Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート136
03 Feb 2026更新

2014年1月29日 伯耆大山


 個人的な意見としてですが、もはや時代にそぐわないところがあると思って、また、山岳写真は今更な古典的なジャンルでもあるから個展というものは正直あまり興味がないのですが、時折ありますお客様からのプリント注文をすることがあって、いざ写真を大きく伸ばしたものを見るとやっぱり山の写真は大きく見るものだなぁ、などと思ってしまいます。フィルム時代から切り替わってもうかれこれ20年は過ぎますか、すっかりモニター上で見るものになってしまい、構図だとか露出だとか作品の完成度はちゃんと分別ついているつもりですが、時々A0とかA1くらいのサイズのプリントを見るとやっぱりモニターで見ているものとは全く違う迫力が感じられます。もちろんプリントの質もあるんでしょうけど。
 とくに昨今は大方の人がスマホで全て完結する流れができていて、それはそれで利点がありますがやっぱり質量の差は大きい。色々な写真を矢継ぎ早にこなすように画像を見てしまう時代、写真一枚一枚の価値もダダ下がってしまっている気もするのですが、実はそういう訳でもなく、ただ時代の環境がそう感じさせているところもあると思います。何でもかんでもコンパクトにシュリンクしてしまって良さに気付かないというか。そんなわけで時代に逆らって物理的に大きいものを見るとそれなりに説得力を感じたりしちゃいます。ですが、お客様の部屋に飾り続けるものである以上、写真の内容、質はもちろん高くなくてはいけません。ずっと見られ続けるものですから、間が抜けててはだめだし、レンズに頼って技巧に走り過ぎてもだめだし、うるさすぎてもだめだし、それなりのものが求められるとは思います。
 そんなわけでもしお求めであればお問い合わせいただければ好みの山、好みの季節、好みの写真でプリント致しますが、そもそもそういうページを用意しとけよと思ってもう何年経つだろうか。実際のところは手軽にプリントというわけにもいかず、お客様に合わせたものを用意しないといけないし、用意からプリントまで、さらには額装まで必要なときは時間と経費もかかるのでおいそれと手軽な注文ページなんてものは向いてなさそうな。在庫なんて用意できるものでもないし、買ってくれる人もそう多いわけでもない。でもとにかく写真は大きいとやはり迫力と説得力が出ますのでおすすめです。と言いながら時代はモニターなんだろうな。そういえば私が若い頃、25歳くらいの頃か、羽田空港の富士フイルムの宣伝看板をやらせていただいたことがあって、あれは確かタテ3Mのヨコ2Mくらいの非常に大きなものでした。だけど天井に近い高いところにあったので、、、全く迫力が感じられなかったような!
 さて、今回の写真ですが、鳥取の名峰・伯耆大山です。つい先日ホワイトアウトだかで遭難騒ぎがありましたが、何でそんな天気の日に登ってるんだかよくわからないし、すぐ降りてこられる山なんだから降りてこいよとも思いますが、どうなんでしょうね。標高の割に冬の積雪は結構な山だからそれなりですが、もうちょっとなんとかならんかったのかと思います。まあ他人の事はどうでもいいや。大山は何度も登っている山ではありますが、冬の景色がやはり一番綺麗であります。できるものなら朝焼けの剣ヶ峰を撮りたいのですが、このときはガイド撮影に徹していたのでそんな余裕はありませんでした。実際3日前まで南アルプスにいたし。そもそも晴れにくい日本海側の山、関東から行くにはかなりのギャンブルになるのですがそれを当てるだけでも精一杯。でもそうは言いながらも冬の弥山からの剣ヶ峰の朝って、そこまでいい太陽の角度ではないんですよね。バチーンと真横から当たるわけではなく、ちょっと逆光気味。はい、負け惜しみです。
 ともかくこの大山の難しさ(撮影的な意味で)は天候はもちろんですが、時期もあります。いくらこの標高にして雪が多いとは言ってもやっぱり標高は高くない。なので3月に入ろうものならずいぶんと環境の違う雪山になってしまいますし、場合によってはだいぶ春めいてくる。だから最低でも2月以内には撮らないといけないのですが、じゃあ12月と早めることもできない。なので1月中頃から2月が目処なのですが、その間に晴れるかどうか。そして他の山との合間でうまくいくかどうか、となるともうこの日しかなかったんじゃないかというくらい超絶ギャンブルであります。
 撮影日は2014年1月29日。高気圧が乗りそうだからおそらく晴れるだろうという見込みですが、気圧の谷とかになって雲が広がったらたまったものじゃない、正直あまり生きた心地がしないまま作業的に出かけたのを覚えております。そういう割には行きは飛行機、帰りは高速バスという両極端でありながらも用意周到な交通手段で行ってきたわけですが、まあギリギリまで天気を見ると行きは飛行機を使わざるを得なかった(のかな?)。個人的にはサンライズ出雲で楽しく現地入りしたかった気がするのだが、今は亡きスカイマークの「成田〜米子」便があったのでそれを利用した。その方が安くて早くて旨かった気がする。
 ということで出発は前日の1月28日。自宅を出たのはお昼を優に過ぎており、午後3時頃に成田空港着で午後5時半には米子にいた。さすが飛行機、恐ろしい速さである。空港からバスに乗って米子駅に着いたのは午後6時半、すぐに宿に行って荷物を置いて夕食に出かける。翌日は確実に晴れるかどうかはなってみないとわからないがとにかくやる気を出すためにステーキを食べることにした。いや、単に肉が食いたかっただけである。駅から近く、イオンからちょっと路地に入ったところに良さげなステーキハウスがあったので入ったわけだが、これが結構当たりだった。記憶では250gくらい食べたとは思うのですが、やっぱり肉をたくさん食べるといいですね。肉を食ったんだからやるぞ!という感じ。すごく満足したので次回米子に来たときにはまたこの店に来ようと決めていたのだが、4年後に来たときにはあっさりとなくなってしまい、これまた「今は亡き」お店となってしまった。
 んなわけで翌日。まずは寝ながら目を擦りながらすぐにライブカメラを見る。ガッツポ、行けそうである。ここでいきなり行けないと何しに来たんだとグチグチずっとしつこく自分を責めるので、本ッ当にひと安心。ステーキ食べてよかった(関係あるのか?)。何だかんだで乾いた寒い風が吹き抜ける米子からバスに乗っていざ伯耆大山へと向かいました。ここに、この瞬間に辿り着く前まですごくナーバスになってイライラしていたのですが、山が近づいてくるにつれてそういうものも有り難いことに解消されていきます。ただのんびり登山を楽しみに来ているのであればそんなことを感じることもないと思いますが、「撮らなくては行く意味がない」という気持ちでずっとやっているので、旅を楽しむ雰囲気なんて本当にミジンコもないんです。ただ楽しく、天気が悪くてもいいや、登山いいですよね、などという登山もしくは旅行などほぼないので、これは一体楽しいのかどうか。おそらく撮影が上手くいったあとの脳内ドーパミンだけのためにやっているのかもしれません。なので皆様は私がのほほんと山に登って写真を撮っているだけ、楽しそうね〜と思われているかもしれませんが、実際はドリフの楽屋ですよ。
 そうして朝8時半に登山口。太陽は未だ大山を越えておらず、北側は寒そうな日陰の中を歩き始めます。と言ってもやっぱり3000mの稜線や北海道に比べれば全く寒くないし、別段冬の厳しさはあまり感じません。有り難いのはのっけから雪はしっかりと積もっているので最初からスノーシューで登っていけるところ。私は雪が付いているところであればアイスバーン以外はできるところまで極力スノーシューで済ます派なので、歩き始めからがっつり使えるのは嬉しい限り。程よくついているトレースを辿りながら黙々と登っていくと30分ちょっとで開けた五合目に出た。なんだか無雪期よりも早い気がする。
 ここからは快適な尾根歩き。太陽もお目見えし、気温は高めで気持ちが良い。とくに風もなく快適な環境で歩けました。ほぼ埋れた六合目の避難小屋を通過し、そこから弥山に向けては勾配が上がるのですが、まだまだスノーシューで行けそうだからそのまま行きました。もちろんアイゼンなどは持ってきてはいるのですが、リフター立てたスノーシュー歩きの方が楽に登れますからこのまま登ってしまった方が疲れません。人によっては怖いかもしれませんが、まあ登りはなんとかなるでしょう(適当)。他に登っている人はちらほらで、視界に入る感じで三人くらい。登りやすい道なので土日の晴れだったら結構人で賑わうんでしょうけど、静かな大山が味わえるのは有り難い。とくに冬は人の人数で雰囲気がガラリと変わりますから、ちょっとでも特別なことやってる感が少しでもあった方がやはり楽しい。そうこうしているうちに勾配も緩くなり、稜線へと達しました。ここから弥山までもう少し。
 稜線に出ると気持ちの良い広い雪原が広がる。無雪期もここの木道歩きの部分が好きな場所です。冬は全く見当たらないダイセンキャラボクの生えているところで、振り返る弓ヶ浜の海岸線がすごく綺麗。そうしてそんな風景を背中に引きずりながらじりじりと弥山に向かって歩いていく。途中樹氷化したモリモリの避難小屋を通過し弥山に立つと、白く気高い剣ヶ峰が姿を現すという素晴らしい状況であります。谷川岳なんかもそうですけど、これでもかっていうくらいすっぽりと真っ白い雪に覆われると、どうしてこう何か特別なものを感じるんでしょうね。山肌が無雪期を全く感じさせない、芯まで雪で作られているように感じさせる感覚は独特なものがあります。
 時間が許すならば剣ヶ峰を往復したいところですが、どちらか天秤に取ると当然弥山から剣ヶ峰を撮る方に時間を割かなくてはいけません。雪の稜線を見るとどうみても無雪期より登りやすそうだし楽しそうなので行きたい気持ちはありますが、致し方なし。そういうわけでああ撮ったりこう撮ったりでまったりとやっておりました。雪山山頂での撮影というと大抵が強風に叩かれて「こんなん撮ってる場合じゃないだろ!撮れっかよ!」みたいな環境で撮ることが多く、その厳しさからどうしてもカット数が少なくなるのですが、安全圏内の自宅に帰って写真を見直すと「何でこれしか撮らなかったんだろう。。。」などと思うことがしばしば。そういうこともなくほぼ無風の中、こうして雪山が撮れるのは本当に嬉しいこと。四国の山まで見渡せるほど空気もキリッと澄んでいて言うことなし。まあそれでも家に帰ってみるともっと撮れたのになぁと思うのですが。
 時が経つのは早く、気づくともう弥山に着いてから2時間ほど経っておりました。いくら無風で暖かかった日だとはいえ冬には変わりないからよくやるなぁとは後で振り返って思います。昼過ぎに撮影を切り上げて、下山。帰りは進行方向に弓ヶ浜を眺めながら気持ちよく下りていきます。当然のことながら尾根に入ると六合目まではそこそこの勾配で、スノーシューを履いたままなのですがものぐさな私はそのまま下っていきました。場所によってはちょっと怖かったかもしれない。
 下りは元谷の方へと下るルートを取りました。冬はずっと日陰であろうとやっぱり北壁を正面から見たいですし、それにただ夏山登山道を往復するのは勿体ない。そして周って帰れば大山寺にも寄れる。標高差は200mくらいしかないので冬でも2〜30分くらいでした。このルートはトレースが薄く、深い雪を押し込んで下っていくのは実に気持ちがいい。とは言っても標高差がさほどないので深い雪っていってもちょっとの間しか続かなかったのだが。元谷に下ったのが午後1時半頃、時間的なものもあったと思うのだが誰一人おらず、北壁の風景を独り占めできました。

またも「今は亡き」

 元谷からはだらだらと歩いて大山寺へと行くのですが、ここを歩くときにいつも思うのですがなぜか案外長い。本当に長いかと言われるとそりゃたいしたことないですが、もう下まで降ってると錯覚しているからか何でか長く感じるんですよね。そんな感じでこのときも、積雪状況からすでにスノーシューを外していたこともあって手で持っていたからなのか非常にじれったく感じました。ようやく雪に埋れた大山寺奥宮に到着し、いつも通り賽銭を投げていないのにお参りし、登山と撮影の無事を感謝します。ありがとうございます。このあとの急な階段が滑りそうでなかなか怖かったです。ノー賽銭だから天罰も下りそうだし。
 すっかり西日になった午後3時半に参道へと下ってきて、汗を流そうとオープンしたての日帰り温泉へと吸い込まれていきました。以前来たときはこの参道にこういった新しめの日帰り温泉がなかったので,やっぱりこういうのがあると助かります。オープンして3ヶ月目、前年の11月に出来たピカピカの温泉である。概要を読むと「地下1200mから湧き出る源泉」と書いてあり、流石にこの日本列島、1200m掘ればどこでも温泉が湧きそうな感じがするが、、、と思ったのはいい思い出。伯耆大山を持ってしてもそんなに掘らないと出ないものか?と思ったが、野暮なことは言うでない。とにかく登山のあとに気持ちよく体を温められるのはなによりであります。そして帰りのバスが午後5時半なのでそれまでゆっくりと過ごし、おそらく記憶が正しければここで晩ご飯も済ませたと思う。
 大山口駅までバスに乗り、そこから電車で米子駅に着いたのは午後6時半。すっかり真っ暗である。帰りの高速バスがだいたい午後8時なのでここで1時間半ほど時間を潰しました。うっすら覚えているのは米子イオンのミスドに行っていたような記憶があるのですが、他の季節のときとごっちゃになっているかもしれない。しっかり覚えているのは高速バスの待合室にある自販機で「今は亡き」カナダドライ・ホットジンジャーエールを飲んだことであります。このときの冬シーズンに発売されたと思うのですが、寒い雪山から下ってきて暖かくて甘くてスカッとできるお気に入りの、私の中ではヒット商品の飲み物だったのですが世間的には全くヒットしなかったようでワンシーズンで消えてしまったような。結果的には失敗と思われますが、ファンもいたということをわかっておいてほしい。資本主義が先鋭化しすぎるとサイクルも早く、世の中にヒットしたものしか残らなくなるので、全体的に見ると実は社会に余裕がないように思えて住む世界がつまらなくなるような気がする。かと言ってアタリショックを肯定しているわけではない。

 そんなこんなで夜行バス
 乗って起きたら浜松町です
 楽チン楽チン

 は気持ちだけで
 東京まで10時間。。。
 行きは1時間半だったような。。。


 きっと錯覚だろうと思う。

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