Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート90
11 May 2022更新

2018年5月11日 撮影・「伯耆大山」


 急な話ですが来月富山にて講演をやらせていただくことになりました。というか二年前からお話をいただいておりましたので私にとっては急でもなんでもないのですが。。。富山大学で行われます日本登山医学会の学術集会、6月18日の最後に文化講演として参加させていただきます。一日中ずっと学術的な講演をやっておりますので私としましてはそこの最後に不釣り合いじゃないかな。。。なんて心配もしているわけですが、どうでしょうか。まあともかくちょうどコロナが流行り始めて緊急事態宣言〜なんてときにご依頼を頂いて、今更ギリギリになって何やろうかなぁ〜なんて悩んでおりますので、どうしようもないですね。一般の方が見られるのかどうかはちょっとわかりかねますがオンラインでも見られるようですので、富山まで足を運ばなくても見ることができるのかもしれません。が、おそらく私の時間よりも他の先生方の講演の方が為になるのは間違いない!私もできることなら「登山における中距離走トレーニングの有効性」みたいなことをやりたいところですが、研究しているわけでもなくただの持論なので怒られちゃいますかね。って、生業が写真家だからそういう芸術縛りになってしまうのが辛かったり。。。ということで、来月はそんな感じで富山にて講演をやらせていただきます〜。ちゃんと喋れるかな。先日は記録会でフライングしそうだったからやや緊張しております。っていうかフライングしてたね、あれ。
 さて、今回の写真ですが、新緑の伯耆大山でございます。大山はどの季節も足を運んでおりますが、個人的に一番好きなのはこの新緑の時期でしょうか。あ、どの季節と言っても真夏は行ったことないです、暑そうだし。。。まあそれはともかく若い頃は雪で真っ白な大山が好きでしたが、年をとったせいなのか今はこの瑞々しい初夏の絵柄が一番自分にはしっくりくるような気が致します。大山は山肌がガレて白っぽく見えますから、秋は紅葉が綺麗ですけどお肌カサカサ、みたいな感じでちょっと寂しすぎるのかな。その逆で初夏は爽やかで、元気があって何というか個人的にですが大山に求めているイメージとピッタリくるものがあります。
 撮影は2018年5月11日、このときは結構忙しいスケジュールで、夜行バスで向かって朝から撮影、夕方まで撮って夜行バスで帰るという、まあ日帰りなのか何なのか、、、よくわからないですがそんな感じです。前線通過してからの春の高気圧なので11日は間違いなく綺麗に晴れることは予想できたのですが、あまりゆっくりしてもなぁと一極集中で撮りに行きました。本当はもう少しのんびりして近場の他の場所も撮りたいのは山々なのですが、何日もそう天候も続くわけでもないですし、だったら目的を研ぎ澄まして最低限のものを確実に撮る、というのがまあ私のスタイルでもあります。その他のパーツは必要になればまた行けばいいんですし、東京から鳥取だって決して遠いわけではない!というわけです。そうそう、いつでも行ける!
 ということで10日の夜に東京を出発致しまして米子へと向かいました。この路線の夜行バスは何度も乗っておりますが相変わらず空いている。ので、採算取れるのか心配でしたが、もちろんコロナの影響もあるかと思いますが無事2021年に運休となっている様です。。。これじゃいつでも行けないじゃないか!(笑)
 この夜行バスの良かったところは、早朝に鳥取に到着するところでした。しかも高速を下りてすぐの江府インターで下りられるので、わざわざ米子まで行かずに早朝到着してすぐ撮影に取りかかれるというのは非常に有り難かったのに。。。私しか使わないからでしょうか、これからはサンライズ出雲で行くしかないかなぁ〜とも思うけど、あれだと米子着が9時だから一手遅いんですよね。もちろん新幹線+特急利用で前日入りでもいいのですが、そうなるとちょっと出発が早まるわけで、、、半日早いと天候の読みが難しくなったりするわけです。前日夕方5時の予想天気図を見てから最終的に判断したいところなのですが、う〜ん仕方ないですね。おそらく今後この手の夜行バスは色んなところで減っていくでしょうし、ましてや地方の現地着後のタクシーだって減っていってしまう傾向にあるかと思いますから、そう楽々と撮影も進まなそうです。時代が進んで、ビジネスモデルも変わっていくからしょうがないというのもわかりますが、時代が進んで便利なのか不便なのかよくわからないというのは少し哀しいところがあります。現地で何日もじっくりと腰を据えて撮影するには特に困らないかもしれませんが、それはそれでそんなゆっくり撮影していられるビジネスモデルなのかどうか。色々なものが加速度的に進む現代、なかなか難しいものがあります。
 そんなわけで11日の朝6時20分に鳥取は江府インターに到着、バスを下車後すぐに予約しておいたタクシーに乗って鍵掛峠へと向かいました。タクシーに乗り込んですぐ気がついたのは「いや〜、大山はやっぱりいい山だなぁ〜」ではなく「ん!?帽子がない!」ということでした。どうもバスの座席に忘れた様で。。。鍵掛峠に着いて早速撮影よりも先にバスの事務所に連絡して、また今日の帰り路線に乗るのでそこでお願いします、、、とお伝えしました。別に思い入れのある帽子でもないのでどうでもいいと言ったらいいのですが、なんでしょうね、自分がミスをしたということにショックを受けるのか、必死に対処しようと思わず焦りまくるのはなぜなんでしょうか。帽子がなくても別にやり過ごせるわけですが、触覚を取られた虫の様になぜかオロオロとしておりました。
 さて、気を取り直して鍵掛峠です。新緑ベストの天候ベスト、とも言えるこのシチュエーションに私一人しかいない、というのが寂しすぎます。以前秋に来たときはやたら人出があって屋台まで出てたほどだったのに、一般的には紅葉の方が人気があるのがわかりますがもうちょっと、この「新緑を愛でる」というのを楽しんでもらいたいところです。撮影する分には人がいないというのはむしろ周り気にしなくていいから有り難いんですけども、誰もいないというのもどうなんだか。鍵掛峠につきましてはもはや説明不要、伯耆大山を眺めるにはまあ定番中の定番で、迫力ある南壁と広がるブナ林を一望できる場所であります。バス停などもなく登山口も遠いし交通の便は悪いですが、やはり一度は訪れていただきたい場所と言えるかと思います。朝7時くらいから撮影を始め、自分の中ではこれでしょうという構図を決めますが日当たりがまだ微妙で、理想のライティングになるまでしばらく待機。もちろんその間も同じ構図で念の為撮っておきますが、結局8時くらいだったかな、いい感じになったのは。日が当たりすぎてもべったりしてしまいますし、当たらないと影が強すぎるしで、とにかく定番の場所で構図が決まったとしても、しっかりと撮りどころは見極めたいところです。
 一通り撮りまして、8時半ごろ鍵掛峠を後にしました。ここからは大山の南側から西側をぐるっと回って登山口へと向かいます。だいたい7kmくらいかな、走れば30分もかかりませんが、三ノ沢、ニノ沢、一ノ沢と撮りどころはありますのでいくらかのんびりと進んでいきます。標高が低い山の特徴ではありますが、いくらか離れた鍵掛峠からはあんなに大きく見えた山が、近づくにつれてなんとなく実寸が測れてくるのか少し迫力が欠けてきます。あるあるですね。とはいえ標高差は700m超ありますからもうちょっと大きく見えてもいいかと思いますが、なんだろう、横幅もコンパクトだからかな。しかし先ほどまでやや遠目で見ていた新緑、間近で見ると本当に綺麗です。三ノ沢〜一ノ沢あたりでいい感じの写真を撮るにはもうちょっと後、午後2時くらいからが良さそうな感じですが、この日は山頂まで登りたいので仕方なくベッタリライティングで我慢します。のんびりだらだらと舗装道を歩くというのも、もちろんすぐ目の前に絶景があるからですが気持ちが良いものです。
 途中から横手道で山腹を巻いて登山口へと向かいます。いつもの夏道登山口へと出たのは10時ごろですので1時間半もかかってしまったようです。そこからは早速山頂を目指します。しかし、こうぐるっと回ってみると本当にこの山のコンパクトさがよくわかるというか。それでも見栄えは一級品なので、もちろんいい意味でのコンパクトです。天候は落ち着いているとはいえいつまで持つかなんて誰にもわかりませんから、とりあえず急いで上を目指します。今回のメインは鍵掛峠からの南壁山容と豪円山からの北壁山容なのでライティング的にも山上はお散歩に近いものがあるのですが、まあせっかく来たからいい状態で登っておきたいものです。
 登山道ではあまり人を見かけなかったので「さすが平日。静かでいいなぁ〜」なんて思っていたのですが、視界が開ける六合目に出るとなんだかわんさかと人出が。どうも学校登山か何からしく、団体どころじゃない団体です。うお〜、これは山頂が大変なことになりそうな。さっきまで鍵掛峠では人がいないことを嘆いていたと思ったら、今度はあまりの人出に嫌気がさしているというなんとも自分勝手な私です。まあ一応いくらかバラけて登っているので数珠繋ぎにはなっていませんが。。。見晴らしの良い場所に出ると少し風は冷たく、しかしそのおかげですっきりした空気感、海岸線がくっきりと見えてなんとも美しい景色でございました。
 山頂に着いたのはちょうどお昼頃。案の定弥山山頂のデッキには大量の登山者が。まあしかし、鬼気迫る感じのライティングでもなし、私もぼーっとしたい感じでこんなに混んでいても嫌な感じはしなかったですが、とにかくみなさん楽しそうで何より。なんだかこう、西寄りの山に来るといつも思うのですが、みんなジャージとスニーカーといういい加減な感じが山との距離感を近づけていてすごくいいんですよね。関東だとそんなに高い山でなくてもがっちり本格登山装備、という人が多くてそんなに肩肘張らなくていいのにと思ったりするわけですが、西寄りは高い山がないとはいえいい意味でみなさん軽装です。もちろん天候が悪ければそれなりに大変になってしまうとも思いますが、行けるならこれでもいいと思います。何でもかんでもがっちり装備というのも、逆に言ってみれば何が必要かわかってないということにもなりますし、何というか適当な軽装は山への親近感みたいなものを感じてしまいます。関東は天空の鎧を手に入れるまでスライムとすら戦わない、みたいな感じだろうか。
 まあともあれ弥山からはまさか学校登山がヤセ尾根を進むわけもないのでここから先の剣ヶ峰の風景は無人であります。山頂付近はまだ樹木も新芽が出たての感じで、初夏というかは春に近い。そういう意味では夏にも来てみたいなぁと思いましたが、やっぱり稜線・剣ヶ峰の風景に関しては冬が一番いいかなぁ。山肌ガレの白が目立ちすぎてやや殺風景なんですね。秋もそんな感じがしたし、そんなわけだから雪がバッチリ積もって一気に高山の雰囲気になる冬か、もしくは思い切り濃い緑がガレの殺風景を相殺しそうな夏が良さそうと思うわけです。しかし夏は暑そうだがどうだろうか。
 山頂からの展望は申し分なく、かっちりくっきりとはいかないまでも弓ヶ浜や美保関も見えております。向こうからも綺麗に見えてるんでしょうね。向こうから海越しに大山を見たことはまだありませんので、一度拝んでみたいものです。もちろん山ばかりが目当てなのでその先の宍道湖にまだ行ったことないし、そこでしじみを食べたこともない。ともかくだ、山頂から近くに海が見える山はやっぱりいいなぁ。周りは未だ騒々しく、高校生だかのくだらない会話が耳に入るが、それが至って自然でのんびりと流れる時間を感じさせてくれる。。。というほどのものじゃないけど。自分が座ってゆっくりできる場所全くなかったし。
 下りは北壁を眺めに元谷方面へと向かう。元谷まで下ると新緑の具合はちょうどよく、北壁を駆け上がっていく爽やかな緑が印象的だった。来月にはきっと色濃くなっているのだろう、真夏とは言わずとも6月の晴れ間でも十分な夏景色が楽しめるかと思われる。元谷でしばらく撮影したのち、大山寺へと下っていきました。あとは残すところ豪円山からの山容の撮影、その前にちょっと時間がありそうなので汗を流しに参道沿いのお風呂に入ってからソフトクリームタイムです。ここまでいい調子で晴れてましたから、このまま夕方も結構晴れるだろうと余裕ぶっこいての入浴です。
 やはり私がバカでしたか。なぜか風呂屋から出ると空模様はやや高曇りのようななんとなく白っちゃけた感じでした。だから風呂なんて余裕こかないで撮っておけばいいものを。。。と今さら言っても仕方がないわけで。この日もまたバスで帰るんだし、やはり汗流したいし、風呂上がりにソフトクリーム食べたかったし。これは仕方がない。ともあれ日差しまで奪われたわけではないので決して諦めず、焦らず豪円山へと向かいましたよ。風呂入っている間に追い抜かされたのか、途中さきほどの学校登山の団体が「終わりの会」みたいなのをやっていて何だか盛り上がっておりましたが、さすがに豪円山まで来るわけでもなく、誰もいない静かな夕方、のんびりとスキー場の脇を登ってスタンバイ致しました。

今日は走らないぞ

 豪円山は先ほどの元谷からはやや距離を取りますから、伯耆大山の綺麗な山容、シルエットがすっと引き立って見られる場所です。南の名所が鍵掛峠ならば、北はこの豪円山でしょう。距離的にもそんな感じです。しかしながらこちらはスキー場やら大山寺やら色々ありますから人工物が多い。写真的にはギリギリカットできる範囲があるのでなんとかなりますが、もし何もなかったら実は南側よりダイナミックさは勝るなぁ〜なんて思います。といっても歴史あっての風景ですから仕方ないのでありますが。綺麗に刈られたスキー場の頂点に立ち、ぼーっと風景を眺めているのも何だか気分が良いものです。夕暮れの柴又の土手でしんみりと矢切の渡しを眺めているような、そんな気持ち。ってお前も寅さんみたいな行動してるな、なんて思っちゃったり。
 日差しはぼちぼちなのですが、空はくっきりとどぎつい青空にはなりませんでした。もちろんそれはそれで味わいがあって良いかと思いますが、せっかくだからなぁ。最後のバス便が18時10分でしたのでそれまでにはなんとか切り上げないと大変なことになります。一応バス停までは走れば10分くらいか。ギリギリを考えると18時まで残れそうですが、いつものバスダッシュはさすがに避けたいところ。間に合う間に合わない置いといて心臓に悪い。なので大人な私、17時45分くらいに仕方なく切り上げ、トボトボとバス停に向かったのでした。結果、走ることはなかったですが、バス停に着いた頃になんと山の上に青空に広がっておりました。。。やはり覚悟を決めて走るべきだったか、どうだったか。う〜ん、悩ましい。必ずしも大人な態度を取ることが正しい選択ではない、と学んだ大人でありました。
 帰りの米子駅行きバスを途中で下車、ビッグボーイでステーキを食べて帰京致します。さすがに夜行バス連続は疲れますから少しでもカロリーを取っておきたいところです、って結構食べすぎてお腹いっぱいでしたけど。帰りのバスではご迷惑をお掛けした帽子を回収し、また寝てるんだか寝てないんだかよくわからない状態で運ばれていきました。帰りは急いでないんだからサンライズ出雲で帰っても良さそうだが、なぜか高速バスの方が先に東京に着くんだなこれが。

 やはり最後まで粘って
 バス停まで走るべきだったか
 自問自答は続きました

 東京には翌朝着きますから
 疲れてましたけど
 そのモヤモヤを取り払うべく
 思わず走りに行きました

 400m59秒しか出なかった
 無理するな中年

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