Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート109
23 Jan 2024更新

2014年1月20日 撮影・平標山


 うーむ、しかし今年の雪は少なすぎる。昨シーズンも少なかったが、明らかにそれを大きく下回る積雪量であります。そして何と言っても一番大きなところは暖かいというところ。降雪量は少なくてももう少しそれなりに冬らしい寒さはあったと思うのですが、今シーズンはちょっと油断するとすぐに暖かくなる。沢沿いですら例年の12月頭くらいの積雪で、稜線に上がると例年の11月下旬より少ない。ハイマツもちょこちょこ見えていて、雪面に至っては春らしいテカリが見えてしまうほどである。毎年何だかんだで年明けるとそこそこは雪が積もったりするはずなのですが、もうこのまま春を迎えそうな今年、一体どうなるんでしょうか。間違いなく7月頭には花が咲いてしまうでしょうし、水不足になるでしょうし、紅葉も期待できない気がビンビンとしております。11月からずっと見ていてことごとく南岸低気圧ですから、もうずっと春のような気象状況なんですよね。これでは日本海から雪が降ることはそりゃあ少ないですよ。
 そんなでも撮りに行きたいところはあるのですが、労力をかけて撮れるものがないとなかなか厳しいものがあります。とは言え今後はこれがスタンダードになるかもしれず、それが現実なんですよ、と言われてもそうなると絵としては非常につまらない。もちろんいつかはドカンと雪が降る年はあるでしょうけど、いつもやきもきしなきゃいけなくて本当に困ったものです。私は現状のドキュメンタリー派ではなく理想の自然風景派なので、そうなるとなかなか難しいですね。樹氷とかも今年はきついだろうなぁ。房総のスイセンでも撮りに行くのがいいかなぁ、、、って最近は房総もキョンが増えてて大変らしいし、もう訳わからん。
 まあしかし山の上にあがるともちろんそれなりには寒くて、そりゃ人間誰しも限界はありますから、マイナス20度だろうがマイナス8度だろうがいくらか冬になればそりゃ寒いよね。2月下旬〜3月あたりにオンエア予定のロケはなんとか無事終了しましたので、ぜひご覧になってくださいませ。こんな中でもなんとか冬っぽい写真は撮れてると思いますよ。雪は少ないけど、やっぱり冬の山は寒い!
 さて、今回の写真は雪がまだたっぷりと降っていた頃のものです。なんて言い方するとちょっと哀しいですね。撮影は2014年1月20日、2014年と言えばこの年もやたら南岸低気圧が多かった年なのですが、しっかりと寒気もありましたのでそのせいで関東に大雪が降った年でありました。1月20日だとまだ東京に大雪が降っていなかったので、このときはいつも通りの冬という感覚でしたけど。
 写真を見ていただいて分かる通り、、、作品撮影で入ったわけではなくて、雑誌の表紙、巻頭グラビアでの撮影でした。なんて言い方すると表紙は作品ではないのか、と思われそうですが、私にとっての「作品」というものはやはりゴテゴテストレートの山岳写真なものでして。。。お許しください。でもまあ写真見て分かる通り、ただ撮っただけのものですね。というのもこのときは特集がたしか山スキーだったかと思いまして、そんなわけで我々表紙グラビアもじゃあスキーにしようということでスキーを題材にしたかと記憶しております。なので万が一天候が優れなくても滑ってしまえば絵になる!と半ば投げやり(?)なところがあったかもしれませんが、一応天気の良い日に入ったつもりなんですよ?まあぶっちゃけると午後から天候が崩れてくるのはわかっておりましたが、少しでも持ってくれたら、という感じだったような。スキーするのになるべく近場が良いし、雪の多いところじゃないとダメだし、ということで谷川連峰の平標山を選んだわけですが、振り返ってみると谷川連峰は天候に関しては一番信用ならない所だったような気もする。。。そんなことはわかってもいましたが、雪の量に関しては問題ないところなので天候が崩れる前に終わらせようと考えたと思います。
 行程はもちろん日帰りでございます。標高差は約1000mある上に豪雪地帯ですからそれなりに大変ですが、ほぼ空荷なので問題ないでしょう。そういうわけで朝早く自宅を出まして越後湯沢へと向かい、平標山の麓に着きましたのは朝の9時ちょい前でございました。いつも通りまったく雪などとは無縁の東京から新幹線に乗り、上毛高原駅からグイッと谷川連峰の真下をくぐり抜けるといきなり全面雪国の世界へと躍り出るという爽快感を味わいつつの現場入りでございます。いつもここに暮らしている方々はそりゃあ大変だと思いますが、ちょっろっと遊びに来る輩と致しましては申し訳ありませんが楽しいだけの世界であります、はい。というわけで9時スタート、ここから何とか日が暮れるまでに無事仕事が終われば良いのですが。
 バスを下車していつも通り林道を少し進んだところで準備を始めました。スタートから早速十分な量の雪がありますのでいきなりスノーシューが履けるのが素晴らしい。そんなわけでスノーシューを装着していたのですが、急に人が現れて「ちょっとあんた、ここで何やってんの?」と声を掛けられまして、「いや、これからちょっと山に登りに行くので、、、」と答えたら、「ここでやらないでよ。わからないの?ここ学校内なんだけど!」と怒られてしまい、、、いや本当に申し訳ないのだが、雪が多すぎてどっからが道でどっからが学校なのか境目がわからなかったのでありました。。。そりゃあ現地の人は雪があってもわかると思いますが、、、全部積もっているもんだから全くわかりませんでした。。。ごめんなさい。久しぶりに調べてみるとこの学校は2013年に廃校になっているようで、また新たに使われているようだが2014年の1月に果たして使っていたのかどうか。。。ぜんぜんひと気を感じなかっただけに本当に全く気づかずごめんなさいです。不審者の不法侵入でした。
 ということで気を取り直してスタート、少しの間は林道を進みまして程よいところでヤカイ沢へと入ります。平日なので誰もいないかと思ったのですがトレースがありましたので何人か入っているようです。たいした時間もかからずに樹林を抜け、空がカッポリと開けた場所へと誘われます。視界の開けた先には平標山がドスンと見えているわけですが、何とな〜く近くも見える。まあ雪の量から考えるにそれなりの時間はかかるんだろうな、とはもちろん思いましたが、無雪期なら1時間あれば行けてしまう距離、遠くはないはずである。雪の量はスノーシューを履いて脛くらいですが、先行するトレースもスキーっぽいし、後ろの同行者さんもスキー、というかヤカイ沢に来てスキーじゃないって、何しに来たのと言われそうであるがいいのだ、私はスノーシューで貫く(もう何年もスキーやってないだけ)!
 さて、大きく懐を広げたような格好の平標山へと登っていくわけだが、もちろん一番雪量がありそうなど真ん中に突っ込むわけではない。ヤカイ沢とは言うものの、出合には出るがそのまま右手の尾根を登っていく。とりあえずはどこかで山スキーをしている絵が撮れればぶっちゃけ仕事は済むわけだが、かと言って山頂を踏まないとそれはそれで格好がつかない。なので何とか上まで登ってどこかで滑っているシーンを撮って、と考えるとなかなか時間的にきつい気もして、とりあえずここからは狂ったように頑張ってラッセルしていたように思う。同行者がスキーを履いていようが体力では負けません、スキーなんぞに負けてたまるかという野暮ったい気持ちで一生懸命歩いていましたが、あまりの一生懸命だったのか先行のスキーヤーをも抜く始末。気持ちが乗ってくると、うお〜もう誰も俺を止められねえ!という気持ちになってきますが、側から見るとスキーに比べてやっぱり野暮ったいですね。帰りは一人だけ滑らず歩くんだろうし。。。出合では少し青かった空も次第に鉛色となり、天候面でも気持ちが焦ります。
 どこか絵面が良さそうな、表紙と見開きが撮れそうなところを早めに見つけて撮っていかないといけません。ラッセルしながら体力を削り、撮影場所を探しながらメンタルも使うという側から見るとなかなかハードな仕事ではありますが、かと言って撮影の許容範囲は広いですからまあそんなに大変でもなかったり。そんなこんな夢中でもがいていましたが、しばらくしてスキーの同行者がペースダウン。おい!このままだと山頂まで辿り着けんぞ!やる気出せ!と体育会系のノリを持ち込みたいところですが、そんなことして気分悪くして降られては元も子もない。ましてや下りでスキーに追いつくわけない。同行者入りで山頂稜線に到着する絵面は欲しかったですが、まあいらないと言えばいらない。許容範囲で言えば人が写ってなくとも山頂の絵があれば何とかなるだろう、とそこそこのところで休んでてもらい私だけとにかく山頂を目指したのでありました。急がないとどうにもならない、このあと表紙見開き撮らなきゃならないしとにかく押せ押せで大変だった記憶があります。
 結局同行者を切り離してからハイパーペースアップして山頂まで1時間弱かかりましたから、まあそうして正解でした。呼吸を荒げながら何とか稜線に達し、山頂の看板をパチリと撮ったらすぐに走って引き返しました。せっかく登ったのだからもう少し撮りたかったですが、空もずいぶん曇ってるし見晴らしは良いけどあまり題材がない感じでもありました。しかしなぜか後ろ髪を引かれる思い、たぶん頑張って疲れてまで登ってきたからでしょうが、だからと言ってそれに写真が左右されるようであってはいけません。というかそんな余裕ないか、早く下って仕事を終わらせないといかんでしょ。

走ることだけが取り柄です

 なわけで急いで下山。尾根上で休む同行者のポイントまで戻り、そこからちょっと登ったところで撮影開始。どん曇りでしたが幸い視界は良く、滑る方面の苗場山の山なみはよく見えていましたからまあ何とかなるかな、と言ったところ。晴れてくれてたらもっと良かったけど、、、こればかりは仕方ないですね。とりあえず見開きの広い景色の中を滑るカットを撮り始めましたが、う〜む、イマイチ爽快感がない。地形によるものか、向かいの山によるものか、おそらく滑る斜面が大きく見えていないからなんでしょうけど、あまり納得はいかないですわな。できるなら山頂から撮れば視界を邪魔する木々がないのでもう少し開けた斜面感は出たと思いますが、なんとかここらで手打ちにするしかない模様。そのあとはすぐに縦構図で表紙のカットを何度か滑ってもらって撮りました。目の前まで滑ってきてもらってスキー板で雪をジャーッ!って吹かしてほしいわけですが、一発でうまくいくはずもなく、何だかんだで10回はやってもらったような。ここでだいたい午後3時半でしたから、時間的にはギリギリ、暗い中歩きたくないので仕事が終わると今度は速攻で下山に取り掛かります。
 同行者はだいぶ疲れているハズ、と思っておりましたが足にスキーを付けているので下りは滑っていく模様。何とか遅れを取るまいと走って下った思い出が。勾配があるうちは走りでもスピードが出せるんですが、出合あたりに下って平らになってくるとスピードを出すのがつらい。スキーヤーは少し下り勾配ならスーッと進んでいくのでうらめしい。スキー練習しようかなぁ。と言いながら機材とスキーとテントと、とかただでさえアイテムが増えるとやってられないからなかなか難しいな。私は山に遊びに来るわけでなく、撮るために来ているので、やはり最優先にしなくてはならないのは撮影である。
 急いで下ったおかげか上りは山頂まで約4時間くらいかかったところが1時間半ほどで下ることができた。ヤカイ沢は初めてでしたがなかなか良いルートで、そのうちまた来たいと思いました。途中でテント張って、今度はくっきりと晴れた山なみを山頂から撮りたいですが、ここ最近の積雪量を考えると難しそうですね。当たり前に雪が積もると思っていた場所も本当に少なくなり、そのぶん現地の方は過ごしやすくなったかもしれませんが、やっぱり寂しいなぁ。次に来るときはウェーブライダー形態に可変できるZガンダムさながら、スキーでサーっと下っていくと格好良いかも。

 あれから10年が経ちました。
 相変わらずスノーシューで頑張っております
 その姿はZガンダムどころか
 変わらずジムって感じですね

 撮る作品も量産型ですか?

 ってやかましいわ!

TOP

Past Articles

※過去の記事は4回まで掲載。それ以上は順次削除します。

TOP