Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート110
21 Feb 2024更新

2013年2月17日 撮影・甲武信ヶ岳


 2月なのに暑い!もうこれはおそらく地球の終わりだろう、などと思う今日この頃だが、ジュラ紀や白亜紀はもっと暑かったからセーフとかなんとか。そんな中でも先日ちょうど東京でも雪が降り、今しかない!と穴をついて山に入っておりました故にレポートも遅れてしまいました。山で停滞中に書こうかな、などと思っていたところ行程は長いし、毎日そこそこ晴れて休む時間なんてほとんどないしで全く書けませんでした、すみません。しかしながら高い山ではそれなりに雪が積もっており、結局また今年もダメなんじゃ、、、とはならずになんとか絵にはなりましたのでよかったですが、それでも正直平年の年末年始くらいかな、、、と思うところであります。直前まですごい少なかったですから、2月頭の雪でようやく結構降っていくらか見栄えが整い、本当にちょうどそこのタイミングを突けた感じです。もちろん山上でも暖かかったですが、、、下ってきたらもう完全に春の陽気でしたので、今からはもう雪が締まってテカって冬山はおしまいでしょう。となると本当に今シーズンの冬山はこのタイミングしかなかったのでは。。。と思うところです。う〜む、本当に雪山が撮れる期間が短くなってしまったものです。
 撮りたいものはいくらでもあるのですが、理想のシチュエーションにならなければ結局撮っても意味のないもので、ここ近年は本当に苦しめられております。春も早いし、夏の花も早いし、秋は染まらないし夏雲出ちゃうし、しかし紅葉が終わってから雪が降るまでの結構何もない時期が一番しっかり長いような気がする。。。この時期は実際はすごく短いからこそ刹那的で絵になるところがあるのですが、長いとう〜む、、、そんなに撮るものないよ、、、となってしまいます。文句を言っても仕方がありませんので合わせていくしかないのですが、撮れるタイミングが難しくて短いのはなかなかきついものがありますよ。まあでも今回はそんな中でもなんとか撮れたかな、という気がするのですが、2月と言われると、、、ちょっと違うかもね。何とかならんもんかな、と思う反面、歳もとって体も疲れてきているので暖かいのはちょっと嬉しかったりして。この怠け者めが!
 ところで、秋から冬にかけてロケをしておりました分がそろそろ放送されますので、皆様何卒ご視聴お願い致します。そのうちほとんど更新してないNewsページでも載せますが、NHKBSにっぽん百名山3月7日放送回です(BS4Kでは2月29日放送)。肝心のお山は木曽駒ヶ岳。皆様木曽駒と言われてどれだけの人が明確な山容をイメージできますでしょうか。富士山、浅間山、開聞岳、、、なんかは当然できますよね。穂高、槍、甲斐駒、仙丈、、、これもまあできますよね。では木曽駒、といったときに「これぞ木曽駒!」と言える絵が皆様の頭の中に思い浮かぶかどうか。そんな木曽駒ヶ岳が美しく見える場所を秋から冬にかけて探す旅でございます。きっと最後には美しい木曽駒の姿が拝めるはず!の90分、何卒よろしくお願い致します〜。紅葉は微妙だったけどそれなりに紅葉感は、雪は少なかったですけどそれなりに雪山感は出てると思いますよ。
 さて、今回のレポートですが、冬の甲武信ヶ岳でございます。撮影は2013年2月17日、珍しくモロ土日であるが天気の都合と同行者がいましたので気にせず入山した気がします。と言っても2月も半ば、今年みたいな状況ではなく普通の冬であれば積雪もそこそこあるので自ずとこの山域にそんな多くの人が来ることもありませんから、撮影に影響するようなことはなさそうと考えておりました。このときの山行は翌年の雑誌で記事を書きましたが、まあ字数も少なかったですしどうということもないでしょう。1年後と11年後だと記憶もだいぶ違ってて整合性が取れていないことも起きるかもしれないが、そこは私の記憶力のチャレンジであります。ってそれ程の出来事があったような気はしませんが。 
 行程としましては2月16日に入山して甲武信小屋で1泊、そのまま下ってもつまらないので大好きな雁坂峠経由で道の駅みとみへと戻るコースであります。ピストンならそこそこする人はいても雁坂峠まで足を延ばす人はさすがにあまりいないでしょうし、時間的にもちょうど良いと踏んでそのルートに決めました。標高、山域からまあどうぜ微妙な積雪、ほぼ樹林帯ということもあって装備は万が一のためのにワカンを持ってくくらいのもんでしょうと、余裕の入山でございました。そう、余裕の入山でございました。。。
 16日は早朝に自宅を出まして新宿にて集合、若き女性2人を同行しての登山です。そりゃあ男一人で女性に囲まれてなんて楽しいそうだなぁ〜なんて思うわけですが、実際は女性の扱いはさほど上手くもなく、かつこう言っては申し訳ないが女性は複数人集まると所謂特有の独特な会話になるので(女子会みたいな?)、そういうのについていけないので案外ストレスになったりする省三であった。もっとこう、(こう言っては申し訳ないが)意味のある深い哲学的な話とか、(こう言っては申し訳ないが)現在の経済状況とか、(こう言っては申し訳ないが)世界を取り巻く政治状況とか、そういう話がしたいのですが、うわ〜入れない!いつだったか女性3人独り占め旅をしたこともあって(なんだそれ)、そのときも非常にキツかった!もう話に入れないので何だか除け者状態になるのでありました。もっとウェーイ系にならないといけないのかもしれないが、まあ真面目君の私は無理なのだよ。。。そういうの。
 しかしながら山を歩き始めてしまえば逃げ場もできるというもの、山梨市の駅から西沢渓谷のバスをやり過ごしてしまえば、あとは大自然に抱かれて気持ちもリフレッシュさ。って一人で来りゃよかったんじゃないか?とりあえず何とな〜く到着した登山口(実際の取り付きはもう少し先だが)にはさほど雪はなく、青空もあって少し暖かく感じられた気がしました。この年の年末年始も散々ラッセルとかしてきた体なもので、こういうちょっと雪を踏む程度の場所に来るとやはり気持ちは楽だし、不思議と寒さも感じられないというもの。当然今年に比べたら寒かったのは間違いないが、ぱっと見は常緑樹いっぱいの山を見るとやはり寒さを感じない。バスを降りてから30分ほど林道を歩いて、いざ徳ちゃん新道にて山上を目指します、ってここからずっと長い樹林なのよね。。。
 正直取り付きから木賊山までの登り道での記憶がほぼない。それは女子会が嫌いだから、とかそういう理由ではなくここを登るときは大抵いつも記憶が薄い。ずっと変わらず樹林帯だからか、はたまたとにかく急いで上まで登ってしまいたくて夢中に登るからなのか、私にもよくわからない。変化がないっちゃぁないけど、途中花は咲いてなくともそれなりに石楠花ゾーンはあるのに、なぜだろうか。わかりやすくタイミングが切れるものがないからかなぁ。ここは何度も登っているのだが、いまいちパターン化できないのは撮るものが少ないからかな?まあでも石楠花ゾーンは薄ら覚えており、そのあたりの高さを越えてから雪も濃くなったのは覚えています。と言いながらちょっと開けた場所から対面の雪を被った樹林を一生懸命に撮っていたような記憶もある。まあいずれにせよずっと樹林である。
 木賊山手前まではトレースがあり、途中でそのトレースをつけたと思われるパーティーを抜いたような記憶はある。ちなみに今回は雑誌の表紙を務めてくれた女子を連れているのだが、このとき抜いたパーティは実は翌年の表紙を務めてくれた女子の山岳会の人だったようなことを後から聞いたような聞かなかったような記憶がある。何だかわからないが世界は狭い、ということを言いたいのだろうがそもそも日本は狭い。なのでそんなこともよくあることだろう。しかしこのあやふやの記憶ははたして正しいのかどうか、私は普段あまり人と話さないのでさらには何が正しいかったのか本当だったのかわからなくなってくるところが怖いところ。そうなるとそもそもこのレポートは一体何なんだろうか。。。ともかくそんなわけで途中で1パーティーを抜いてからはトレースなし、ツボ足で脛くらいだったかな、そこそこの積雪の中を登って行ったのでありました。そこはおそらく間違いない。
 さてようやく稜線である木賊山に到着、午前11時ごろに取り付いて午後4時半到着なので5時間半もかかったことになる。そもそも確か私がテントを運んでいるし、晩の鍋を運んでいるしで一番荷物は重いはずだが、女性二人のペースはそれに輪をかけて遅いわけで、それに合わせて歩いているとやはり時間がかかるものである。しかしながらここまで来れば小屋まであともう少し、そろそろ痺れを切らしたところもあってここからはトレースつけて先に小屋で待っとるわ!と一人で格好良く飛ばしていったのでありました。天気も少し下り坂になってきており、自分だけでも暗くなる前に着いちゃいたいもんね、というところでしたでしょうか。
 木賊山から小屋まではかかっても20分くらい、もうここまで来たらツボ足のまま行ってしまえるでしょう。後ろの二人に体力の違いというものを見せつけてやるぜ!と勇んで進んでいったと思いましたが、一旦下ってから平たくなるところで急に深くなった雪に足を取られてもがいてしまいました。石の間なのか木の根なのか股くらいまで片足全体が埋まってしまい、もちろん荷物も重いということでなかなか出られず。。。こ、こんなところに後ろ二人が追いついてもがいている姿を見られてしまってはあまりにも情けないッ!!っとさらにもがくわけですが、なかなか出られない!ワカン着ければよかった、と思いましたが今更思ったところでどうにもなるまい。こんなまるでゴキブリホイホイにかかったゴキブリのような姿を見られてしまったら、もう小屋ではゴキブリ呼ばわりされるに違いない。何分か格闘して何とか切り抜け、涼しい顔をして小屋で待っていたのは今となってはいい思い出です。見られていたら今頃はゴキブリでした。ヤマトですか?チャバネですか?ってうるせーわ。生命力だけはあるんだよ!
 そんなわけで小屋で1泊、他にはさきほど追い抜いた1パーティーと単独登山者が一人くらいがいた気がする。土日にしてはさほど賑やかではなく、ちょうど良い感じで良かった。夜はのんびりと過ごしたような気がするがよくは覚えていない。覚えているのは酷く筋肉痛だったのと、冬山で寒いから女性陣二人に挟まれて寝ようかと思ったら拒否されたことくらい。11年前だから私は35歳、まあ十分おじさんであるが女性二人は20代でしたので拒否する気持ちもわからんでもない。しかし11年経って今頃は彼女らもすっかりおばさんになっていることだろう(すごく余計なお世話)。いやいや、自分も11年経っていますから。もうおじさんというよりなんでしょう、初老の男性でしょうか。時とは残酷なものであります。でもこのとき筋肉痛だったのは、ちょうどこの頃からジムでのウェイトトレーニングを始めたのが理由で、筋肉は当時よりも確実に増えて体格は良くなっており、100m〜1000mくらいまでは確実に速い。なので体力はこのときよりもあると自負しているから「まだ若い!」と言いたいところですが、実は調子の良い日が確実に減ってる気がする、という瞬間的高性能スペックという気がしないでもないので、まあジジイなんでしょう。人間五十年、無理せず逝きたいものです。
 何だか話がだいぶ脱線したような気もしないでもないが翌朝、私は日の出を撮るべく先に一人で山頂へと向かいました。今年の雰囲気からは想像つかないですが、それなりに寒い。とは言っても3000m峰の吹きさらしの山頂とは違いますので撮影もどことなく楽なところはあります。朝焼けの富士が美しいのは言うまでもなく、金峰山とその奥に見える南アルプスの山なみが一番印象的でしたでしょうか。やっぱり空気が澄む寒い季節じゃないとここまでくっきりと南アルプスを見渡すことができませんから、奥秩父から見えると何とも嬉しい。いいなぁ〜白いなぁ〜こっちは黒いよ、みたいな感じでやはり白い峰には憧れを感じてしまいます。高気圧に覆われた朝の見晴らしは素晴らしく、中央アルプス、北アルプスもくっきりでした。八ヶ岳、浅間山の眺めもよかったので、展望に関しては本当に申し分なかった。そうこうして山頂での撮影をそこそこ終えたころに同行の二人が上がってきて、全員無事甲武信ヶ岳登頂ということになりました。
 さてさてここからは行程もそこそこ長いので早めの出発をしなくてはいけません。6時半の日の出から7時半まで山頂に滞在してしまいましたから、実はあんまり余裕はない感じ。急いで小屋に戻ってそそくさと出発致しました。天気は概ね晴れ、ここからは標高差の少ない稜線歩き(樹林帯だから尾根っぽいけど)を楽しみたいものです。いや、これが結構思い違いで無雪期は気にならない標高差なのですが雪があると。。。
 小屋を後にし、昨日捕まったゴキブリホイホイの箇所を何もなかったかのように通過、木賊山へと戻ります。木賊山から振り返る甲武信ヶ岳はいつもながらに格好良いですね。さてここから、登ってきた戸渡尾根を下ってしまえばすんなり終わる登山なのに、雁坂方面へと足を向けます。ここからダラーッと下り始めてしまうともう後には戻れないでしょう。昨日の失敗を踏まえてこの日は早速ワカンを着けて進んでいったのですが。。。思いのほか積雪があって足を取られる始末。破風山の避難小屋までは下りなのであまり気にならなかったのですが、登りになると結構大変。あれ?奥秩父なんてチェーンスパイクでも余裕、くらいに来る前は思っていたような気もするんですが、スノーシュー持ってくればよかったと何度思ったことか。幸い女性二人を連れているのでペースこそ遅いので助かりますが、時間がかかるとそれはそれで疲労度が増えるというもの。何となくこのときから、これこのペースで何時に雁坂峠に着くかなぁと心配しておりました。

折れたのは気持ちではなく

 自分の予定では午後2時くらいには道の駅に下っており、バスで途中下車して笛吹の湯で汗を流して帰るという青写真を描いていたつもりなのですが、気づいてみたら避難小屋から破風山までの標高差200mをまさかの1時間半かかる始末。チラッと女性陣に目を向けると、女性特有の、と言っては大変失礼ではありますが!全く時間のこと考えてなさそうな楽しそうな雰囲気!ここでイライラして「急がんと間に合わないぞ!」と言ってペースなんか上げようものなら気分を害して一転批判されそうな雰囲気!ここはグッと我慢するしかありませんが、せっかちな私はどうしたらいいものか、と。そりゃあさ、急いで疲れ果ててまで予定通りにこなすのが正しいわけじゃないですが、かと言ってあまり文句を言ったところで目の前の雪が少なくなるわけでもない。結局はやはりこの雪が遅れの原因なのであって、これを片付けないことにはどうにもならないわけでして。朝方はすっきりした青色が広がっていたのになぜか次第に鉛色のになってきた空の色にリンクするように、私のテンションもダダ下がりでとにかくきつかった思い出があります。スノーシュー、スノーシューさえあれば。。。何度念仏のように唱えたことか。おそらくこのときからワカンを全く使わなくなったのですが、これだけ苦しめられればそりゃあね。もはやワカンは過去の遺物、そう認識したのでありました。
 雪質もよくなかったからか、とにかく時間ばかりが過ぎてゆく。やっとの思いで雁坂峠に着いたのは午後2時半でありました。もうそうなると、無事に事故なく暗くならないうちに下山できればいいよね、となる。先ほどまでは心の中ではイライラ度MAXの軍隊曹長のようだった私の気持ちもすっかり丸くなり、もうどうにでもなれ、という開き直った感じです。下りなんかとくに、急いで歩いたら怪我しそうですからそれだけは避けたい。何だかんだ心の中では「早くしろ〜早くしろ〜」「ペース上げろ〜ペース上げろ〜」と思ってはいますが、もうどうしようもない。よくよく考えると全く焦ってなさそうで楽しそうな女性陣のほうが登山に向いているのかもしれない。
 何とか登山道を切り抜け、安全圏内の林道に着いたのは午後4時半。年末年始にくらべれば日も伸びたこの頃、いくらか暗くなってはいるがまだやれそうな明るさである。あとは林道を歩いていくだけだから問題ないと思ったのだが、林道は林道で微妙な積雪が少し溶けて氷になっており、歩きにくいったらありゃしない。そうこうしているうちに間に合わず、やはりヘッドランプのお世話になることになった。やっぱり山は一人で歩いたほうが気楽だよね。。。雁坂トンネルの料金所が見えたあたりでだいぶ暗くなった覚えがありますが、ともかくそのあとしっかりと真っ暗になったのは覚えています。最後の最後、国道が近づいてきてからなぜか道をロストしてしまい、でもどうせ国道にぶち当たるからと直進すればいいよと藪の道を強引に下っていきました。最後に滑ったのか、疲れて足に力が入らなかったのかわからないが暗い森の中で転んでしまった。

 無事国道に出ましたけど
 転んだときにストックが思い切り曲がってしまった
 別に焦っていたわけではないが
 いや、やっぱり焦っていたのだろうか

 やっぱり女性陣のほうが
 登山に向いているのかもしれない

 グスン

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