Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 22
01 Dec 2017更新

雑誌 山と溪谷・2013年11月号掲載写真「剱御前」

 

 前回のレポートで雪が降らないだとか、新雪が何だとか言ってましたが、いきなり降りましたね。こういうの困るんです。毎度クレームを入れているんですが、私の意見などどうも聞いていただけないようで。といいながらもそういうシチュエーションだからこそいい写真が撮れたりもするんですが、まあ何というか、雪山となるといくらか慎重にならなくてはいけないところもありますので、か弱い私の心と体の準備ができていないシーズンインの時期にいきなり雪がドンと積もったりすると、ぶっちゃけ「面倒だな、オイ!」と思ったりして。2月くらいになるとこなれてきて何事もなかったかのようにラッセルしたりしているんですが、、、、いいのでしょうか?「山岳」写真家がこんな体たらくで。ちょっと気合い入れるためにビール瓶で、いやシャンパンの瓶で自分かわいがってきますわ。
 ともあれこれから師走、いくらか暖かい日があったとしても、山の上の雪は減らずにしっかり積もっていそうです。驚異的に少ない年もありましたから、それに比べるとありがたい限り。これからちょこちょこと冬巡業の予定をこなしていこうと思います。
 さて、今回の写真ですが、山岳雑誌山と溪谷2013年11月号の巻頭連載で掲載されたものです。撮影は2011年11月27日、この連載は前年の2012年に撮り下ろしているのですが、この写真だけさらに前年の2011年に撮影しております。というのもこの連載は4年続けたのですが、それのパイロット版として撮影したものです。つまりその、この連載の前半2年分は単行本にもなっておりますが、その企画もここからはじまったということです。わかりやすくバットマンに例えると、ラーズ・アズ・グールのところで訓練しているあたりということです。キン肉マンだと怪獣退治編あたり、と言った方がわかりやすいですね。
 撮影の計画は11月25日に富山から室堂に入山、別山乗越付近の雪上にテントをたてて2泊、別山や立山稜線の撮影を含めて27日まで3日間の予定でした。当時はほとんど山には一人で入っていたのですが、このときあたりからでしょうか、連載として撮っていくこともあって同行者がいる登山が多くなった気がします。山に行くのに誰か同行者がいるっていうのは楽しくていいのですが、あまり慣れると一人で行くのが億劫になったりもしちゃったりして、いろいろと悩みどころです。連載企画はモデル入りの撮影だから当然ですが、一般的に山岳写真を撮りに行くには一人で完結するわけですから、何というか、山登りを楽しんではいけなかったりするんですよね。楽しい山登りばかりをしてしまうとやはり写真の釣果に響いてきますので、でも気持ちをつかいそうな山に行くときは誰かがいるとうれすぃ、、、みたいな、なんでしょう、ダメですね。ダメ。孤高の(友達ゼロの意)山岳写真家としては、もっとしっかりしなくては。
 連載を終わらせたこともあって、最近は一人で山に入ることがまた多くなってきたので、まあしっかりやれていますよ。でも折れそうなときもあるので、どうしましょう。「西田省三の気持ちを支える会」みたいなものでも発足したいところです。山には一緒に入ってもらって横から「頑張れー!いいぞー!」とか「お茶用意しておきましたー!」とか言ってもらうけど、こちらの気持ちが乗っているとき私は参加者に「お前ら邪魔するな!あっち行け!」と叫べるという。でも気持ちが折れかかってると、「へー、これノアールっていうんだ。おいしいね。」と和気あいあい。参加者に多大なる給料が発生しそうです。
 ともあれ同行者を伴っての撮影ですが、この時は新雪期とはいえ一応雪山。同行者はこの時は雪山経験が少なかったので、私がCL(チーフリーダーです。チアリーダーではない)で入山です。東京から夜行バスで24日に出発、翌早朝に富山に着いて電鉄富山駅から早速立山へと向かいます。いろいろと雪山についての心得などをとうとうと語りながら、偉そうに先輩風を吹かして立山駅に到着しました。25日は天候が悪かったので最悪雷鳥沢で幕営と考えていましたが、そんな先輩の目の前に飛び込んできたのは、

「本日大雪のためアルペンルート運休」

「運休、、、、だと?」
「先生、これはどういうことなんでしょうか。」
と、まるでこんなことも予想していないで富山側から入ったのかよコイツ、と言わんばかりの顔をしていやがる雪山初心者。しかしそれを前にしても何も言えないので「何も言えねぇ」しか本当に何も言えねぇ。いや、周りを見渡してみろ、ほらあんなベテランっぽいスキーヤーも、登山者も、いっぱいいるではないか。みんなまさか運休になるとは思ってはなんたらかんたら。
「先生、信濃大町側から入っていたら行けたようですよ。」
と、とどめの一撃。先ほどまで「勝利宣言鬼丸覇」のような守護霊を持っていた私だったが、ふと振り向くと「霞み妖精ジャスミン」になっているではないか。一体何のために夜行バスで富山まで来たというのだ。しかも、である。もちろん狙って入っていたわけではあるが、天気図を見る限り、26日はドスンと高気圧が乗る。間違いなく翌日は剱岳は朝日で染まる。天気図をずっと見ていると、もう剱御前のど真ん中に高気圧が乗りそうな感じにも見えてきて、先生吐き気が。。。ともかくどうしようもないので、その日は富山駅に泊まることに。一日中、あ〜明日が〜、剱が染まる〜、と言っている自称雪山経験者を目の前に、雪山初心者は一体何を思ったことか。
 さて、気を取り直して翌日。朝から快晴です。晴れているというのにくらい気持ちのまま、室堂へと向かいます。室堂に着いたのは10時半頃でしょうか。とりあえずぼちぼち新雪が積もっていましたので、じゃあワカン着けたほうが、と準備を始めると、雪山初心者のはずのリュックから出てきたのは手作りの木のワカン。。。

「木のワカン、、、だと?」
 もはや何が正しいのかわからない。もしかして雪国のお生まれとか?ともあれ見てると折れそうな感じもしますが、機能するなら問題無し、室堂ターミナルから雷鳥沢キャンプ場を通って別山乗越へと登っていきます。
 さすがに登っているうちに気持ちもだんだんと戻ってきます。どう考えても夕方まできっちりと晴れそうですので、ここまできたら夕方をしっかりと撮り収めること、これに集中すべきです!(さっきまでの態度はどこに。)何やかんやで時間がかかり、日も短いことから気がついたら結構な西日に。別山乗越から剱御前へ向かい、赤く染まっていく剱岳を撮ったのでした。でも満足いかない、やっぱり朝も撮りたかったな〜と欲張りな私です。
 夜は結構な風が吹き付けてましたが、富山の夜景がきれいなので頑張って撮っていたら最後に三脚を倒してしまい、パンパンドルがひとつ折れてしまいました。固定の状態で折れたので脚で調節すれば大丈夫でしたが、情けない、先輩本当に情けない。

やっぱつれぇわ

 予想通り、27日翌朝はもう高気圧が徐々に遠ざかっていく予報でしたので、赤くは染まりませんでした。しかしながら幸い剱岳や他の山々はまだくっきりと見渡すことができ、これはこれできれいな感じです。とりあえず三脚の脚を微妙に調節しながら撮影をしましたが、やっぱつれぇわ。特にこの時はまだフィルムも併用しており、フジGX617というバズーカみたいなカメラを持っていっておりましたので、なおさら水平合わせるのつれぇわ。
 とりあえずシュカブラもぼちぼちできていたりしまして、何とか色々と撮っておりました。そこで思いついたのですが、せっかく同行している人がいて、これといってルポっぽくも撮っていない。というか剱御前だと写真目的というだけであまり登山ルートとかの紹介にならないから撮っていないわけですが、なんとなくもったいないなぁ、と。剱御前から見る剱岳は山岳写真ではベストポイントだし、まあ一般的には絶景だと思うんだけど、そういうのをこう、「山岳写真」じゃなくて紹介できたらな、と。でも登山コースのルポでもない、と。これをパッケージ化できないかな、と考えて撮ったのが今回の写真です。これを基に、コンセプトをしっかりと据え、それを変えずにきれいな山岳風景を見せていく、という連載の撮影が始まっていきました。
 いわゆる「山岳写真」だと、「写真作品」になってしまうのでそれを好みも人もいるかと思いますが、写真に興味ない人は退屈に思ったりしてしまう現実があります。逆によく登山雑誌で見る登山ルポは「登山」に重きを置いているので、景色よりも行動がテーマになっていますので、どんな山なのかよくわからない、みたいなところがあったりします。もちろんこちらも行動が好みの人はそれでよいかと思います。ただ私は「山岳写真」がスタンドの人間ですので、万人にうまく山岳風景を見せられたらと思い、このハイブリッドといいますか、人物入れ込んでるけど風景写真、風景メインだけど人間目線、という企画をやってみたいな、と思ったのでした。ことに最近では、山岳雑誌でも山岳写真を扱わなくなってきており、いわゆる「定番」といわれた有名な場所でも雑誌の編集者が全然知らない、みたいな忘れ去られたオーパーツみたいな感じがありましたので、まだ若輩ですが山岳写真家として(ギレン・ザビより年上ですが)、山岳写真の復興、定番写真の復興みたいな気持ちもあってこういうのをやりたいな、という強い使命感が湧いたのです。


でもぶっちゃけ、朝日の剱岳が撮れなかったから、何か撮ってお金にしねぇと!が原動力の可能性98%!!

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