Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート137
22 Feb 2026更新

2020年2月21日 西吾妻山


 今年もいつも通り、と言いますか例に漏れず天候がグチャグチャになっております。一気に冷えて東京まで雪が降ったと思ったら今度は20度を超えるという。三寒四温と言われてしまうとそれまでですが、確かにそういう風にして春を迎えていましたし、年々暖かくなってきていますから今更なんですけど、それでもちょっと前はもっとしっかりと山に雪が降ったいたはずであります。極端に暖かい日の訪れがあった年は近年ではもう普通のような気もしますが、降雪の少なさ、とくに太平洋側では本当に顕著のような気がします。南アルプスでは結局今冬はそんなに多くないまま、というか少ないまま春を迎えそうで、自分の撮影プランもひと月ほど前倒しで進めないとダメそうです。ただでさえ前倒しで予定を立てていたつもりなんですが、今年はもっと早くなりそうな。本当にしっかりした雪山を撮れる日が少なくなってまいりました。そう言いながらも場所によっては雪がジャンジャカ降って積もっている場所もあると思いますので、そういった場所の人からは何言っとんじゃいとお叱りを受けそうですが。なるべくうまく雪が降っているところに合わせて動けるといいのですが、後ろから急に殴られようとしている状態で避けるようなもんなんで。
 さて、今回の写真ですが、名峰西吾妻山でございます。名峰と言う割にはどんな山容の山なのかいまいち難しい山ですが、まあ「西」というよりはこの連峰全体が素晴らしい山といったところでしょう。あくまでも「西」は最高峰というだけで。でもやっぱり冬はこの「西」付近の樹氷が濃いですので冬はついつい撮りに行きたくなる場所です。冬の西吾妻山は二度目のレポートとなりますが、このときは写真というよりも映像の方をメインで撮りに行きました。
 撮影は2020年2月21日、ちょうどコロナで騒ぎが大きくなる前のタイミングでした。ウィルスが日本に上陸したかしてないかまだ微妙な時期で、移動などには社会の意識はまだ緩かった記憶があります。まあ振り返ってみるとずっと緩いままでもさして問題なかったような気がしないでもないのですが!そういうわけで2020年に山なんて登り行ってたのかぁ!と反応してしまう方もおられると思いますが2月はまだいつも通りでしたよ。
 いつもなら写真を撮りに行くわけですが、どこかの山で短編映像を撮っておきたいと思って西吾妻をチョイスしました。やはり樹氷という強いコンテンツがありますし、入りやすい、さほど遠くない、移動範囲が少なくでも撮れ高がありそう、というような理由だったと思います。八甲田だと何だかんだでロープウェー駅から大岳まで距離がありますし、あちこち歩き回る範囲が多いと時間が足りません。大岳周辺で腰を据えてもいいけどやっぱりロープウェー駅からの景色は定番だし、と撮るものが多そうで敬遠。あとは人が少なそう、というのもあったかと思います。
 天気を見計らって自宅を出ましたのは2月20日、始発電車で出発して新幹線で一気に米沢へ、そこからバスでロープウェー湯本駅です。アクセス良すぎて本当に気楽に来られるところです。天気は翌日21日が良くなる予想なので20日はまだ雲の中、米沢に着いたときも酷く雪が降っている記憶はないですが鉛色の暗い空だったのは覚えております。天気としては回復傾向にあるはずですのですごく悪いわけではないですが、ああガスの中避難小屋まで行けるかなぁと少し不安なところはありました。なんせ雪原ですから、冬のガスは方向が分かりづらい。米沢駅9時発のバスに乗って9時40分くらいに湯本駅、天元台に上がったのは10時過ぎだったか、朝10時にもうここにいるってのもなかなか凄いな。すぐにリフトに乗ってもいいのですが、リフトの先は雲の中で先が見えていないので、ちょっとゆっくりしていこうかと一旦ゲレンデすぐのアルブ天元台に入りました。
 こういうところに入ると悪い癖が出ます。何せアッタカイ。しかもここは宿泊もできるらしく、、、まだ10時なのにいきなり、きょ、今日はここでいいんじゃないかな、、、などという気持ちが湧き出してしまう。どうせガスの中歩いて避難小屋に行ったって、ここで泊まって明日早朝に登っていったって同じような気がしないでもない。いやいや、そんな考えではダメだ。もしかしたらこの日の夜から何か撮れるかもしれないじゃないか。荷物も重いし朝日に間に合わないかもしれないじゃないか。揺れる気持ちで何度も外を見たり、どうしようどうしようと一人ソワソワとしておりました。結果的には「本日は満室」で諦めがついたわけですが、一室空いていたら即死だった。。。ちなみにこのとき誰かに声をかけられ少し話をしたのですが、話の途中で「あれ?あなたってテレビ出てない?冬の槍のやつ、よかったよ」と言われた思い出があります。ありがとうございます。話の流れで「今日は避難小屋まで行くんですよ、まあこのくらいのガスなら問題なさそうですね」なんて余裕かましていましたが、まさかゲレンデで宿泊するか悩んでいたとは思うまい。
 諦めてリフトに乗りまして、ゲレンデトップに着いたのはちょうどお昼。早速スノーシューを履いて歩き始めます。装備がスノーシューしかいらない山っていうのがまた気楽でいいです。軽い吹雪の中、樹林帯を歩き始めましたがせっかくだから何かこういう所から撮っておこうとリスト化してあったので、ノルマをこなすように撮り始めます。なんだ、宿に泊まってる暇なんてなかったんじゃないか、と動き始めると気付きます。やっぱり人間、体を動かさないとダメな方ダメな方に流れていってしまうんですね(宿に泊まるのはダメなのか?)。撮影のメインは樹氷ではありますが、オープニングの方でまだ樹氷になりきってないものを撮っておいた方が映像に幅が出るだろうと考えてのことでしたが、結果的にはそういうカットはやっぱり少なめになってしまいました。でもあるとないとでは編集のやりやすさが違いますので、面倒くさがらずに撮っておいてよかった。
 樹林帯を抜け出すと樹氷原、ですがどん曇りのややホワイトアウトなのでこれといって何もできず、あとは淡々と歩くだけです。視界が悪いので全容はよく掴めませんが、何となく樹氷の育ちは悪い模様。すでに暖冬でしたから分かってはいたのですが、とにかく来たからにはやれることをやるのみです。軽いホワイトアウトでしたら土地勘があるのでおそらくこっちだろうと適当に歩いて梵天岩のピーク、まあそこまではよかったんですが流石に雪原、結構迷いましたのでGPS君に頼ってしまいました。できるなら自分の力でしっかりと完結せねば、とは思ってはいるのですがこんな便利なものを使わないというのも勿体ない。地図も読めないのに頼りきりはまずいですが、この環境の中で確実に自分の位置がわかるのはありがたい。そんなわけで「本当にこっちかよ!」などと疑って使っていたのに、何の文句もなく表示通り避難小屋まで送ってくれました。疑ってゴメン!避難小屋は一階の出入口が軽く埋まっておりましたので二階から侵入、一応スコップは持ってきておりましたが一階に降りるともっと良いスコップが置いてあったのでそちらを使うことに。到着が午後3時前くらいでしたので、残った時間はのんびり一階出入口の雪かきをして楽しみました。これでスムーズに出入りできます。もし夜中から晴れたら、と思いましたので早くに床につきました。初日は水を運んできたので楽チン。
 翌日21日。日の出の時刻は午前6時15分くらいですが、3時くらいに起きました。小屋を出るとしっかりと晴れ渡っており、星空が広がっていましたので早速撮影。カメラを仕掛けて1時間程度、星空と樹氷のタイムラプスを撮りました。ここから西吾妻山頂は標高差で60m程、雪だとしてもまあ15分もあれば辿り着けるでしょう。あまり早く行っても寒いだけだし、ちょうどうまい時間に出発しようと小屋でのんびりと構えます。山頂には満を持して午前6時頃にしっかりと登りましたが、昨日ロケハンできなかったからか構図の良いところを探すのに手間取ってしまい日の出前ギリギリで撮影開始。う〜ん、危なかった。ここでは日の出前から山が赤く染まっていき、次第に金色になり、昼の光になるタイムラプスを撮影。ちょくちょく露出を変えて撮るので付きっきりです。真っ赤に染まる樹氷と緩やかな山並みが美しく、これタイムラプスで再生したらさぞ綺麗だろうなぁ〜と思いながら撮影してましたが、内心構図的にはもう少しいい所があったんじゃないかな、とも思っておりました。そしてここからはもう本当にずっと撮影しっぱなし。
 少し日が昇ってきたところでドローンを飛ばし空撮、地上では望遠系で雲と山を絡めたタイムラプスを放置撮影、同時進行です。何時間かはもうずっとその調子で、決めていたシーンを流れに沿ってどんどん具現化していきます。さすがに地上動画を撮るときはドローンの併用はできませんが、様々なバリエーションの画をとにかく短い時間でこなしていく感じ。樹氷の出来はあまりよくありませんが、かと言って木が露出しているわけでもないのでなんとか耐えられる、といったところでしょうか。よく晴れておりますがなぜか運良くほぼ人が登って来ることはなく順調に撮影が進みます。風もたいしたことないので気楽に撮影できますし、あまり寒くもない。そして西吾妻山頂で朝からほぼ動いてないので肉体的なカロリーもあまり消費ぜず、あまり食べることなく次から次へと撮っていくことができました。ほぼ同じところにずっといて、これだけ様々なカットが撮れるのは樹氷、そして西吾妻山ならではだと思います。たいして動かなくてもいくらでも撮れるコンテンツが目の前にいっぱいありますし、山の形がもっと顕著だったらそっちに惹かれてもっと移動することも考えたことでしょう。
 午後1時を過ぎるとすっかり西日。今まで気にしていなかったわけではありませんが、安達太良山の面に日が当たるようになり樹氷から少し離れてそちらにもレンズを向けます。でも結局手前に樹氷を入れるんですけど。奥に安達太良山を入れつつ低空ドローンでゆっくりと樹氷の間を縫って飛ばしてみたりしてみましたが、今までずっと「樹氷」だけ撮っていただけに違和感ありあり。樹氷は「山」ではないのかもしれない。そして思えば仕上がった動画に安達太良山は入ってなかったかもしれない。。。
 午後3時頃に山頂付近の撮影を切り上げて小屋へと戻ります。今度は日が沈んでいくカットを撮って、そのあとは夕日から星空へと移行するタイムラプスを小屋周辺で撮る算段です。そうして初めて?西側を向いたとき、目の前にきれいな磐梯山が飛び込んできて、、、眼下の檜原湖と猪苗代湖に囲まれた三角錐の美しい姿を、、、と、今更撮影しはじめました。こんなことをしているから、今度は夕日に間に合わなそうで、走って小屋へと下っていきました。
 小屋で軽く何かを、、、おそらく柿の種とかチョコバーだと思いますがお腹の中に入れたあとすぐにまた外に出て、ちょっと西側の雪原で撮影です。雪原の向こうに並んだ樹氷のシルエットと沈んでゆく太陽のタイムラプス、日が沈むにつれて伸びてゆく樹氷の影をいい感じで撮影できました。できればもっとモンスターになってると嬉しかったですがまあそこはどうしようもない。それが終わると山が赤く染まっていきますので、今度は樹氷の夕焼けからの星空への移行タイムラプスです。刻一刻と変わる光に合わせて露出を変えながら撮影していきますが、せっかくなので同時進行でドローンも飛ばします。西吾妻山山頂の夕焼けが綺麗でしたし、北西の飯豊連峰も綺麗でした。しかし振り返ってみると、一体どうやってこの同じ時間帯に一人でこれだけこなせたんだろうと不思議でならない。夕焼けドローンと夕焼け〜星空タイムラプス同時進行なんて、今思うと想像しただけで大変そうです。年取ったということなのかな?
 日の入り自体は午後5時半頃に迎えましたが、そこから午後7時くらいまでは星空を撮り続けます。暗くなってからは露出が一定だから、まあほぼ放置でいいのでとくに大変でもないのですが。この辺まではずいぶんと良かった天気ですが、ちょっとばかし雲が増えてきて満点の星空とはならずちょっとイメージしていたものからは質が落ちましたがなんとか使えるでしょう。このあとは空が曇ってしまい星空も撮れず、それでも午前3時くらいからずっと撮っていましたからちょっと有り難いと言えば有り難い。さすがに疲れました。約16時間労働であります。でもほとんど動いてないけど。

荷物が重くて走れない!

 最終日の22日は午前5時くらいに起きて、それからすぐに外の様子を見る。曇ってはいるが思ったほど天候の崩れはないのでまあよかった。とくにやることもなく朝食のカップラーメンを食べて、午前6時半に小屋を出発、このときはせっかくなので西大巓経由で福島側のグランデコに進路を取りました。小屋から一旦下って西大巓とのコルあたりで少し日差しがあったので軽くドローンを飛ばし、西大巓に上がると朝日連峰に光が当たっていたので(ちょっと面倒だな、などと思いつつも)タイムラプスを撮りました。映像はとりあえずバリエーション多くパターンを変えて撮っておいた方があとあと助かりますから、やっておいてよかった。写真であれば気合の入った一枚を大きくバーンと使えばあとは小物でもページを埋めたりすることはできますが、映像はカットの大きさは全て同じですから、やっぱり色々と変えたバリエーションがないと編集で詰みます。
 ちなみに帰りはグランデコの近くの東急ホテル(現在は別名、譲渡済)から猪苗代駅に行ってくれる要予約のバスが出ており、ちゃんと事前に予約をしておいてはいたのだがそのバスが午前9時20分発なのであります。西大巓でタイムラプスを撮り終わったのが午前8時15分だから、あと約1時間で東急ホテルまで行かなくてはいけません。まあ後は下るだけ、、、なんですけど一応約600mあるのよね。下りだから荷物が重くても何とかなる!いや、何とかする!と猛スピードで下っていきました。ここまで快適な寒さだったのですが、途中からもう汗だく。風呂に入って帰る予定はないので(何でだよ)嫌な感じがしますが仕方がない。とにかく一生懸命下ったら、25分くらいで山頂駅に着きました!午前8時40分!余裕だ!、、、と思ったらだいたいいつもこのケース、ゴンドラのスピードは予想以上に遅い、そして予想以上に距離がある。おい早くしろよと体を揺すってみますがゴンドラのスピードは変わらない(当たり前)。これ、まずいんじゃない?と思っても小部屋に閉じ込められた私にはどうしようもできない。とりあえず、、、時間がありそうだったので、、、ゴンドラの中で汗だくのシャツを着替えた。私にできるのはそれくらいだった。
 麓の駅に着いたのが午前9時頃。バスが行ってしまうまであと20分。でも何とかなりそうであります。ここは事前にグーグルマップで衛星画像で確認していますから、距離にして約650mほど。空荷なら1分40秒あれば走れる距離だ、と思って麓駅から東急ホテルを探すと、、、遠い!!!これをこの重い機材を運んで行かなくてはいけないの?何のために?なぜグランデコにバス停がないのか!まあそれはホテルのバスだからさ。。。その代わり無料で乗れる(泊まってないくせに)。。。タクシーで猪苗代に向かえばこんな辛い目に合わなくていいのに「無料」という響きに誘われた自分を恨むしかない。しかしここが男の勝負でもある!男には負けるとわかっていても(以下略)
 ちなみに東急ホテルへの道を見渡すと、微妙に登り坂になっているのがわかるというのが極め付け。走れば間に合うだろうと思っていましたが、約40kgを背負っていては登り坂は正直無理。でもとにかくできるだけ急ぐしかない。息を切らせながら、長い長い650mを何とか歩き切りました。いや〜辛かった。何でこんな目に会うんだろう。よっぽど前世で悪いことをしたに違いない。到着は午前9時17分、せっかく着替えたのに(どこで?)すっかり汗だく。何でこうもいつもどうしようもない終わり方なんだろう。もっと気品のある終わり方をしたいものだ。
 さて、帰宅してから早速動画の編集開始です。数々のカット、タイムラプスも非常に素晴らしく、無事西吾妻の冬をまとめることができました。

 だがやはり、
 樹氷が弱い。

 こんなんでは納得がいかない。。。

 ということで
 このときの動画はお蔵入りとさせていただきました。。。

 今まで講演で二度ほど、
 時間が余ったときにだけ使ったことがあります。

 情けない。

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