Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 06(改訂加筆)
14 Jan 2020更新

雑誌 アサヒカメラ・2016年2月号掲載写真「石鎚山」


 遅くなりましたが皆様、あけましておめでとうございます。年明けの新作ドローン大縦走、冬の槍ヶ岳はいかがでしたでしょうか。どうもこうもねえよ!というくらいスマートに進んだ45分でしたが、実は本当にこの45分という枠に助けられたと言っても過言ではないほど厳しいロケでございました。いや、厳しいのは何かって、やはり天候なわけですけど。とにかく晴れない。最近の雪不足を見てもわかると思うのですが、冬には冬らしい天候になってくれた方が、晴天が少なくてもきっちり巡ってきてくれたりはするわけです。ですがこうなんとなく締りなくグダグダとしたよくわからない天気が続くと、、、晴れもハッキリしないのですよ。ロケ中はほとんど冬型にならず、低気圧も春らしい南岸ばかりでしたし、黒部源流ロケ同様、忍耐の取材となりました。本当はもうちょっと素材を詰めたかったのですが、最後の槍の染まり具合で何とかお許しくださいませ。
 しかしながら放送を見て私自身思いましたのは、自分のナレーションが早すぎて何を言ってるのかわからなかった、ということです。。。ロケ中も、ナレーション録音のときもよく「すみません、しゃべるの早いです」と注意を受けるのですが、何でかゆっくりしゃべれないのですよ。槍に登頂したシーンでは「えー、3180m、冬の槍ヶ岳に、登頂ですお疲れ様でした!」と言っているのですが早くてよくわからんのでてっきりテロップ入るかと思っていましたが入らず、聞いた感じでは「えー、3180m、冬の槍ヶ岳に、登頂ですくぁwせdrftgyふじこlp」状態。最初の河童橋あたりのスタジオナレーションも私のところだけ倍速の声を聞いている感じです。だがしかし、最近の若者は動画を倍速で見るらしいし、実は時代が私に追いついてきただけなのかもしれない(無反省)。
 今回のレポートですが、すみませんが以前のレポート「06」の改訂加筆バージョンです。とくにすごい忙しくて新作が書けないわけでもないのですが、他の原稿を書いていてちょっと混乱しそうなのでお許しお願いいたします。でも結構前のレポートですので、実は読んでいない人も多いのではと思います(だから許されるのでは、、、という甘い考え)。どちらかと言うと鼻が詰まって頭が機能せず原稿が書けない、というのが本当のところかもしれません。
 ということでレポート06、よろしくお願い致します。

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 さて、今回の写真ですが、雑誌アサヒカメラ2016年2月号で掲載、執筆した特集「霧氷・樹氷を撮る」での1コマです。こちらの記事は昨年ムック化もされておりまして、「美しい四季の風景写真講座(アサヒカメラ特別編集)」という形で再掲載されております。撮影はというと、2014年1月11日。この年は今年と大違いで積雪状況も良く、多からず少なからず、まさに撮影適したバッチリな冬でございました。そういうこともあってかなりタイトに撮影に入ったシーズンでしたが、振り返ってみるとタイトと言うかむしろなかなか殺人的なスケジュールで、、、若かったなぁ。。。このときの冬シーズンは年末から1月4日まで南アルプスは聖岳、下りてきてすぐ1月6〜7日で八ヶ岳。で10日にはこの四国石鎚にいたという。年末も年末で31日から聖岳に入っていますが、12月21〜23日に九州のくじゅうにいて、12月24〜25日は燕岳におりました。ホント振り返るとその働きぶりたるや、まるで暗黒、不死鳥、かませ白銀何人かをたった2日間でこなしたというあの青銅聖闘士なみであります。でもってちゃんと例年並みに雪があって山が晴れているわけですから、ここ最近のぐちゃぐちゃな天気が続く日々から見ると、信じられない状況です。環境もよく、体力もあった、もう帰ってこない若かりし日、、、、美しい。でも実はあの頃より400mは速かったりするという、、、。いや、そんなこと自慢するんじゃなくてお前は写真を撮れ写真を。
 そんなこんなで非常に運が良く環境の整った黄金の冬シーズンでしたが、それでも相手は自然、霧氷がしっかりついた日を狙ってミスなく撮影に入るというのはなかなか勇気のいることでございます。天気図を眺めているとこの日は霧氷が付くだろうなとはだいたい予測はできるのですが、実際自分が住んでいるのは東京、1泊の最短かつ最小の経費でスパッと撮れるかどうかはやはり怖いわけです。どこかの放送協会のようにいつまでも粘れるわけでもないし、かといって安牌を踏んで高気圧ど真ん中で晴れるような確実な日だと霧氷が落ちていることも容易に考えられる。冬型がいい具合で緩んだときが狙い目なのは分かってはいるが、さてしっかり晴れるかどうか。そんな悩みもタイトなスケジュールに追いやられ、気が付いたら往復乗車券を買って新幹線に乗り込んでしまっていた。もはやどうしようもなく、祈るような気持ちで石鎚山へと向かったのでした。
 岡山から四国へと渡った特急車両の車窓からは、いい感じでしっかりと冬雲が山にかかっているのが見えた。標高の高いところには霧氷が付いているが見える。とは言えはたして雲が取れるまで晴れが巡ってくるかは微妙なくらいの曇り空なのがやや不安。を通り越して死にそうなくらい不安。雲がついてないと霧氷もないし、でも雲取れないと撮れないし、という何とも言えない板挟みの状態。撮れなかったらまた来よう、なんていうのは仕事だと許されないわけで。ともかく電車に連れていかれるがまま伊予西条に到着、バスに乗り換えて無心で石鎚山へと向かう。周辺の撮影スケジュールからもわかるように、この頃はもはやあまり意識のない五感が失われた状態でもあり、一個の撮影マシーンと化しておりました(殺人マシーンというとカッコいいけど、撮影マシーンて微妙)。
 石鎚山のロープウェイ山頂駅から出ると辺りの木にはさっそく霧氷が付いており、なかり期待できる状態。霧氷を狙って撮る、というのは難しくもあり、易しくもある。スノーモンスターという別名の「樹氷」は見られる場所が決まっている。樹氷も霧氷も原理は同じで、いわば見てくれだけの違いでどちらも学術的には「樹氷」である。ただ一般的にはモンスターレベルに発達した樹氷を「樹氷」と呼び、樹々の枝の姿を残した状態の樹氷は「霧氷」と呼ばれている(苗場山とか武尊山とか北八ヶ岳で見られるのはモンスターと言える完全体まで発達していないので霧氷といいたいところだが、なかなか頑張ってもいたりするので個人的には「樹ひ、、、、、霧氷。」みたいな判定)。モンスタークラスは完全に見られる場所が決まっているわけだが、言ってみればそれの弱小版が霧氷なわけで、同じく見られる場所が決まっているとも言える。ただ、霧氷はちょっとしたことでも生成されるので、「決まった場所」という場所でなくとも見られることも多々ある。よくわからんので簡単に言うと、霧氷はぶっちゃけ条件次第でどこでも見ることができるけど、ここは雪雲が通れば絶対見ることができるという場所もあるよ、ということだ。ということでこの石鎚山ではモンスタークラスに育つことはないが、気候条件がそろえば霧氷が絶対に見られる場所なのだ。水が摂氏0度で凍るように、アルコールが零下114.5度で凍結するように、聖衣にも凍結する温度があるように、石鎚山では霧氷が見られると決まっているのである。霧氷を追って見られるかどうかをいろいろな場所で探すのは難しいが、霧氷の石鎚山を撮るのはさほど困難なことではない。それはスノーモンスターが見られる場所に行くのとあまり変わらない。問題はタイミングと天気だけなのである。
 小雪が降りしきる中とぼとぼと歩き、今宵の宿である常住屋白石旅館に到着致しました。石鎚神社境内にある宿で、通年営業なのがありがたい。これがあるおかげで、この時期に遠方まで来ても楽に撮影ができる。とりあえず初日は移動日、あとは部屋のこたつに入って、お風呂に入って、明日に備えて休むだけである。やはり気になるのが外の状況で、部屋から外を見えてみるが窓が凍っていて何も見えないので焦りまくり。おまけに二重窓で、凍っているのか鍵も開かず、、、、焦りまくり。もう薄暗くなってきているので気にしても仕方ないのだが、何というか、こう「ドン!」と覚悟を決めて構えていられないのは情けない、が私の性分であります。
 さて、晩ご飯のお時間です。呼ばれて食堂に行ってみると肉やら野菜やらが豪勢に皿に盛られており、なんと「すき焼き」でございました。ですが、すき焼きなんて普段食べないので正直どう食べるものかよく覚えていない。なんで食べないかと言うと実は私、子供の頃から「長ねぎ」が苦手でして、未だに克服できていない。いや、食べられないわけではなく、みじん切りならまったく問題ないのです。ラーメンとか、納豆とかにじゃんじゃん入れたいほど、むしろないと物足りないほどです。だが、あの長く切った太い状態が食べられない。焼き鳥のねぎまとか拷問に近い。鶏肉だけでいーじゃん、と思うほど無理。なんというか微妙に中がヌルッとしてたり、噛んだら中から筒が出てきたり、とにかくダメなんです。ついには大人になって「ネギはみじん切りにする食べ物であってそのまま食べるものではない」という分析結果を出すに至ってしまった程であります。
 脱線したので話は晩ご飯のすき焼きに戻ります(晩ご飯の話自体がすでに脱線という話もある)。すき焼きには関東風と関西風があるというのは美味しんぼで学習済みだが、実際はシャブスキーってお前何だよそれ、くらいの記憶しか残っていない。ま、まあ割り下を引いて適当に煮ればいいんだろう。「で、出来らぁ!」とばかりに勢いでやってみたが、結果鍋が結構焦げてしまった。そんでもって割り下を入れすぎたのかかなりしょっぱくなってしまった。。。ただでさえ長ねぎが苦手だというのに。。。すき焼き、正直苦手ですが私ももういい大人、次回までに勉強しておきます。

反省を活かし、翌年へ

 すみません、どうでもいい話でした。さて、気を取り直して翌日。天気予報では晴れとなっているが、思った通り寒気の影響で雲が残る。しかも結構。しかしここで気をもんでも仕方がないので、とりあえず進むのみである。もう来ちゃってるんですから。ということであーもうダメだとか、何とかなるんじゃないかとがグチグチ言いながら、頭の中はモヤモヤしながら日の出前に宿を出て霧氷だらけの森を歩いていると、、、、次第に雲がとれてきて日が昇ってきたのです。。。よし、これは晴れる!いつも通り、微塵の焦りも見せなかった私(キリッ。夜明峠に到着して撮影を開始、晴れてきているとは言え、時折流れてくる雲はまだ濃くて油断ならない状況ではありました。絵に動きがつくのでこれはこれで悪くないのですが、何カットか撮っているうちにすぐに雲が山を覆ったりして、なかなかストレスが溜まります。おい!晴れるって言っただろ!と石鎚山に文句を言ってみるものの、よく考えると石鎚山も天気の被害者である。合間合間でタイミングを見計らいならがシャッターを切っていきました。もっとゆっくり撮りたいものだがなかなかそうもさせてくれない、結局あっと言う間に雲が濃くなって稜線を埋めてしまった。その間は到着してから20分もなかったと思う。
 この日は山頂往復もしなくてはならないため、夜明峠はこれで切り上げて山頂へ。午後にかけて稜線の雲がとれるのだろうか。まだ誰も登っていない&下っても来ない日だったのでトレースがなく、歩くのにやや時間はかかるものの写真的には足跡がないのはありがたい。時折北壁の霧氷を撮りながら稜線へと向かって行きました。やはり何だかんだ言っても大きくはない山なので、望遠レンズでの切り取り写真もうまく撮らないとスケール感が出にくいところがあります。迫力は出るのですが、じっくり見てると木の大きさなどから全体の大きさが分かってしまうので、あまり迫りすぎないよう広がりも意識しながら撮る方がよさそうです。
 さて、稜線に上がって山頂に立つ。頭上は青空が出ていましたが、肝心の定番風景である天狗岩が見えなかった。が、次第に雲が流れ、先鋒の天狗岩が!と、気分が高揚しつつもいつもここで思うのは「思ったより小さいな、天狗岩。」である。写真で見ると迫力があってすごいんだが、山頂に立って本物を見ると思いのほか小さいのがいつも思う難点。とは言え稜線を雪雲が流れている景色はなかなかのもので、ファインダー越しに眺めるとやはり迫力があります。つまり絵になる。まあでもしかし、個人的には夜明峠からの石鎚山では一番好きかな。天狗岩涙目。残念ながら完全に雲が取りきれることはなかったが、頃合いで撮影を終えて天狗岩を往復、下山へと向かいました。
 これだけ雲が残った日にも関わらず、夜明峠まで下ってきたときには霧氷は結構落ちておりました。これでもっと高気圧が寄ってくるだろう翌日は、青空に恵まれても霧氷は完全になくなっているだろう。ともかくなんとかギリギリのラインで任務を果たし、胸を撫で下ろして帰ることができる。ただもっとゆっくり夜明峠で撮影がしたい、という気持ちは強く残り、翌年もこの冬の石鎚山に足を運んじゃいました。ですが、翌年は朝からきれいに晴れてしまって今度は霧氷の出来が弱かった。このときのようにガッツリ霧氷がつくには、いくらか雲が残るのも仕方がないのかもしれない。しかしそれだとまたゆっくりは撮っていられないかもしれない。なんとか理想の、満足できるタイミングに出会いたいものである。満足できるタイミングに出会うのが先か、そもそも時間を止める特殊能力を身につけるのが先か。とりあえず両者とも頑張る形で、今後も美しい山岳風景を捉えていきたいところであります。日々是修行でございます。

 ということで翌年はこのときの反省を活かし、
 事前にすき焼きの食べ方を頭に叩き込んできました。

 しかし翌年は

 なぜかしゃぶしゃぶだった。

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