Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート91
24 June 2022更新

2011年6月22日 撮影・「谷川岳」


 ということで、6月18日に富山大学にて行われました日本登山医学会の文化講演を無事終えることができました。一日中登山医学の講演をされていますので、最後に一人だけ毛色の違う文化講演をするのはなかなか怖いものがございました。結構一日中皆様静かに真面目に聞いております故、本当は自分の冒頭は少し和やかにスタートさせようと軽い話を用意していたのですが、盛大にスベりそうなのでさっさと本題に入らせていただきました!講演内容はそんなたいしたこと話してませんので皆様軽ーい気持ちで聞き流してくださったと思いますが、講演はいつのときも「生もの」ですので、とにかく無事終わって胸を撫で下ろしたところでございます。
 もちろん内容は写真の話、、、ではございましたが、本当のところはそんな講釈垂れることなく、皆様には自由に楽しく撮っていただくのが一番であります。しかし本当に写真も映像も溢れかえる現代、話したような感じのことを少しでも心の隅に置いていただけたら、というところです。あとは、せっかく富山に行ったのに雨にこそ降られなかったけどくっきりと山が見えなかったのは残念なことであります!でも本当、新幹線のおかげで富山が近いですね。講演のことで頭がいっぱいでしたから、こういうときはいくら富山まで行っているとは言え撮影機材は置いていきますよ。いや、もしすごくいい予報だったら持っていったのかも。。。
 講演といえば、私は非常に根が真面目なせいなのか(ツッコむところではありません)、ただ楽しませるような講演が正直苦手で、何かこう、考えさせられるような内容にしたいといつも思っています。普段から色々と物事を考える様にしていますので、ある程度知的レベルがないと講演をやる意味が見出せないわけなのですが、ですが実際は現場ではただ楽しませるようなものが好まれたりと時と場合によりけりですので、内容を決めた後に「本当にこの内容で大丈夫かなぁ〜」と心配になってしまいます。普段から物事に対して賛成と批判の両面で考えるようにしておりますし、自分にも賛成と批判の両面で考えるので、ふと批判の割合が多くなると自分にやられそうになるわけです。考えすぎ、もよくないわけで、そのうちのほほん楽しく生きられるといいのですが、こういう気質は変わらないのでしょうね。しかし本当に会場まで足を運んでくださった方、オンラインで参加いただいた方には改めて感謝致します。終わった後に、何というかこう声を掛けていただけるだけで、また一日なんとか生きることができた(大袈裟)、と思うことができます。「話、つまらなかったよ!」と私だったら私に言ってしまいそうで!
 さて、今回の写真ですが、登場回数も多そうな谷川岳でございます。と言ってもメインはベタベタな一ノ倉沢ではなく、お気に入りの幽ノ沢。一ノ倉沢はまあ言わずと知れた一大絶景地でございますが、故に多くの人に認知され鉄板化しておりまして、もちろん全く否定することなく素晴らしい風景が見られる場所ではあるのですが、天邪鬼の私はそんなところがやや気になってしまい、ちょっと外れたひと気の少ない幽ノ沢推しであったりします。マ、マチガ沢はどうなのよ?と言いたいところですが、まあマチガ沢は一ノ倉沢に行く途中についでに見られちゃうからノーカンです(意味不明)。やはりあと一歩、あと一歩を踏み出さないばかりに目にしにくい幽ノ沢の方がこう、面倒を見たくなってしまうのであります。う〜ん、どうでもいい評定である。
 まあしかしながら、マチガ沢は一ノ倉沢の小スケール版、一ノ倉沢はさすがに看板景色という感じで、幽ノ沢は小スケールでもなく、または看板でもないがちょうど良い感じのバランスを保った景色であることは間違いない。手前を飾る樹林の割合も良いし、堅炭尾根による荒々しさも良いし、マチガ沢は聖フェニックス、一ノ倉沢はヘッドロココ(ホロ)といったところに、幽ノ沢はヘラクライスト(赤)で答えているような感じである。ドバーンと誰にでも全方向の景色を見せられてしまうと写真の撮り様も逆に限られてしまったりするが、幽ノ沢はどう切り取ろうかを考えさせてくれるので、色々と撮り甲斐があるのだ。まあ、そんなこんなで若い頃に初めて行った頃から、幽ノ沢はいつも気にかけている場所であります。何だろうね、ゆっくりと休める場所がないからひと気がないのかね。
 撮影日は2011年6月22日。一ノ倉沢を朝から撮影するために前泊で水上へと向かいました。前日はゆっくりといつもよりはちょっと高めの水上の旅館に泊まり、ゆっくりと広い温泉に浸かって、、、な訳がない、もちろん土合駅泊であります。夜の20時45分ごろ、レプリティアンの住処っぽい地下深くのホームに到着し、いつものように無心で階段を上っていくわけです。地下深くのホームは涼しいのでいつも錯覚してしまいますが、地上に上るともちろんしっかり湿度も高く、あちーです。ということで、土合駅にて野宿。
 翌朝は5時から一ノ倉沢で撮影が始められるように暗いうちに歩いていきます。たいして涼しくないし、空を見上げると暗いのにぽっかり雲が浮いているところを見るとあまりいい予感がしません、谷川岳といえばいつものことですが。一応スッキリ晴れた一ノ倉沢を取りに来たわけなんですが、早速終わってしまうんでしょうかね。。。まあここまで来てとやかく文句言ってもしょうがないですから、とりあえず黙々と歩いていくしかないのです。
 ということで朝の一ノ倉は早速雲が湧いておりました。いや、いいんですよ、これで(たぶん)。朝イチの光はベッタリで別にただ晴れても良くないから、望遠で切り取ったりする分には雲が湧いてくれないとなかなか絵になりづらいわけで。そんなこんなでいくらか写真を撮っておりましたが、いや、でもこれこのあとのちょうど良い時間でも晴れないんじゃないかな。。。と焦り始めてしまいました。う〜ん、まあでも仕方ない。とりあえずずっと待ってても時間の無駄なので、先に幽ノ沢を済ませてこようと一ノ倉沢を一度離れました。このとき7時ごろなので、散々文句言った割には2時間も撮っていたのね。
 一ノ倉沢がもしかして晴れるまで幽ノ沢で時間潰すか〜なんて思っていましたが、到着するなりぐんぐん天気が良くなってまいりました。なんというかナイスタイミング。晴れてくれば撮るものも一気に片付きますので、40分くらいかな、幽ノ沢で撮影したのち一ノ倉沢へと戻ります。しかしやっぱり幽ノ沢はいいですね。ちょっと緑は新緑というよりかは濃くなってしまいましたが、またそれも良し。ここは谷川岳というかは一ノ倉岳が見えているわけですが、まあ何岳とこだわらずに、ずんぐりした山容と山深さっぽさみたいなのが楽しめるのが魅力です。ちょうど出合の水流もちょうど良い感じですし、やっぱり車が通れないのがいいのでしょうかね。また、がっつり沢が開けてないのがいいのでしょうかね。錯覚というか、そういうちょっとした違いで感じるものが違うというのは面白いものがあります。
 さて、一ノ倉沢に戻りまして。まあもう出合に着く前からがっつり青空に変わってきているのでテンションは高めです。晴れさえすれば!鉄板の撮影なんてすぐ終わるんです。と言いながら、あれやこれやと色々撮って、結局は1時間くらいやってたわけだから、結構長いね。そりゃあやはり主役の顔つきですから撮影もいくらでも絵にはなるのですが、なればなるほどオリジナリティが感じられなくなるのは言わなくてもわかること(言ってるけど)。仕事だから別として、撮ってて脳が喜ぶのはやはり幽ノ沢の方だなぁ、なんて思いました。ひと通り済ませたら土合の方へと戻り、お次はロープウェイで天神平へと向かいます。写真を見返すとマチガ沢に何台も車が停まっているのが古い感じがして良かったです。以前は平日は車入れたんだよなぁ〜、と。さらに以前はいつでも入れて秋なんか渋滞してたけど。今思うとよく入れたよね、どうやってすれ違ったのやら。
 11時20分ごろに天神平に到着。とりあえずここはひとつ落ち着いてソフトクリームを食べましてから、山頂へと向かいます。そこそこ晴れ渡っておりましたもので気分も良く、せっかくなのでリフトに乗って天神峠へ。山頂へ向かう分には結局ここから下るので登山的にはあまり意味のない天神峠ですが、見晴らしはいいですから損ではないです。ひと月前は水芭蕉が咲いていた峠はすっかり夏の装いで、また葉はやや薄緑ではありますがもう春はとうに過ぎ去った感があります。梅雨の晴れ間はボテーッとする日も多いですが、結構すっきりとした青空で気持ちがいいです。しかしまあもうお昼ですから、山頂に着く前にはガスるんだろうな。
 峠からは急ぎ足、私のペースで山頂に着いたのは1時間後でございました。無事、ガスの中です。と言っても遠くに晴れ間も見えますから、おそらく稜線だけなんでしょう雲がかかってるのは。ちょうど時期のホソバヒナウスユキソウを探して練り歩きますが、うう、なかなか見当たらない。ひと株やっとこさ時間かけて見つけましたが、あまりいい状態ではなく、周りの景色もあまりいい状態ではなかったので撮りませんでした。山頂付近にいると天候が崩れていきそうな雰囲気ですが、麓を見ると晴れているのでまあここだけなんでしょうな。ホソバヒナは向かいの朝日岳に行った方がいくらでも撮れるので気にすることはないですが、しかしもっとこの周辺でももっとあったような気がするんですがどうなんでしょうか。
 山頂からは往復、天神平へ戻ってきたのは午後2時半ごろ。やはり山頂部に雲がかかっておりますが、ここはぼちぼちいい感じで晴れております。この日はここから保登野沢ルートで麓へと下ります。一般的な谷川岳登山だと保登野沢方面の天神平南側へ来ることはあまりないかと思いますが、ちょっとここまでくるだけでもいつもより広々とした雰囲気の天神平の景色が楽しめます。もし、ここが自然のままの姿で、スキー場とかなくて、保登野沢を登ってぽっかり開けた天神平に出たら、いたく感動するだろうなぁ〜。。。スキー場開発されてなかったら見通し微妙なブナ林かもしれないが。。。まあしかしこんなところに広い平たい場所があるんだから、ホント不思議なものであります。「〜だったらなあ」シリーズを妄想すると、当たり前の場所が全く違う感じで脳内再生されるので、いつもそんな感じで景色を楽しんでおります。もしもシリーズではないよ。

撮影中です、10分少々お待ちください

 なわけで稜線以外は青空の下、暑そうな麓へと暑そうなルートで下ります。保登野沢を歩く人はまあ、、、ほぼいないので、人と出会わないのは楽しいですが所々踏跡が薄くなっていますので早回しで下れる感じではないです。迷うことはないと思うけど、まあ微妙。ここから先の時期、夏はヒルが出そうなのであまり下りたくはないですが、まだこの時期ならギリギリ行けるだろう、と。 下山すると湯テルメの目の前に出るので汗をかいても全く問題なし。こんなルートなら「撮影中です、10分少々お待ちください」というカンペを掲げる必要もないというところだ。 だがしかし『「撮影中です、10分少々お待ちください」のロケはあなたですか?』などというメールを送るのはやめてください。私は絶対そんなことはしませんが、何で私にメール送ってくるのよ。。。ちょうどその頃私は陸上日本選手権見てたので尾瀬行ってないし。
 標高差はさほどないので1時間ほどで麓のスキーゲレンデに到着、ちょろっと麓の浅間神社に立ち寄りして、汗だくのまま吸い込まれるように「湯テルメ谷川」へと入っていきました。まだ6月だというのに結構な汗をかきました。これからさらに暑くなると思うと谷川岳に登るのは躊躇してしまいます。でも何だろう、たっぷり汗をかくと、充実感があるなぁ。そして下山後の温泉はやはり気持ちが良い。

 と言いながら入浴後は
 たった2kmの道を歩かずに
 タクシーを呼んでしまいました。

 洗い流した後は
 もう汗をかきたくないんです。

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