Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 75
16 Nov 2020更新

雑誌 岳人・2014年1月号掲載写真「燕岳」


 近頃はデスクワークが多く、ほとんど撮った映像の編集やら補正やらが多いのでどうしてもレポートが遅れがちになってしまいます。はい、言い訳です。でもずっとやることがあってノルマのようにずうっとやってしまうので、流れに乗ってしまうとなかなかこういった遊び原稿にいく余裕がなくて、、、レポートをお待ちいただいている方々にはご迷惑お掛けしている次第です。創造的な編集作業というのも好みなのですが、ノルマ的な補正作業というのも結構自分の性に合っているのか、一日中がっつりモニタと向かい合ってもくもくとこなしていくのが好きで好きで。。。どこかに出かけた方が仕事に関係ないこういうレポートは筆が進むわけで、PCの前でずっと仕事していると、ホント仕事だけしてしまいます。
 先月末は予定通り谷川岳の秋撮影へと行っておりましたが、前回のレポート同様、今年も一ノ倉沢の見頃は10月27日でございました。紅葉の出来具合としてはぼちぼち〜結構良い方で、ボジョレー的だと「出来が良く、見ごたえのある上品な色づき」と言ったところでしょうか。雪は付いておりませんでしたのでそこがちょっと、ですがなかなか難しいものです。雪は29日に降りまして30日に三段紅葉、まあそれでもぼちぼちきれいではありましたが紅葉の見頃だけで判断すると27日がベストだったかなぁ〜と。そりゃあ雪がついて紅葉もベスト、が真正ベストですからこればかりは運ですね。撮影としては27日も30日も撮れましたから、よかったよかった。
 しかし、今年はここ最近とはちょっと違ってやや寒いですね。いやこれが平年並みなはずなのですが、ここ最近の南国っぷりに慣れてしまうと「今年は寒いなぁ〜」なんて思ってしまいます。これが普通のはずなんです。過去の冬のテレビ番組では2年とも雪に苦しめられ、、、(降らないという意味で)、今年はなんだか着実に降りそうではあります。が、日に日に富士山の雪も少なくなったりしているからまだわからないのかな?10月末からここまでは結構寒い日がありましたが、予報を見てみると東京20度あたりが続きますね。。。
 とは言えとりあえずはあまり出歩くことなく、年末にかけては編集作業に没頭していると思います。早めに終わるといいですが、まだまだ出口は見えてこない模様。でも楽しいですよ。私のことをアウトドア仕事が好きなんだろうと思う方が多いと思いますが、実のところ結構インドア派でもあったりするのです。そして競技は中距離。長ねぎは太いままだと絶対食べられないがみじん切りなら好き。ん〜、なんだか全部中途半端なのかな?
 さて、今回の写真ですが、山岳雑誌の2014年1月にて巻頭連載で使用したものです。表紙で1枚、この連載のトビラ絵で1枚、見開き1枚、小さいカット5枚の計8枚、たった8枚を撮ればいいという、ふと見ると簡単そうに見えるロケですが、大きい写真3枚はそれなりにインパクトのあるキャッチーなカットでなければならず、小さいカット5枚もちゃんと意味のある、物語が伝わるようなカットでないとダメですので、簡単そうに見えますが決して甘くはない(はず)です。まあ、こんな感じでいいか、、、となると当然パンチの弱い写真になりますし、やはり事前にしっかりと考えていかなくてはいけません。もちろん毎月の連載ですからそれぞれ各月のテーマやストーリーも踏まえつつ、頭の中で絵コンテを書いておく必要があります。あくまでストーリーがありますから、なんとな〜くポワッとした雰囲気だけ出す写真だと雰囲気は出ますが全部同じカットで伝わりません。ひとコマひとコマ映画のワンシーンのようなイメージを持って、ちゃんと時間性を作りながら撮っていかないとダメなわけです。
 表紙なんかは確実に各月バラさないといけませんので、1年単位でロケ地を考えていろいろ分けております。モデルさんのみカラーで背景は白黒というちょっと印象的な雰囲気で仕上げており、当然私がレタッチしております。前年を入れるともう7〜8年くらい前の撮影になるのですが、おそらく未だにそんな前と思わせないクオリティだと思います。いや、誰も褒めてくれないから自分で言ってるだけです。。。でもどこかの山小屋で見ることがあったら見てみてくださいね。たいしたことない?ごめんなさい。。。でもさぁ、表紙でただ撮っただけの写真ってよく目にしますけど、ホントもうちょっとしっかりやれよと思いません?構図も適当、光も適当、行き当たりばったりの写真を見てもつまらないですよ。せっかくやるなら、しっかりやらないと!とは言えそういう中途半端な行為ができない私は不器用なんでしょうか?あれ?さっきは中途半端って言っていたような。。。
 この回では1月号ですので、前年連載のモデルさんからバトンタッチして新しいモデルさんでスタートしました。とは言え何か匂わしたいと思いましたので、この回だけは前年のモデルさんにも来ていただいて表紙にのみですがバトンタッチ的な感じで写っていただきました。まあしかしこれだけのために一人追加で雇って連れて行くなよ、、、と帰ってきてから怒られたのは今となってはいい思い出(笑)。そんなわけで新旧モデルさん2人という麗しの女性に囲まれての撮影でございました。撮影は2013年11月16日になります。
 撮影は当初蝶ヶ岳を考えていたのですが、新モデルさんの体力もまだ未知数、あげく旧モデルさんは前年の首都圏から西日本のほうに遠く引っ越してしまい、体力と時間の都合で燕岳で手打ちとすることに致しました。小屋があれば楽だもんね。となると真っ先に決まるのが見開きカット。やはり燕岳は夕日がいいです。夕方にガスの中から姿を現わす燕岳、、、しかもそこそこ赤く染まって。そんでその景色を背景に佇む人、なわけですがモデルさんの都合で当然ロケは1泊、となるとチャンスは1回のみ。しかも場合によっては夕方までに辿り着けないかもしればないよなぁ。。。頭の中で描くのは簡単だけど、いざ実現できるかというと難しい。翌日17日の天気予報は良さそうですが表紙もトビラ絵も見開きも晴れの昼間ではちょっと味気ないものであります。とりあえず撮れればいい、ではなく物語を作り上げるには様々なシチュエーションが必要なわけで、ノーマルとドラマチックと色々と使い分けないといけないのです。でも、そんなこと言ったって相手は山の天気なんだからどうなることやら。毎月よく頭おかしくならなかったなぁ。
 ということで16日は松本駅にて旧モデルさんと合流し、いざ中房温泉へ。中房温泉着はほぼお昼ですので、ちょっと油断すると夕方に間に合わない可能性も。なのでまあ合戦尾根でのカットはほぼ撮らない予定で黙々と登っていきました。もちろん全く登る過程を撮らないというのもさすがにあれなので合戦小屋を過ぎたあたりで2カット撮影、あとはずっと歩いていた記憶が。とにかく夕方に間に合わないとまずいので気持ちはだいぶ焦っておりました。小屋が近づいてきてからややペースダウンしてきましたので、さらに気持ちは焦っておりました。背後の信州側は晴れておりましたが稜線の向こうからは雲も飛んできているようで、う〜ん、小屋に登りきるまで向こう側が見えないというのもなかなか気持ちが焦るものがあります。ペースダウンしてくるとなかなか難しいもので、体育会系で攻めていいものか、アメリカ式で褒めちぎって登らせるか、手腕が問われます。私の生まれは昭和ですから、「行け〜!進め〜!水飲むな〜!!」と攻め立てたい気持ちではありますが、そんなことしたら来月から来なくなっちゃうね。
 サクサク登れば夕方4時前には燕山荘に着くと思いましたが、休憩時間とか全く考えてなかった私のミス、午後4時半ちょい前の到着でございました。日没がだいたい午後4時40分ごろ、ホンッとギリギリでした。というか到着した時は燕岳は見えずガスっており。。。しかしほんのり空は赤くは染まっているような感じ。んで風も少しあるので、燕岳は出てきそうな感じ。こ、これはいけるかも。。。「は、走れ〜!!」とおそらくモデルさんは結構疲れていたと思いますが、撮ろうと思っていたカットのポイントまで到着そのまま歩かせ、ポージング待機。「体右向けて〜、顔だけ左向けて〜」とかなんとか大声で叫んでたような恥ずかしい記憶がありますが抹消しました。モデルさんには急がせといて自分は小屋の前で撮ってるんだから、、、一体何様なんだろうかとも思うが、のちほどケーキセットで許してもらうとする。見えなかった燕岳が雲の中から姿を現し、、、絵コンテ通り。これが撮れれば終わったも同然だろう。これは私にもケーキセットのご褒美の刑である。
 ということで今回の写真です。走らせて、ギリギリ夕方、ケーキセット、パッと見は普通の絵ですが色々なものが詰まったカットです。写真単体で見ると左に山が寄っていて右に人物、右上がぽっかり空きすぎておりますが、これは見開きのノドを考慮したり、テキストを載せるスペースを考えてのものです。ので、構図が、、、とかは言わないでね(はあと)。また、色は実際はもうちょっと落ち着いた黄色っぽい夕方でしたが、赤に寄せています。このあたりは脚色ということでお許しください。自分の風景作品ではそこまで色を加えることはしませんが、これはまあ映画みたいなものですので。。。というかそもそも表紙は背景のみ白黒の加工バリバリだし。
 ともあれよかったよかった。とりあえずこれが撮れてしまえば明日はもう楽チン、晴れた昼間の写真をおさえていくだけです。夜は空いた時間にちょっと星なんかも撮りながら、喫茶室でケーキセットでした。
 翌17日は朝から快晴。槍方面の積雪もぼちぼちで、赤く染まりました。新雪期なので常念山脈はがっつり雪が付いている感じではまだなく、この辺は年末まで待ってがっちり雪が付いたほうが綺麗そうです。新雪がきれいなのはやはり岩がちの稜線ですね。土質の多い稜線だとどうしてもまだ樹木の下地が見えるような感じがしますから、粉雪を振りかけたというちょっとロマンチックな雰囲気というよりも、ベタッと雪が落ちたような感じを受けます。このへんの具合って結構難しいんでしょうね。ちょっとだけ霧氷っぽくついたぐらいはきれいに見えると思いますが、微妙に雪が付いているよりはがっちり積もらないと中途半端な感じがしちゃったりします。イヤダイヤダ、中途半端は。

写真家は人の本質を見抜く

 朝日ではモデルさんを絡めて撮る気はさらさらなかったので雪がどうたらと文句を言っていた割には自分の撮影に没頭、朝食をゆっくり取って昼間の色になってから撮影開始です。見開きとカット小2〜3つはおさえましたので、あとは表紙とトビラ絵と小カット2つくらいの4カットでおしまいです。と言ってもふと考えると表紙なんだから見開きよりしっかり撮らなきゃいけないような気もしますが、、、天気に左右されすぎる山という環境においてはスッキリと晴れてさえしてしまえばどうにでもなる、と錯覚してしまいがちですね。表紙カットでは旧モデルさんも参加してもらい(というか本当に仕事ここだけ、、、汗)、パパッと撮って9時ごろには終了致しました。早いような気もしますが、帰りのバスの時間、お風呂の時間などを考えますと9時半には下山するくらいがちょうどよい感じでございました。
 下山ではもうカメラはしまってたと思います。ガリガリと下山して登山口のお風呂で汗を流しました。風呂上がりにバス停にある自販機で缶のコーラを飲み、いや〜よかったよかったと胸を撫で下ろしました。と、まあ飲んだのはいいのですが缶を捨てる場所がない。売っといてそりゃないよとも思いますがここは山、自分で持ち帰ってくださいということですね。自販機の周りに置いてっちゃってる人もいるようですが、私はそんなことはしません。とりあえずザックのサイドポケットに飲み終わった缶をちょっと潰して入れておきました。とはいえ缶からジュースの残りが出たりしちゃったりしてザックに甘いジュースがつくのも嫌ですよね。でもまあ仕方ない、なんてことを考えていたら背後で「ガシャッ!」っと缶が潰れる音が。

 振り返ると
 旧モデルさんが踵一撃で缶を潰しておりました。

 ぺ、ペチャンコ。。。
 そ、それってヤンキーの技じゃないっけ。。。?

 一年一緒に仕事しましたが
 そういう方だとは全く気が付きませんでした。

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