Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 32
18 May 2018更新

雑誌 山と溪谷・2015年5月号掲載写真「鹿島槍ヶ岳」

 

 いやあ、どんどんと季節が変わっていくからなのか2週間経つのが早い、早いよ!スレッガーさんかよ!ということでレポートが早速山の話でも写真の話でもないのですが、先日初めて中高年の陸上大会、マスターズ陸上に出てきました。
 私は東京マスターズの所属なのですが、この時期に行われる東京の記録会が昨年のを見る限りあまり人出がよろしくないようですので、お隣は埼玉県の記録会に参加してきました。私の専門は800mなのですが、GWの前半に800mと400mを1本ずつ、また違う一般の陸上大会で走ってきましたので、初マスターズでは200mでの参加でございます。本来なら800mに出るべきなのですが、きつい競技からなのか40歳代の参加がふるわなそうなので200mにエントリーしたのと、昨年試合で200mフライング一発退場を食らって悔いが残りまくりだったもので、ちょっと一発記録を出しておきたいな、と。
 ちなみに今シーズン初戦の800mと400mは高校生に混じって走りまして、情けなくもレース運びがうまく行かずダメダメでした。やはりまずはちゃんと試合慣れしないとダメですね。普段完全に一人で練習しているだけあって、誰かと走る、競うというだけで正直緊張してしまい、あれれ?冬場の練習よりも遅いじゃねーか、という有様。練習番長の名を欲しいままにしておりますよ。まあここから徐々に調整していきたいと思います。何だかんだ言っても私、一応まだ変身をあと2回も残している、、、、はず。
 マスターズ200mですが、800mの人間からすると体力的に余裕なので心の底から、余裕だろ〜、飛ばすだけだろ〜、なんて思っていたら私一番外側の8レーンでして、生まれて初めて後ろから迫ってくる見えない恐怖みたいなものを味わいました。ラスト60mくらいはその恐怖からガチガチになってしまい、自分も40歳ながら、なんでこの人たち40代なのにこんなに速いのォ〜!と聞こえてくる足音にビビりまくり。なんとか逃げ切りましたが。。。200mでこんなに疲れたのは初めてですよ。タイムは23秒49。大会タイ記録だそうですが、大会記録ではなく「タイ」というところに自分の不甲斐なさというか、ダメさっぷりが出ている気がします。あと100分の1秒くらいなんとかして大会記録出せよ、と。あわよくば22秒台を狙っておりましたので、やや不満足。後半のガチガチが結構響いているかと思いますので、この種目も徐々に調整していきたいと思います。ともあれ200mですら試合勘がなさ過ぎのようです。。。まあ、これからこれから。しっかりといい成績を残して、「お前、ケイスケホンダやな」って言われるように頑張ります!
 さて!今回のレポートですが、山岳雑誌の連載で使用しました「五竜岳から望む鹿島槍ヶ岳」の写真になります。ということで写しているお山は鹿島槍ヶ岳でございますが、レポートとしては五竜岳になるのかな。5月の時期に前々から載せたいと思っていた風景ですが、連載ともなると年間12回のを各地方でバランスをとらないとつまらないので、載せたいとは思いつつも連載3年目でようやく使える運びとなりました。
 何でだか明確にはわかりませんがこの残雪期の鹿島槍の姿が好きで、今までに何度も足を運んでおります。山というのは形を変えませんので、季節の変化で表情をつけていくのが写真で表現するときの大事なことのひとつになるかと思います。でもって中途半端な残雪期ではこざいますが、稜線が素肌を現して沢筋だけに雪を残す虎模様というのが高山のこの時期らしい風景なんですね。その中でもいかにも虎刈!という感じになるのが北アルプスのような険しく切り立った山なのですが、どうでしょう、もちろん穂高、槍、剱でもそれぞれこの5月の季節感というのが出ることは出るんですが、キャラが立ちすぎて季節感が全面には出にくい感じがするんですよね。それだからなのか主張しすぎずにうま〜く季節感と混ざり合わさってくれる鹿島槍ヶ岳が好きで、この時期によく訪れているのかと思います。ですからここの場合は、山よりも季節感を求めているんでしょうか。でもしっかりと山も撮れると。大きく険しく美しい山容でありながらもやや地味っぽい独特の魅力がある鹿島槍ヶ岳、北アルプスメインのあいつらが凄腕ピッチャーや4番バッターだとすると、長打力のあるキャッチャー、みたいな感じでしょうか。いや、キャッチャーに失礼か。
 撮影ですが、掲載の前年2014年の5月11日になります。実を言うともうちょっと時期が遅い方、5月下旬くらいがもっともっと虎模様になるので好きなのですが、ゴンドラの営業期間の関係で誠に申し訳ありませんがこの日の撮影となりました。とはいえ順当に雪が降って残った年でしたのでスキー場の営業も普通でゴンドラが動いてよかったですが、今年だったら6日に終了しています。。。まあでも雪が少ないから見映えは同じか。ずっと昔、それはそれは私の見映えもまだワム!みたいだった頃、5月いっぱいはゴンドラ動いておりまして小屋も営業しておりました。なかなか厳しい時代になったものです。。。って八方から歩いていけばいいじゃんというツッコミはご遠慮ください。
 前々日には現地入りし、10日いちばんのゴンドラに乗っていざアルプス平へ。遠見尾根は案外長い道のりですが、展望はいいですので天気さえよければ気持ちのいい尾根歩きです。と言いたいが案外アップダウンが面倒くさい。登山者はほとんどおらず(GW後の平日だから当たり前か)、単独の人が大遠見山でテントを張っておりました。ここから往復するというのもなかなか大変な気がしないでもない。
 雪の尾根を汗だくになりながらという、実に春山らしい登山で稜線を目指し、午後1時30分ごろに西遠見山あたりまで駒を進めました。ここから稜線へは雪がたっぷりとついた大斜面を登っていきます。5月も下旬頃になると自信をもって斜面をトラバースして直接山小屋に出るのですが、人も連れていることもあって怖じけついたのか白岳へと直登します。白岳はややですが山小屋より標高が高いので登り損ということにはなるのですが、スピードがあまり上げられない登りでは直登したほうが精神的には楽です。そういう訳で結局帰りはガーッとトラバースしちゃってますけど。
 稜線の小屋についたのが午後2時40分、小屋は営業しておりませんのでテントを建てて翌日に備えます。と、ここまで長かったので本当のところは翌日に備えたいですが、小屋から山頂への道を見る限りトレースがまったくないので、翌早朝に登ることもあって一応下見をしておこうということになりました。
 いろいろ雑多な用事を済ませたあと、山頂を往復します。実は積雪期の五竜岳というのはここからが肝でして、ここから急な斜面のトラバースや、短いですが山頂直下にかなり急な雪壁が出てきますので、そこをしっかりと早朝にクリアできるか、同行者も含めて一度見ておく必要があります。さすがに5月ともなると雪もだいぶ緩んではいますが、朝の冷え込みによってはどうなるか不安になるところもあるわけです。
 ということで山頂へと向かいましたが案の定同行者の方、「このヤロー、こんなところに連れてきやがって〜」と文句を垂れております。そうだよね、一歩間違えたら危ないもんね。無責任にもガンバレ〜しか言えません。なのでガンバレ〜。こういう緊張する場面では脳内にアドレナリンとか出まくるようで、緊張しながらもハイな気分になってきたりします。実のところ登山家っていうのもただのアドレナリンジャンキーのような気がします。あの興奮をもう一度味わわないと、脳の刺激が足らん!みたいな結構重篤な依存症だと思うのですが、これってランナーも同じですよね。。。トラックでの練習が3日空くと不安になり、10km以上のロング走の間が空いても不安になり、耐スピードの練習の間が空くと不安になり、、、、って実際この年齢ではそんなに体力が上り下がりするわけでもないのですが、やらないとやらないと、と。コレって実はただ単にハイになったときに出る脳内麻薬が切れているだけの気が致します。。スポーツってある一定からは不健康ですよ。
 夕方5時すぎに山頂に到着。ひとまずは明日天気さえよければ撮れることが決まりましたので、ひと安心です。鹿島槍や白馬方面には雲がかかってしまいバッチリガッチリの山岳写真は撮れませんでしたが、これはこれでそれなりに雰囲気のある夕方の景色が広がっておりました。だんだんと日が沈んでいく中、またえっちらおっちらと雪壁を下ってテント場へと帰っていきます。ということで一度下見を済ませましたが、やはり朝は冷え込んで雪が硬くなるだろうと予測、無理をせずに日が昇ってから山頂へ向かうことにしました。本当は朝日に染まる鹿島槍を撮りたかったのですが、同行者もいることですし安全を期するにこしたことはありません。そりゃあ滑落しなければどうということはない、私は出撃しても必ず帰ってくる主義でねと強気の発言をしたいところですが、現実ではノーマルスーツを着ることも大事です。戻るともうひと張り、テントが隣に立ってました。いずれにせよ人が多いと山頂での撮影もタイミングを見計らうのが大変になりますので、登山者が少ないのは助かります。
 翌11日。晴れないわけがない、というほどの天気図です。高気圧乗りまくってます。とりあえず白岳に行き、赤く染まる五竜岳を撮影して気持ちを落ち着かせます。ここから仰ぐ五竜岳って現場で見ると迫力あるんですが、ちょっと近すぎてぬぼ〜っとした感じになるんですよね。完璧に格好よく撮るにはなかなか難しい。手前にハイマツとか雪面を入れても、いかり肩の感じが取れずにどうしてもキング・ザ・100トンみたくなってしまいます。北側から五竜岳を撮るなら、やはり唐松の牛首のところまで下がるのがいいですね。
 ということでひと通り朝の撮影を済ませ、山頂へと参ります。ちょうど1時間くらい、雪の感触も問題なく山頂へとたどり着きました。しかしながら朝方ともあってなかなか寒く、風もそこそこあったので楽ちん撮影とはいきません。所定の位置に立ってもらい、鹿島槍ヶ岳からかかる力を受け止めるようなポーズをとらせます。ここ細かいですが、胸を鹿島槍に向けてしまうと鹿島槍が主役になりすぎてしまい、ちょっと単純な構成になってしまいます。ここでは足元も風景の一部として大事にしたいので、鹿島槍(左上)からモデル(右下)にかかる力を完全に受け止めずにやや外側に流しています。さらに細かいことを言うとピッケルの角度も指定しており、鹿島槍からかかる力を中途半端に流さないような角度にしております。これが普通にただまっすぐ下がるように持っていると、左上からナナメ対角線で入ってきた力を無秩序に変な方向に変えてしまうようになり、しっくりこない構図になります。人間は物を見るときに弱点というか、習性があって、これは写真が上手いとか下手とか関係なく、秩序的に集約していきます。「直線」なんていうものはまさに人工的で、そもそも写真は秩序ある枠の中に入っているもの。その中でまたさらに点と線を秩序だって構成していくのが、美しい絵、ひいては美しいと感じる基本でございます。あとは面倒なのでフェルメールに聞いてください。キッチリした構図なんかただのデザインで、それが芸術なんじゃない!そんなの誰でも出来る!わざと構図を外すのが乙!とかいう意見は他でやってください。これはこれ、それはそれ、コンセプト次第です。
 コンセプト、というと何か毎度言っているような気も致しますが、、、この連載の撮影ではどの場所でもだいたい焦点距離を同じにしており、現場にちゃんと立って見ている感を出すようにしています。もっとインパクトを出すように撮影することもできるのですが、現実感、現場感がこの連載のコンセプトであり、「あ〜、ここだけ切り取って絶景って言ってやがるのか!」とちゃんと訪れた人がガッカリしないように作っています。インパクト出すなら写真中央の岩峰の頂に立ってもらい、望遠側で鹿島槍と人物だけを対峙するような感じでドスーンと撮るなど、いろいろ手法はございます。
 これがなかなか伝わらないことがあって、「西田はこのワンパターン写真しか撮れない」と言いだす人も出る始末。そういう輩はゲイリー・オールドマンに悪役しかオファーしないような、想像力のかけらもないなんたらかんたら、、、ってwikiに書いてあった。でも、役者とか確かにそういう話よく聞きますよね。。。主役ばっかりやっているとその役のイメージがついてしまい、それしかできないと見られてしまう。だから役者としてはそうならないよう、おいしい仕事でも自分から断ったり色々イメージ変えてみたりと。見ている人が誰でも想像力豊かとはいかないわけですから、こっちの考えをわかってくれ、というのもまあ無理がある気が致します。そういうのもあって、この連載は好きでしたがあまり長く続けてもいけないなぁ、と当時思った次第です。
 それともうひとつ、現場で戸惑った件がありました。山頂で大パノラマが広がっているわけですけれど、思った以上に写欲が湧きませんでした。まあただ晴れているだけだからと言われればそうなんですが、せっかく来てるんだからもっと貪欲に、ある意味機械的に、あれ撮ってこれ撮ってとしなくてはいけないのにやる気が起きない。。。そんな事をこの現場で体験致しました。
 おそらくなんですが、このときの冬は雪山ルート集を作るためもあって雪山に登りまくっており、おそらくこれがこのシーズン最後の雪山、やや飽きてきたというか燃え尽きたというか、いい加減花でも撮りたい、、、みたいな疲れが出てしまったのかと思います。やはり何をするにしても、緩急つけてメリハリつけてやっていくのが大事だなぁ、と感じました。いつでもいつまでも情熱を持って、いや持たなきゃダメ、みたいなのはマンガの世界か中二病であり、そりゃあもちろん大事ですが体をきちんとケアすること、体の声を聴くこと、とモー・ファラーも申しているわけです。っていうかいつになったらヴェイパーフライ4%買えるんだ。。。

あ、、ありのまま 今起こった事を話すぜ!

 まあそんな色々なことがあり、無理せず自然体に任せようということでぼちぼち下山していきました。半分ゴンドラなので楽ちん気分になってしまうルートですが、あくまで気分であって本当がやたら長く感じる遠見尾根。下山なのにアップダウンが多いため、中遠見山の登りも小遠見山も登りも体に疲れがきます。
 無事登山も撮影も終了。神城駅に下ってきて、ずっと我慢していたコーラタイムです。私はアルコールは飲みませんので、基本コーラです。糖分がどうとか言われそうですが、疲れた体には一気にブトウ糖を注入しエネルギー回復するのが一番だと思っています(妄信)。なのでカロリーゼロコーラなんてもってのほか、天敵です。人工甘味料の味も好きになれません。まあでも一番大事なのはカロリーでしょうか。基本的に運動をよくしていますので、カロリーを取りまくるのがちょうどよいくらいの体です。そういうわけで下山するといつも楽しみに、楽しみにしているコーラ。神城駅の自販機に小銭を入れ、いざ!


 あ、、ありのまま 今起こった事を話すぜ!
 「おれはちゃんとコーラを押したはずなのに、なぜか受取口にはゼロコーラが落ちてきた」
 な、、何を言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわかんらなかった。。。

 頭がどうにかなりそうだった。。。
 催眠術とか超スピードだとかそんなもんじゃあ断じてねえ

 その後に同行者がコーラを押したら、ちゃんとコーラが出てきた。。。
 カロリーが欲しい。

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