところではあります。
 さて、今回の写真ですが、裏磐梯の冬景色でございます。ここから見えているピークは磐梯山ではなく手前の天狗岩ですが、こういうあまり知られていない風景を取り上げたいと思って当時チョイス致しました。いつもはだいたいどこどこから見る〜山、〜岳になるのですが、ここではすぐ近くにある冬に有名なイエローフォールでもなく、この荒々しい風景を選びました。〜岳って銘打てるほどキャッチーな風景っぽくはないですが、やや日本離れしたような、ああこういう景色も日本にあったんだ、というのを感じてもらいたくて選んだ覚えがあります。雪のない時期にみるとただ単にガレに見えるんですが、雪が付くと一気に雰囲気を変えます。真っ白になるところがそうさせるんでしょうか。北面にあたりますので冬は陽も当たらず、寒々しいところも良く見える点です。
 撮影は2013年2月28日。冬の磐梯山は飯豊、吾妻連峰に近いというのもあって非常に晴れにくいです。谷川岳的に言うと、ここで冬雲がストップする感じ。麓の猪苗代は晴れるけど山は食らってる、みたいな。なのでもう少し東の安達太良山まで来ると晴れやすいのですが、冬は結構晴れません。なのでタイミングを待って待って待って待って2月末になってしまったような記憶があります。
 朝一番に家を出まして東京駅から新幹線に乗り郡山まで、そこから磐越西線で猪苗代へと向かいます。新幹線でライブカメラを見るも磐梯山に雲がかかってたので怖いなぁ、晴れるかなぁとドキドキだったのですが、のどかな田園風景をコトコトと進む鈍行列車から真っ白な磐梯山が見えたときは本当にうれしかったです。この時点で撮影終了!という気分です。猪苗代湖からはバスに乗り、磐梯山をぐるりと回って裏磐梯へ。気持ち的にも余裕が出たのか、バスの中でももう気分は上々。なかなか晴れそうにない山があっさり晴れてるわけですから(ひと月待ちましたが)、そりゃあ嬉しいわけです。しかも撮らなければならないポイントはスキー場のリフトで登って、歩いて30分くらい。もう勝ったも同然でしょう。時間が余ればそのまま磐梯山も登って帰ろうと余裕ぶりぶりでした。
 裏磐梯高原駅でバスを下車し、スキー場へと向かいます。思いのほか地味に距離があり、30分くらいはかかります。まあスキー場でリフトに乗ってすぐだから大したタイムロスはないだろうと思っておりましたが、ななななんと平日スキー場はお休みでございました。ま、まあたいした距離ではないのでやや速めに歩けば遅いリフトとはそんな時間差はないはず、と無人のゲレンデを登っていきましたが、、、磐梯山の上にちょっとずつ増えていく雲を見ると気が気じゃありません。2月とは言っても末日、麓はやや春めいた感じもありますし、事実日照時間は増えておりますので普通に冬山とは言えない状況ではあります。このままだらだらしていると、雲が湧いてしまうんじゃ、、、という不安で一気に焦りモードになってしまいました。忙しい人です。
 ゲレンデを登りきって雪で埋まった銅沼を進んでいくと、先ほどスキー場では見えていた磐梯山が次第にこのガレに隠れ、天狗岩がメインの山かのように見えてきます。普段は案外グロテスクな色の銅沼も、冬はすっかり雪原で真っ白です。無雪期は無雪期で綺麗ですけどちょっと赤色がきつい感じがしますから、冬のほうが好みではあります。銅沼の上を歩いていった先でまず撮影を始めました。先ほど湧いてきた雲は少なくなってはおりましたが、早く撮り始めないとどうなるかなんてわかりませんのでとりあえず撮ります。手前に置くのにちょうどよさそうなスケールの岩がありましたので、そこをポイントに同行者を立てて撮影、、、何となく違う感が。もうちょっとこう、天狗岩がしっかりと〜岳に見えるような感じを作りたいんですが、ちょっと山が小さくなっちゃうような感じでした。手前に入れようとした岩がいけなかったかな、求めてるスケール感と違うのです。いや、手前の岩も情報として邪魔ということでいらなかったのですが、一番の原因はこの「雪原」に引っ張られたところでしょうか。
 ということで、そこから少し場所を変えて撮ったのが今回の写真です。ほとんど場所は変わらないですが、広い雪原感を入れ込みたいとはじめは広角側で撮影したのが逆効果というところでしょうか。広さを感じさせたいからといって広角で撮ればいいというものでもない、という感じです。そして広角によって当然山は小さくなりますから、もう少し標準側でしなくてはいけません。当然ズームすると山は迫力が出ますが、雪原感は狭くなります。が、手前の岩が情報としては邪魔だったわけで、そこをすべて雪原で占めてあげれば「広さ感」みたいなものが生まれるわけです。あとは少しズームする分、さきほどよりモデルさんとの距離を撮り、臨場感より現場感みたいなものにシフトすれば雪原の広さはカバーできます。ので、標準側で撮っているのに広く感じつつ、標準側で撮っているから山も大きく見える、という絵になります。まあただ絵としてあっさりはしてしまうので、そこがつまらないと言えばつまらない。あとは天狗岩にどれだけ見た人が惹きつけられるか、お前さんにかかっているわけです。
 メインの撮影を終えてすぐそこのイエローフォールへ。イエローフォールは近場で見ればたいそう迫力のあるものに見えますが、遠目から見れば一部ですので見方によっては櫛ヶ峰がお漏らししているようにしか見えない。もっとも、これは山を擬人化して見ることに慣れてしまっている人種のみではあるが。。。お昼前にはここまでの撮影を終えて磐梯山にも登ろうと思っていましたが、すっかり午後1時を回っており考えどころ。しかしここで帰るには勿体無い天気でしたし、とは言っても登ってからまた戻ってきたら裏磐梯の帰りの最終バスには間に合わなさそうです。しばしどうするか悩みましたが(たぶん3秒くらい)、どうなるか知りませんがとりあえず登ることにしました。いや、本当は猪苗代側に下ればなんとかなるでしょ、ということで山頂へと向かったのでした。
 さすがにイエローフォールからは誰も歩いておらず、雪も結構深かったです。ですが標高の高い山でないのがいいところ、案外サクッと登れてしまいます(多分)。樹林を抜けると雪も締まり出し、桧原湖と吾妻連峰の絶景を背に開放感溢れる登山が楽しめます。うお〜樹氷が見える、私にも樹氷が見えるぞララァ、とああ西吾妻行きたかったなぁ〜とも思いましたが、こちらはこちらで楽しいです。稜線に上がりきるとさすがは火山、所々雪のないところもある荒涼とした風景が広がります。先ほどの主役である天狗岩も頭が低くなり、本当の主役の磐梯山がドスンと構えます。ここで同行者を待つ間に一応アイゼンに履き替えましたがこれが失敗、正直スノーシューで通した方が楽でした。もうちょっと岩が顔を出していると予想したのですが、結局あまり融けておらず雪面続きでしたからあまりアイゼンの意味がなかった感じです。
 だいぶ西日になってきた感がありますが、日も延びてきた今日この頃、さすがに年末ほどの日暮れの恐怖感はありません。何だかんだで稜線に上がってから結構時間がかかってしまい、ようやく山頂へ。最後、山頂直下のエビのしっぽの大群が見事でございました。だらけって感じが堪らない。そのだらけの間を縫うように登り、頂へ。登った瞬間、目線の先にきらきらと猪苗代湖が見えるのが素晴らしいです。何でしょうね、この山の上に出た時に「水もの」が見えた時の高揚感って。ただ景色が開けるだけでも「おお〜」っと気持ちがいいものですが、湖や海が見えると「うおおおおおお」みたいな。着いたのは午後3時、ポカポカ陽気でしたのでとくに寒くもなく、やや霞みがかったのどかな風景が広がっておりました。その霞みがなんとも春を感じさせ、心を穏やかにしていきます。

無理というのは嘘吐きの言葉

 下山はもう一度櫛ヶ峰との鞍部に下り、沼ノ平から赤埴山を経て猪苗代側へと下っていきます。結構雪も深かったので、思いのほか時間がかかってしまったのは誤算です。赤埴山に登りきるくらいで磐梯山を振り返ると背景の高い空には雲が広がり、天候はすっかり下り坂。ちょうどいい時に山頂にいたものです。何とな〜くですが猪苗代側のスキー場の音が聞こえましたので、こりゃあ下りはリフトだな、と余裕ぶっこいておりました。このとき午後4時半回っておりましたので、まあそのスキー場にも営業時間というものがありまして。。。同行者には「もうちょいでゴールですよ。明るいうちに下山できるでしょう。無理じゃない、大丈夫。」と自信満々で構えておりましたが、まあ結末はいつもの通りです。
 赤埴山からやや雪の深い歩きにくい樹林を抜け、ゲレンデへと出ました。何とな〜くですが静かですね。リフト動いてないっぽい。いや確かさっき音が聞こえていたのですが。。。電気もついてないっぽいからやってないのかな。それとも今日はクローズなのかな〜?って、同行者からはさっき裏磐梯は休みだったんだからちょっと考えればわかるだろ的な目線をひしひしと感じます。まあ、まあゲレンデは歩きやすいね、ほら、麓もよく見える。となんとか励まし(騙し)、黙々と無人のゲレンデを下っていきました。仕方ない。案外見えているものってすぐに着くと思いがちで、実は歩いてみると結構時間がかかるなんてことはよくあることで、麓の駐車場がゲレンデトップからはしっかりと見えているわけですがなかなか距離が縮まらず時間ばかりが過ぎていきます。

 結局ゲレンデ下りでも1時間くらいかかったかなぁ。。。
 麓の駐車場に着いたのは午後5時半を回っておりました。

 でも!2月末で日が延びていたので日没にはならなかった!
 なんとか(うっすら)明るいうちに下山できた!

 無理じゃなかった!

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