Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート133
10 Dec 2025更新

2014年12月9日 毛無山


 今年も相変わらず雪の積もりが遅い。11月の降り始めはぼちぼちかな、などと思ったのだが、ひと月たってあまり変わっていないか減っているところもある。北アルプスは少し降ったのでなんとか形になっているかもしれないが、南アルプスや富士山は少ないなぁ。富士山はとくに静岡側が結構厳しく、少し前に白くなったのだが一瞬で解けてしまったようである。まあ焦らずとも来週に少し強めの冬型になりそうなのでいくらかは雪雲が来るとは思うが、、、ここ数年は毎年12月はこんな感じで、本当に天気は様変わりしてしまいました。10年前ですら、よくこの時期に「少ない、少ない、昔はもっと。。。」などと言っていたのだが、近年はそれに輪をかけて少なくなっている。怖いものでしばらく慣れてしまうと10年前くらいの状況でも普通だと思ってしまいそうで、体が慣れてしまうというのは全くいけないことである。
 ただ綺麗な写真を撮るだけだとしてもやはり季節感というものが非常に重要で、それがこの天候に年々慣らされて「こんなもんでしょ」と思うようになってしまったら、どういう状態が綺麗なのかがずいぶんと適当になりそうであります。山みたいな特異で広大な環境に行くとそれなりに感動できますから、油断してると簡単に慣れてしまう。ですが、かと言って厳しめで見渡してばかりいるとそれはそれでつまらなくなりそうで、バランスを保つのがなかなか難しいものです。あんまり美食家になりすぎると何も食べるものがなくなってしまうそうで。。。「これじゃあ撮ってもしょうがない。」そんな風に思ってしまうときも結構増えてしまっております。地球の環境が元に戻って欲しいですけど、元って言ってもジュラ紀とかに戻られても困るわけで、結局勝手なことを言っているわけではありますけれど!恐竜からしたら「あの頃は良かったよな、、、」と思ってるんでしょう。
 さて今回の写真ですが、天子山地は毛無山からの富士山です。静岡側の富士山、撮影は12月9日だというのにしっかりと雪が付いております。今年と全然違うね。これでもさらに昔に比べたら雪の少ない年だったので、本当にここ近年は何なのか、、、。こちらの撮影は雑誌の連載をやっていたときに撮ったもので、実は本当は全然違う、北アルプスの場所を紹介するつもりでおりました。しかしながら珍しく!天候に恵まれず撮影に失敗を致しまして、北アはちょっと遠いから再撮も厳しいということで致し方なく近場の毛無山にスポットを当てたのでありました。そんなわけで11月の末には北アルプスに行ってたわけですが、そのときも昔に比べたら雪が少なくて「これ今後大丈夫かなぁ」などと思った記憶がありますから、今回の富士山の写真でも特段多いということはないわけです。結構白いけど。
 毛無山というと標高は2,000mを割っているのでお手軽日帰りハイキングと思いきや思いのほか時間がかかったりするので、万全を期して前日に富士吉田入りを致しました。早朝から動き始めたいし、かといって非常に日が短いこの時期、ゆっくりと夕方遅くまで歩いているとすぐ暗くなってしまうので東京を朝出発などと悠長なことをやっているとすぐアウトになってしまいます。富士山駅に着いたのは夜遅くで、とりあえず仮眠で素泊まり旅館に泊まったのですが、そもそももう真っ暗の時間で宿も一体どこに泊まったのか全く覚えていない。というか、どういうところだったのか暗くてわからなかったというのが正しいのかと。どういうところでも一応は出張して泊まってるんだから、何かこう手がかりというか、スマホでも何でもとりあえず撮っておけば記憶の断片を埋める手助けになるかと思うのですが、仕事でない写真は撮らないというか、撮る習慣がなかった私です。最近はそんなことの反省からなるべく気づいたら撮っておこうと思うのですが、やっぱり忘れちゃうんだな、これが。今どきは何でもかんでもスマホで写真を撮る、スマホを人や物に向ける、なんていうのはもはやそう下品でもない時代だとは思いますが、どうにも乗り切れない自分がいるのも確かです。といいながら、電波まで切ってるときが多かったりするのはやり過ぎだろう!
 そんなわけで翌日9日、富士山駅初便のバスで朝霧高原方面へと向かいます。根原から雨ヶ岳廻りのコースタイムだと登り5時間、下りで3時間くらいかかることになっている。5時間って、そのまま考えると結構なところの山に登れると思うのだが、どうにもそう見えない。一応毛無山山頂での撮り時は午後1時頃を考えているのだが、8時スタートだとぴったりであります。それ以上過ぎるとちょっと夕方の雰囲気が強くなってしまいそうなので、このくらいの時間が希望です。でも午後1時に撮影を終えたとして下り3時間で午後4時、バスが午後5時にあるから帰れるけど、その頃は結構真っ暗っぽいし寒そうなので、できれば1本前の午後2時50分の便で帰りたい。でもそうなると1時間50分でバス停まで下らなくてはならない。果たして間に合うだろうか。どうせ走れば間に合うんだろうけど、同行者がいるのでそうもいかない。
 バスを根原で降りて歩き始めます。そこそこ寒かった記憶がありますが、1週間前に北アルプスで雪道を歩いているのでだいぶ体は慣れていたと思われます。まあ、雪が無くて乾燥しているというのも結構寒々しいものなのですが。
 よくあるコースガイドでは県境でバスを降りて東海自然歩道で端足峠へ行くのでしょうが、ここは根原からの道が近いのでショートカット致しました。峠までは登りで300mくらいだろうか、しっかり登った気もするがまあこの辺りは瞬殺である。と言いたかったのだが時計を確認するとなんと午前9時すぎ。すでに1時間以上かかっているではないか。これだとほぼコースタイムなので結構まずい気がしてまいりました。なので端足峠からはちょっと早回しで歩かないとまずいよということになったのでペースを上げたのですが、峠から雨ヶ岳まで標高差500mもあるのね。案外コースタイムも間違っていないなぁと感心してしまいました。計画段階では本栖湖から登って竜ヶ岳から繋ぐ方がコースとしてはきれいだなと思ったのですが、これ竜ヶ岳寄ってたら危なかったかも。もちろん歩き通すことはたやすく、真っ暗のバス停待機確定という意味で、である。
 雨ヶ岳の登りにかかるとそこからずっと一辺倒に山頂まで登り道なのですが、これが単調で案外苦行だった思い出があります。登るにつれて足元に少しずつ雪を見るようになり、ああこんなところでもそこそこ降ったんだと思いました。それよりも苦行だった記憶があるのは、この辺りで早速富士山のまわりに雲が湧き始め、「えっ、もしかしてまた失敗?」と思い始めたからだった気がします。失敗回の北アルプスも朝イチは晴れていたのに、撮影時間になって雲が湧いてしまい、すっきりとした青空が広がらず、陽もがっちり当たらず、という目にあったのでもう気が気じゃない。さすがに2回連続失敗はきつい。この辺りではかなりイライラしていて、かなり悪態をついていたと思いましたので、同行者はかなり疲れたんじゃないかなぁ。でも、思い出思い出!でもなんで冬なのに、こんな雲湧くんだよ!とまだ悪態をついています。
 雨ヶ岳到着は午前10時すぎ。コースタイム2時間弱のところを一気に巻いてまいりました。確かにペースを結構上げて歩いた記憶がありますが、それよりも案外途中でつかまる景色がなかったのでそれが助かりました。雨ヶ岳は富士山の眺めはいいですが、ちょっと雑多としてる感じ。富士山だけを望遠で撮るならまあなんとかですが、人物を入れて周囲の環境を含めてと考えるともの足りない場所であります。もちろんわかってて毛無山を目指しているわけですが、まだここからコースタイムで2時間半もありやがる。なぜそんなかかるのか、ばかり頭の中を駆け巡っておりました。そんな距離はないと思ったのだが、なぜか不思議と結構歩かされている。富士山の雲はなんとか落ち着いているものの、いつ何時頂を隠してしまうかわからない。何と言ってもあの山は、とにかく頂が隠れてしまっては全くダメな山ナンバーワンなのだが、よく考えると何でそんな山を選んでしまったのだろうか。一番選んではいけない山を選んでしまったような気がしました、今更ですが。
 一度下って登り返してタカデッキと名のついたピークに出ました。こちらは先ほどの雨ヶ岳と違って東西両面の展望が開け、富士山だけじゃなくて反対側に南アルプスの山なみを見渡せます。おお!白い!先日は北アルプスで雪が少ねーなーと愚痴ってたはずなのだが、何だか南アルプスの方が白く輝いておりました。昨年(2024)や今年(2025)とは本当に大違い、すっかり冬山になっております。このくらいかっちりと白いといいよなぁ。久しぶりにこの時の写真を掘り起こして、ちょっとびっくりしてしまいました。こんなに積もってたっけ?と。まあそのくらい、やはり最近の感覚にいつの間にか慣れてしまっていたということなんでしょう。感覚を持ち直さないとね、12月ってこんなもんだったはず。20年以上前は12月でもかなりのラッセルに苦しんだ思い出がありますが、いつしか12月なら楽に登れるな。。。という感覚になってしまっております。ぬるい!

今回は、走らないぜ

 ということで毛無山到着。到着はほぼお昼でしたので、雨ヶ岳から約2時間かかってしまったでござる。40kgの荷物を背負って黒部五郎小舎から双六小屋で2時間切る、というときがありましたから、そのときよりも荷物が軽くていくらかハイペースで歩いているのに同じくらいの時間ってどういうことなんだろう。途中で油を売っていたこともなかったはずだし、、、わからない。ともかく毛無山に到着致しまして、早速撮影を始めます。撮影は1時間後の午後1時くらいを想定していましたが、まあ日差しの角度的にもう十分な感じで、十分撮れそうです。なら下山もあるので早いほうがいい。雲はさすがにそれ以上は湧き上がれないのか中腹でなんとか粘ってくれており、完全にピーカンよりはいいかな、と言ったところ。ですがしかしちょっと湿気があって冬らしくない雲ではありますから嬉しくはない。12月にしてはやや暖かさが感じられてしまう写真ではありました。しかし1度失敗してるから、そんなこと言ってられない。
 ここまで登山者に全く会いませんでしたが、毛無山山頂には他に一人二人くらいかな、ポツポツと登山者がおられました。標柱のある山頂自体は少し樹林に囲まれているのですが、少し先に進んだところに開けているところがあります。ここからは目の前に大きく富士山、そして麓の景色も見渡せます。まあ構図的に、雲がなかった少しらあっけらかんとしてしまうところがあるかと思いますから、これはこれで良いのだ。と言い聞かせてみる。しかしとにかく他の山と比べるとすっきりしすぎてやっぱり異質な山ですよね、この山。だから雲がないとそのすっきり具合が強過ぎるのかもしれません、って結果論だけど。とりあえずは先月の失敗をなんとかフォローできて、よかったよかった。
 そんなわけで撮影を終えたのが12時半すぎ。今から降ればコースタイム3時間、ちょっと急いで2時間ちょいということで午後2時50分のバスには間に合いそうである。でも標高差は1,100mあるから、麓が見えているからと言ってそうすぐに下れるものでもない。やっぱりいくらかは急ぎ目で下っていかないとまずいでしょう。寒くてゆっくりできるところも何もないバス停で2時間はちときつい。とにかく黙々と下っていくのでした。
 尾根筋を少し下ると富士山を真っ正面に見られる樹林ぽっかりポイント。おっと、これは撮っておくかと一応撮りましたが、そんなにゆっくりしている暇はない。山頂で十分堪能したのにまた富士山撮るってどういうことだろうと自問自答、見栄えは山頂のほうが良いので無理に撮ることもないのだが、何かしら惹かれる要素があったのかもしれない。でも周囲の木々は枯れ枯れなので、ここは新緑か紅葉のときがいいだろうな。そうしてまた急いで先に進むが今度は滝の展望台に出た。これもまあ、周囲の木々は枯れ枯れなので無理に撮ることはないのだが、何かしら惹かれる要素があったのかもしれない、ついつい撮ってしまう。滝はただ水が流れているという感じではなく、堅そうな岩場に囲まれた中を落ちていく滝なので結構見栄えはよい。不動の滝というらしい。しかしまあ、ここは新緑がいいだろうな。などと言っている間に時間ばかりが過ぎていった。
 だがしかし!登山口に下りてきたのは午後2時ちょうど。なかなかのペースで下ってきました。ここからは舗装道を国道まで行けばいいだけなので、コースタイムで30分、もうバスに間に合わないということはないでしょう。ふもとっぱらの横を通り過ぎるように歩いていき、振り返るとちょっと前までいた毛無山が真っ正面にまっすぐ見えるほどにまっすぐの道を歩いていきました。
 正直なところ、連載の中でもこの回はあまり気に入っていない。本当に紹介したかったところが失敗したからなのはもちろん、日本に多様な山がある中で誰もがわかりきっている富士山を紹介する必要が、自分の中で消化できなかったところがある。しかしあまり遠くで再チャレンジするというのもリスクがあるし、「仕事」という面が強く出てしまったのはお許しいただきたいところ。ちなみに本来紹介したかったのは新雪の誰もいない涸沢カールで、こういった悶々とした不満もあって、それはそれでいつか解消せねばということで2018年にドローン大縦走という番組で扱うことに致しました。自分はやはり、これは仕事だからこれでいい、しょうがない、という妥協は苦手でありまして、自分のやりたいことを発散させないとつまらなくなってしまうタイプのようであります。こういうところはちと不器用だな、と思います。

 そういうわけで
 このときの撮影自体
 あまり印象に残っていない。

 だいたいだ
 足りなかった大きなものが
 まだあったのだ

 やっぱり

 バス停に向かって走らないと!

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