Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート112
18 Apr 2024更新

2014年4月12日 撮影・越後駒ヶ岳


 いやはやもうなんだかよくわからない季節の進み方になったものです。桜は遅そうだ、、、と思いましたが、本当に遅く(と言っても本来の本来は今年くらいが平年なんだと思いますが)、なんとな〜くソメイヨシノも花と葉がいっしょに芽吹いている気がするし、東京と長野の差がなかったりするし。それよりも何よりも困りますのは、、、高山に雪がない(たかやま、じゃなくて、こうざん、ね)!!
 とあるところの桜と山を撮ろうかと思っていたのですが、ライブカメラで確認するに3000メートルの山がもう地肌が見え見えになっているじゃあありませんか。。。これでは絵にならない。いや、雪が圧倒的に少ないのはもちろんわかっていたことなのですが、とは言え3月は寒かったですし、流石に標高の高いところではいくらか雪が降っただろうからもうちょっとはあると思っていたのですが、、、もはや5月上旬並の積雪であります。河童橋から見る穂高も5月連休相当の積雪量だし、これは5月連休になるとどうなるのだろう。去年も非常に少なかったからなんとなくは分かりますが、そこからさらに少ない感じもしますから、もう怖い怖い。また夏は水不足になること決定だろう。
 いやしかし、これが常態化してしまうというのが非常に恐ろしい。写真が撮れない、なんて言っているうちはまだいい方で、生活面でも本当に水不足になりかねないちょっと恐ろしいスピードで変わってきております。とりあえずは本当、桜と雪山などという美しい組み合わせが見られなくなってしまうと思うとまずいなぁ。これからの若い世代の人たちはそれで当たり前、それが普通なんてことになってしまっても困ります。かと言って現実はそういう状況なわけですから、今度は昔撮った綺麗な白い雪山と桜の写真が逆に嘘っぽい、となってしまっても困るし。どうなることやら、です。もう今後はちょっとでも良い状況だったら撮っとかないと「山は逃げない」なんてこと言ってられなくなりますね。もう理想的な環境で撮れなくなってしまったら、撮るものなくなってしまうのでどうしましょう。雪もなければ花もない。やることない。これはもう違法賭博でもやるしかないな!
 さて、今回の写真は越後駒ヶ岳、なんですが、それはレポートの話でありまして、トップ写真ではカッコいい荒沢岳をチョイスさせていただきました。まあ越後駒はいつもの越後駒って感じがしまして、それはそれでもちろん素晴らしい山ですが、向いの荒沢岳にも目を向けてもらえたらな、と思ってこちらを大きい写真と致しました。撮影は2014年4月12日、まだなんとかちゃんと雪のある年でした。今年はもう超絶残雪の山っぽくなってるんじゃなかろうか。
 そういうわけで東京を早朝に出発、越後の山は新幹線でアクセスが良いので他のエリアに比べると思いのほか早く現地に到着します。朝7時半には浦佐駅に着き、すぐに在来線に乗り換えて小出駅へとやってまいりました。雪国ではありますがさすがにこの時期には駅周辺はすっかり春の景色になっております。そこからはタクシーで1時間ほどかけて銀山平に着くわけだが、東京から浦佐が1時間半なのに対して1時間って、ずいぶん時間かかってるものだな。まあそんなわけで気づくと午前9時にはドーンと越後駒も見える銀山平の石抱橋にいるわけだ。自宅出てから4時間と考えると自然なのかもしれないが、しかしながらそんなくらいの時間でこのある意味異世界のような場所にいるというのも何とも不思議な感じがするのだが、どうだろうか。
 さっそく目の前に広がる北ノ又川と輝く越後駒ヶ岳、、、。まあ美しいが真っ昼間ということもあって照明の当たり方がなんとも雑で写真的にはちょっと残念な感じがあります。雪で一面真っ白なのが余計にそんな感じにさせるのでしょうか。このときの撮影は雑誌の連載と雪山ガイド本にルートを載せているのですが、もともとはこのルートをガイド本には載せる予定はなく、別の山、御嶽山を載せる予定だったのですが、この年の秋に噴火事故が起きてしまい、急遽変更してこの越後駒ヶ岳を載せたというエピソードがあります。冬の御嶽山はただ単にまっすぐ登るだけなのでガイド的な意味では越後駒を載せた方が有用だとは結果的に思うのですが、まあそんなことがありました。
 ということで早速山頂へ向かってGO。まずは左岸を川に沿って歩いて行きます。ここは無雪期も一緒ですが、しかし雪原になっていると広くどこでも歩き放題という感じがするので何だか心も広くなったようにも感じる。大人の余裕というやつだな、これは。雪が降り始める初冬はきれいな雪山を見て「これこそ山の醍醐味、やっぱり一番いい季節だよなぁ」などと思うものだが、暖かくて気持ちの良いポカポカ雪山を歩くと「これこそ山の醍醐味、やっぱり一番いい季節だよなぁ」などと思ったりするので、おそらく山というやつはいつでも一番いい季節なんだろう。いや、自分がいい加減なだけか。
 しばらくは川に沿って歩き続け、本流から外れて白沢の方へと歩いていく。途中でおそらくこの辺りだろう、という雪がいっぱいだからよくわからない道行山への夏道登山口に到着するが、見た感じ登りにくそうなのでもう少し進んで少しでも楽に登れそうな尾根を物色しました。まあなるだけ等高線の間隔が広いところを狙うわけだが、雪がたっぷりなので登ろうと思えばどこでも登れると思うから、たぶん見通しの良さそうなところを選んだと思われる。平たい道から変わってようやく登り始め、さすがに勾配がきつくなるとすぐに身体中から汗が噴き出てくるわけだ。いくらか標高を上げるとそれなりに爽やかな風を感じるので暑さと寒さが絶妙にブレンドされて夏ほど不快ではないのだが、まあやや暑いかな。道行山までの標高差は500メートル弱なのでさほど時間はかからないはずなのだが、ずーっと真っ白い道が続いているだけあってなかなか焦ったいところがある。ちょっと標高を上げるとなぜかずいぶんと高度感を感じてハイな気分になってくるが、おそらく向かいの荒沢岳のダイナミックな景観によるところもあるだろう。う〜む、荒沢岳からは猛虎魂を感じる。少しトラ模様だからか?
 そんなこんなで鈍い登りを続け、昼12時半ごろに道行山に到着しました。歩き始めてから3時間半くらい、思いのほか時間がかかってしまった。やはり道行山からの越後駒の景観はすばらしく、ドーンという迫力だけでなく、長そうな尾根が山頂へと続いているのがそうさせるのか、どこか優美な姿であります。しかし今は太陽の角度が撮り時でないので、まずは撮るよりも先に山頂を目指してしまいましょう。この先の避難小屋に泊まってもいいっちゃいいのですが、道行山から朝イチに撮りたいので泊まるのはこの道行山に致します。まあ避難小屋から下るだけだからおそらく30分もあれば着いてしまうんでしょうが、それ以外の荷物もわざわざ上まで運ぶというのも億劫であります。とりあえずここでテントを立ててしまい、いらない荷物を中に置いてから気分ラクラク空荷で山頂へと向かいました。いや、荷物が軽いと本当に楽!
 こういう雪がたっぷりついている山に来るといつも思うことですが、本当に夏道より歩きやすくて楽しいです。ずっとただだらだらと斜面を歩くだけなので、段差が一定で使う筋肉はほぼ変わらないし、つまり頭も使わない。なのでもっと多くの人がこの時期に登ってもいいとも思うのだが、ひとたび天候が崩れればまた冬に逆戻りみたいな場所だから難しいのかな。なんかこう、この時期はもっと観光資源として活かせるのではと思ったりするのだが、そんな思いつきは誰でもしそうだから何か難しいことがあるんだろう(適当)。
 とくに急ぐこともなくだらだら登りをひたすらに続け、午後2時40分ごろに避難小屋に到着。振り返る銀山平は遥か遠く、よくもまあ何時間か歩いただけでこんな遠くまで来れるものだとどこか不思議な気持ちになりました。直線距離にするとものの6kmほどしかないからたいしたことないのだろうが、6kmというのは実は長いのかもしれない。西日はいまだ銀山平の方を照らしているが、向かう山頂への斜面は少しずつ日陰が広がってきており、先ほどとは違ったどこか少し寒々しい色を見せていました。しかしここまでくれば、山頂はあとひと登りである。
 本当にひと登り、午後3時すぎに越後駒山頂に到着。日陰の斜面を登り詰めた稜線で再び陽の光に照らされ、やや燻っていた気持ちも一気に晴れやかになる。急登のないだらだらのんびり登りといっても何時間も歩いていればどこかしんどいもので、とりあえずひと仕事終わったという安堵感は何者にも代え難い。たいしたことはしていないがレベルどうこうではなく、晴れやかな気持ちになるのはいいもので、それもこう「しんどい」とか「面倒くさい」とかいう足枷のおかげでもあるんだろう。春らしい温かみのある西日がなんとも優しく周囲の山を照らしており、成り行きではあるがこの時間に山頂に立てたのは良かった。向かいの八海山は方角的にどうしても暗くなってしまうが、真南の中ノ岳はしっかりと半身西日を受けて輝いていた。う〜む素晴らしい。荒沢岳も素晴らしい山であるが、この中ノ岳もまた素晴らしい山でもっとフューチャーされていいと思うのだが、やっぱり「駒ヶ岳」のネーミングには負けてしまうのかね?まあ魚沼からドドーンと見えているのが駒ヶ岳だから仕方がないか。
 いつもながら登るのに散々時間かけた割には山頂にいる時間というは短いもので、15分もしたら下山に取り掛かりました。できればもうちょっと撮っていたいし、日が沈むまでいれば良かった、、、と後から思うものですが、テントも遠いし仕方なかったのかな?避難小屋泊プランだったらいられただろうけど、そうすると到着時間がもっと遅くなっていたかもと思うとそう簡単でもない。ヘッドランプで下れば良かったのではとも今更ながら思うが、同行者もいたしで無理はしなかったのかな。ともかくいつも帰ってきて写真を見直すと「もっとできたはずなのに」と思うのですが、現場とデスクだと考えることも違うんでしょうね。まあでも気合が足りない!といつも思う今日この頃。
 下りはずっとだらだらと歩くだけなので、本当に30分そこらで道行山に戻れました。まだ荒沢岳にはまだ日が当たっており、一日の最後を締めくくる景色を見せておりました。これはこれで山頂にいたら撮れなかったし、やっぱり仕方ないのかな。自分が三人くらいほしいところである。

久しぶりに汗をかきながら

 翌朝はほぼ真後ろ、越後駒とこの道行山のほぼ直線状に太陽が昇ってくる。朝でも寒さを感じない雪山の景色というのはほのぼのして良いが、べったりと越後駒に日が当たってしまうのはいささか残念ではある。見下ろす銀山平に少しづつ色をつけながら、眺めているうちにどんどんと日が昇る。連載の写真を撮るのにもう少しだけ待って少し影がつくように、とも思ったがそろそろ日も高いこの時期、午前中はずっとべったり照明である。かと言って午後だと山頂は陰ってくるし、撮るなら今しかないと思いました。ちょうど人を立たせたところに日が当たるくらいの早朝感が雰囲気があって、べったり照明でも何とかなるだろう、と考えたのですが、、、どうだろうか?でも朝の雰囲気があって良かったとは思うけども。
 ひと通り撮り終えて下山にかかる。どうしてなのか記憶が定かではないが、当初の予定ではまた小倉山に登り、そこから駒ノ湯へと下山するつもりだったのだが、楽な方に気持ちが惹かれたのかただ来た道を戻ることにした。酷く疲れたという記憶もないし、今思うともう一度駒ヶ岳山頂に登ってもよかったのではくらい思うところだが、まあ満足してしまったのかな。ルートガイドを紹介するにも銀山平から往復で十分と思うし、駒ノ湯も別にアクセスがいいわけではないし、ましてやこの時期、標高を下げすぎると途中から雪がなくなって歩くのが面倒にも思える。気持ちの良い雪道だけで終わった方がキリがいいし、、、ってそんな理由かよ!
 ともあれ下りはサクサクと下りまして、1時間半ほどで石抱橋へと戻ってまいりました。雪たっぷりなのにポカポカの春山が楽しめるというのはやはり2000メートル級で豪雪地帯というこの山域ならではなんだろう。日本アルプスは春山とは言っても何だかんだやっぱりちょっと寒いし。こうして久しぶりにどっぷりと汗をかく、というのはどこか幸せである。冬の間は発汗量が少ないし、汗をかかないと老廃物も出ていかないので気分も滅入る。こうして体の中から血液を循環させて、初めて快適な体を手に入れられるというのをこの時期だからこそ実感します。夏までくるともう汗かきすぎて疲弊しちゃうけど、やっぱり汗をかくって大事です。

 このあとタクシーで小出へと戻り
 浦佐からは新幹線で一気に帰宅

 やはり素晴らしいアクセス
 アクセスがあまりにもいいからか

 帰りに汗を流した記憶がない

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