Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 57
14 Nov 2019更新

雑誌 岳人・2013年11月号掲載写真「雲ノ平」


 11月に入っていくらか涼しくなりましたが、さほど気温が下がってないですね。まだきつい冷え込みがないというか、毎日ハーフパンツで過ごしております。そろそろ脛毛をのばしてもいい季節かと思いますが、まだ快適なので剃っています。いくらかは山にも雪が降ってきましたが、、、、順調にまた雪の少ない11月の日本アルプスとなってますね。以前は11月頭にはぼちぼち雪が降って楽に「とりあえず雪山」が撮れたものですが、最近は全くないことが多くて新雪期はどこへやら、です。昔は結構真っ白な涸沢カールから奥穂高に登って、下ってきても、まだ上高地のバスが余裕で運行中だったものですが、今は新雪の山を撮るのに釜トンネルから歩かなきゃいけないって、なかなか面倒でございます。
 話変わって久しぶりにちょっとロング走をしてみたところ、きついのなんの。今シーズンは結構スピード強化に力を入れていて長い距離を全く走っていなかったので肺が非常に疲れます。というか400m60秒は楽に気持ち良く走れるのに、68秒くらいの方がしんどいって、、、、使っているところが全然違うんでしょうね。今年も冬場はいくらか長距離を取り入れますが、正直つまらないんだよなぁ。。。燃えないというか、なぜ力をセーブしてじわじわ頑張らなければならないのか?よく人に一番きつい800mなんてよくやるね、と言われるんですが、400m800mに体を対応させてるのでそんなにきつくないんですよね。5000mとかの方がよっぽどつらい。こればかりは性に合わないんでしょう。ということでちょっとは長い距離を入れましたが、まだ昼間は暖かいのでシーズンオフですがスパイク履いて練習してます。先日は300mをスムーズに流して36秒6でしたのでぼちぼち、というかシーズンオフにシーズンベストというそれどんな無意味。来シーズンこそは200m22秒台、400m50秒台、800m1分57秒くらいを出したいところです。あれ?前回のレポートでテンション上がらないだのなんだの言ってゆっくり体を休ませるとか言ってなかったっけ?すみません、相変わらずテキトーなんです。
 さて、今回の写真ですが、山岳雑誌「岳人」2013年11月号に掲載致しました雲ノ平から見た水晶岳の写真でございます。作品と呼べる代物ではないのですが、、、掲載した雑誌にはこの時期に何度もチャレンジした雲ノ平の苦労を原稿で書いております。ガツーンと晴れた、真っ赤に染まる水晶岳を載せたいところですが、残念ながら未だ撮れておりません。そろそろまたこの時期に雲ノ平にチャレンジ、という思いを込めて、今回は選ばせていただきました。
 撮影は2008年11月9日。昨年や今年、というかここ最近に比べるとだいぶ雪のあった年ですね。まあこれくらいでも当時は例年並みかちょっと少ないくらいなわけで、年々雪の降り始めが遅くなっております。雲ノ平ともなるとあまり元気よく雪に降られても、入れない・出られない、と大変な場所ですので、例年並みの「新雪」というやつがありがたいのですが、15年前くらい前でも雪が少ない年は結構ありまして、意気揚々と冬山フル装備で現場に向かうも全く雪がなくて困ったときも結構あります。プラブーツで無雪の夏道を歩いて、、、って何やってんだろう、何撮ったらいいんだろう、と悩んだものです。逆にしっかり降られて双六小屋でギプアップしたりと実は雲ノ平までナイスな状況で辿り着けたことがないという。2008年のこのときも、今度こそはと絶対に撮るぞ、いう気持ちで入山したのをよく覚えております。
 入山は11月7日。前日に松本に泊まって、新穂高へと向かいました。天気は曇りスタート、今思うと何を持ってこの天気予想で突っ込んだのかわかりません。上で作らなくていいようにと秩父沢で水を汲み、担いで参ります。イタドリヶ原あたりから雪道になり、鏡平で薄っすらですが真っ白といった積雪具合でした。午後からさらに天候が悪くなり、雪ではなく小雨という感じ。暗い空を見上げていると先が思いやられますが雲ノ平は2日後の予定。焦らず登っていきます。鏡平の少し上で雪がぼちぼち積もっていましたので、適当にその辺でテントを立てて初日は終わりました。これと言って何も撮ることもなく、カメラを出すこともなく初日を終えました。とにかく今回のメインは雲ノ平、焦らず、焦らずです。
 2日目、11月8日。冬の朝は遅い。天気が悪いとなおさらである。雨や雪が降っているわけではないが、どん曇りだった。この日は三俣山荘までの予定、撮りつつ進みたいところですが何だかなぁ〜。しかし今までの経験からはちょうどよく雪があるだけでもまし、天気さえ巡ってくればいいんです。そんな気持ちで出発しました。進むにつれ少しづつ雪は増し、そろそろ膝下を超えてきたのでワカンを着けました。弓折岳分岐あたりからだったかと思います。
 嫌な記憶が蘇る。このときの5年前、2003年は11月末に同じように雲ノ平を目指したのですが、ここからの積雪が非常にありまして、弓折分岐から双六小屋までラッセルで半日を要しました。双六小屋が見えているのに進まないのなんの。しかし今回はそんな経験もあってバカでかいカメラのGX617をキャストオフしてきている。2003年よりは体力もつけてきている。ここからが勝負、と気合を入れていましたが、2003年11月下旬ほどの積雪はなく、出発から3時間ほどで双六小屋に着きました。だいたい午前10時半頃の到着、これなら三俣まで行けそうである。しかしこの誰もいない感、楽しいです。
 双六小屋からは天候も微妙なので巻道で向かうことに。巻道っていってもぼちぼちアップダウンあるし、距離もあるから実際は中道から三俣蓮華岳に上がっちゃって下った方が楽なんですが、冬場となれば歩けそうなら稜線より風が避けられる方がいいだろう、と思ってチョイスしました。でもこれが結構疲れました。今だったらスノーシューでリフター立てていくのでもっと楽に行かれると思いますが、ワカン、、、疲れたなぁ。。。最後の三俣峠にだらだら上がっていくところなんて、なかなか進まなくてじれったかったです。それでも午後2時には三俣山荘に着きましたので、まあ思ったよりは時間がかからなかったです。
 テントを張って、まずは水を作る準備です。雪をかき集めて、って、、、ハイマツもぼちぼち出てるし、もしかしてまだ水取れるんじゃないか?と水場に行ってみると当然の如くガチガチの氷の柱と化していた。でもこの氷を取ったら水が出てくるということはないかな、、、とストックで叩き割ったら、水が出た。ヒャッハー!!水だーっ!!これで生活が一変するのである。あとはジャッカル一味に狙われないよう気をつければいい。コーヒー飲みまくり、スープ飲みまくりである。極楽浄土というのはおそらくこういうところなんだろう、としみじみと思うまる子であった。いいことがあったけど、天気が変わる様子もない。とりあえずは寝て、明日起きてから考えるしかないんだろう。っておい!今日も写真撮ってないぞ。
 3日目、11月9日。いよいよ雲ノ平を目指します。ですが天気は相変わらず。視界はまあまあ、鷲羽岳経由でも問題なさそうな感じですが、いつ雪が降ってもおかしくないという感じで曇っています。まだそこまでの積雪ではないので、黒部源流に下って、登り返す夏道ルートです。源流を渡るところはさほど水量はないので飛び石で行けました。ここでまた水を確保して、登っていきます。このあたりはぼちぼち雪が多かったので登りに少し時間がかかってしまいました。しかしながらこの日は時間に余裕があるのでさほど焦らず、ちょっと登っては休んでを繰り返し、自分に甘く、他人に厳しくというスタンスで登って行きました。登りきってしまえば、あとはだらだらと歩くだけで雲ノ平に到着します。日本庭園を過ぎ、眼下に真っ白な雲ノ平が見えてきました。まあ真っ白というのは言い過ぎで、結構ハイマツやゴロ岩もぼちぼち見えているので、やはり新雪期ですね。これ真冬で本当に真っ白な時に来たら綺麗なんだろうなぁ〜と思いますが、生きた心地もしなそうです。祖父岳中腹からは雪の斜面を好きなルートで適当に下って進み、テント場に到着。テント場のトイレが目立つので、若干視界が悪くても方向がわかりやすくてありがたいです。到着は午前11時でした。
 テントを張り、ぶらぶらと散歩に出かけました。本命は夕方のスイス庭園での水晶岳ですが、この天候だとどうみても厳しそうです。しかしながら誰もいない雪の雲ノ平、なかなか気持ちがいいものです。とりあえずは祖母岳まで行き、雪の状況を見てロケハン。おそらく撮れないであろう天候ですが、万が一晴れたら、という気持ちで絵を探します。でも、晴れないだろ。所々雪が濃いところがあって、しかし空荷でテントから出かけてきているので歩いていて楽しいです。背中に羽が生えたよう。テントへと戻り、夕方は一応スイス庭園へと向かいました。
 ということで今回の写真です。ガッツリと西日が当たって輝いたり、真っ赤に染まったら、本当に綺麗だったんですけどね。気持ち、奥の方がちょっとだけ赤くなってましたが、本当に気持ちだけ。見方によっては雰囲気がある、と言えないこともないですが、撮りたいのはこういうのじゃない。もっとダイナミックなやつなんです。アルティメット・セーフティ・プラグぐらいダイナミックなやつ。シャッターを切ったとき、ガツーンと頭が突き抜ける感じのするやつ。でもとりあえず撮っとこう。。ペンタ67のミラーアップの大きな音が寒々しい雲ノ平に響き渡る。仕方ないのか。。。と思うしかないのが哀しい。予備日もあるので希望は捨てたくないですけど、明日の天気はよくなるんだろうか。テントに戻り、とりあえず晩御飯を済ませました。暗くなってから外の様子を見ると、サーっと音を立てるように細かい雪が降り出していた。「撮れたらいいな」なんて思っていたのは実は贅沢なことだったんですね、気持ちはどちらかというと「無事脱出できるかな」に変わっておりました。

ここにいてはダメです!

 ここにいてはダメなのは何も大雨時の荒川付近だけではない。雪に閉ざされそうなこの雲ノ平も同じなのである。とはいえ実のところまだそこまで積雪があるわけでもないから焦ることもないのだが、場所が場所だけにやはり心細くなる。もしドカ雪が来てしまったら、、、何日も悪天が続いたら、、、そう思わせる場所なわけだ。晴れてくれたらホント気持ちよかったのですが、まあそれでもどうにもならない天候というわけではないのだから良い方なんだろう。
 寒々しい鉛色の空はチラチラと細かい雪を降らせていた。とりあえずいそいそとテントを畳み、パッキングを済ませて雲ノ平から脱出する支度を整える。これが悪い方向に転べば困るのだから、撤退するなら早い方がいい。停滞するにしても双六小屋まで戻ることができたら、だいぶ安心できる。ワカンを着け、重い荷物を背負ってとりあえず何も考えずに祖父岳の中腹へと登っていった。さらば雲ノ平。情けなくも「今回も」敗北である。
 雲ノ平を発ったのは朝7時ごろ。日本庭園あたりで一度荷物を下ろし、三脚を立てて写真を撮った。新雪の黒部五郎岳が見えているわけだが、曇ってはいるがなんとな〜く雰囲気がよかったのである。でも心の中では「晴れてればなぁ〜」なんですが。撮らないで帰るよりはいいのかな、というところだったかと思います。せめて何か撮って帰らないと勿体無い、という感じですが、当時はその後のフィルム現像代というのもかかりましたので、撮るか撮らないかを現場で悩むというのはよくあったことです。今だったらとりあえず撮っとけ、とできますけどね。
 さて黒部源流への下り、登っているときはガーッと上がってしまいましたが、いざ下ると上部は結構斜度があるのね。。。とりあえず斜面は雪で埋まっているので、まあそこそこの迫力がある。とは言ってもアイゼン着けてしまえば何てことはないのだが、面倒臭がって無理してワカンで下ろうとするから恐怖感があるんだろうけど。あーでも時間かかりそうだから、と結局はアイゼンに着け替えて勢いよく下りました。
 下りきった源流碑のところでひと休み。ここの積雪はそんなでもなく、結構草付が露出していて気分は雪山から帰ってきたよう、、、で気候的な意味での安心は出来るのですが、逆に熊でも出そうでなんとな〜く嫌な気持ち。草むらからガサッと出てきそうで、、、こうなるとガッツリ雪山ってなんだか安心できるかも。結局さほど休憩できず、そそくさと三俣に向けて登って行きました。いや別に休憩しているから熊と会うわけでもない。そそくさと急いだ方が会うのかもしれんのに。
 三俣テント場で水を2L確保してから双六小屋へと参ります。これで水を作ることもないから今日はもう楽々、のんびりと過ごせそうです。というか今回は結局一度も雪から水を作っていない。空には雲が多いですが槍ヶ岳もしっかり見えていましたので、三俣の登り途中で撮影。ぼちぼち雪があるのでそれなりに絵になります。そこから少し登っていくと、、、雪面に動物の足跡が。うん。この大きさ。うんうん。ってこれ熊だろww。おい!こんなところで勘弁してください。これすぐ近くにいるんじゃないか?足跡新しいっぽいし。。。とりあえずは私が向かう方向とは違う方に足跡はのびていましたので、まあ大丈夫、と思い込むしかないのですが、さすがにこのくらいだとまだ冬眠してないのね。こんな雪山で、こんな荷物背負っていたら、とてもじゃないが熊から逃げきれん。いや、いつでも逃げきれんわけだが。
 双六小屋に到着したのは午後2時半。冬季小屋に潜り込んで、ゆっくりと過ごしました。冬山において、運んできた水がある、というのは実に気分がいいものです。一日を通して天気はよくなかったですが、日没くらいにパーっと雲が取れてちょっとだけ綺麗な空が広がりました。この天気が昨日の雲ノ平で来てくれればもう少しは、とも思いましたが、そこまでいいわけでもなく、もっとちゃんと晴れないとダメですね。奥地の撮影をするというのは本当に難しいものです。空を覆っていた雲は取れたものの、とても樅沢岳まで向かう時間はなかったので小屋の周辺でとりあえず撮影していました。
 翌日も曇り空スタート。下山を決め、鏡平付近で少し雲間から陽射しはあったものの、ほぼ曇りという感じの天気でした。雪降られて道が閉ざされるよりはましですが、結局全体を通して天気がよくなかったです。出発前に4日後のことはわからない、とりあえず入らないと、と思って入山しましたが、やはりこんなもんですかね。最近はもっと天気を読むようになったので慎重に、確実に、となったわけですが、それが完全に正しいというわけでもなく、見方によっては「臆病」になったのかもしれません。でも勝算を考えると、ただ突っ込むというのは今更やることじゃあないのかとも思います。「撮れたか・撮れなかったか」という結果がすべてで、そこに対するアプローチはいくつかあるわけですが、天気の結果がすべて、いつもここで「どうするべきか」と気持ちが揺れ動いております。物事が起こる前に綿密に考えるか、考えたってしょうがないと捉えるか、どちらもうまく使えたらいいのですが。

 さて、次のレポートですが、長期出張のためしばらくお休み致します。
 こちらの出張は撮れるまで粘りますので、事前に悩むこともありません。
 撮れるまで帰りません!

 と言いながら、また雪が少ないと困るんですが。。。
 年明けの放送、お楽しみにお待ちくださいませ。
 場所はさすがに雲ノ平じゃないですよ。

 今しばらくは、7ヶ月の時を経てようやく仕上げたHGUC・F91を見ながらお待ちください。
 ってか、画像がデカイ!

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