レポート99
30 Dec 2022更新
2009年12月22日 撮影・「谷川岳」

今年「も」雪がなかなか降らず、少ないなぁ〜なんて思っていたらこう急にドカンと降るもんだから困ります。どうしても色々とやることがあるのでこの積雪状況だとちょっと様子見るかぁ、と気持ちを入れ替えてデスクワークに専念しようとすると降るもんだから、どうしたらいいものか。こう季節の動きがバラバラだと日程が組みづらいので集中できないのが辛いところ。山に入るか、入るのか〜と思うと今度はデスクワークになかなか集中できないので、本当に捗らないものである。そぞろ神のものにつきて心を狂わせ、というやつなんでしょうか。でもまあしかし、冬だけに絵面は降った後に越したことはないから、登るのは疲れるけど焦ることはないのか。その点、夏の花なんかは黙っているとすぐにやつれてしまうので、冬の方が幅は広い分落ち着いていられるのも確かであります。
花、と言えばどこかの山の高山植物の動画をチラ見したのだが、これまた出来があまり良くないものであった。とは言え高山植物の動画を作るというのはなかなか難しいものである。というのも花の寿命というのはなかなか長い様で短く、「これは今ベストだな、天気が良くなったら撮ろう」なんて思って二日三日放置してしまうと結構傷んでいるので、そう易々とはいかない。良い状態の花を見つけるのもそう簡単ではない上に寿命が短いものだから困ったものだ。しかも小さいもんだから風景を撮るよりも格段に時間がかかったりする。当然現場の天候や風の状況などを考慮すると写真ならいざ知らず、動画でそれを収めるのはなかなか骨が折れる作業なのである。
皆さんはお花畑でキレイな花を見たことがあるとお思いだとは思いますが、全景はともかく、ではキレイな一輪、となると本当に旬の、絵になるザベストオブザベストの株って真面目に少ないんですよ。その株を見つけて、良いライティングがあって、風も落ち着いてて、周りもそんな邪魔な株がなくて、さらにそれを美しい構図で収めるって、まあ何カットかは撮れたとしても1本の動画にするにはなかなかの労力がかかるわけです。そんでもってただ花を並べて1本の動画を作ってもつまらないから何らかのバックストーリー的なものは必要だしで、、、大変である。
まあ簡潔に言うと私も只今花の動画を作っておりまして。。。まあ大変なわけである。そこそこ見られるものには仕上がっているのだが、、、結局花好きの人しか見なそうだしなぁ。撮影は終わってるから大変でした、というのが正しいのかもしれないが、花だけだともちろん編集も大変なわけだ。となると、音楽でごまかすしかないな!
さて、今回の写真ですが谷川岳です。旧道で幽ノ沢までの往復なので登山的にはどうでもいい感じですが、珍しく撮影の方もどうでもいい感じで入りました。というのも、この年の頭に恥ずかしながら指を怪我いたしまして、そうして迎える初めての冬でございました。ですのでどのくらい寒さに弱いのかとか、色々と確かめるためのリハビリみたいなものですね。急に厳しいところに行って大丈夫なのかって、大丈夫じゃなさそうですからそういうものの感覚を少しでも、というわけです。と言いながらカメラはフィルムカメラも持ち込んでいましたので運ぶ重さはそこそこあったりで、さすがにタダでは山に行きはしません。
撮影は2009年12月22日。体の様子見が主な理由とは言え、もちろん天気は見て入ります。と言っても相手は谷川岳ですので天気を読むなんてのはほぼ運頼みなわけですが、まだ冬型もがっつり強烈なものでもなく、崩れてぼちぼち移動性高気圧に覆われれば晴れるだろうと予想しておりました。早朝に自宅を出て土合到着が9時前くらい、歩き始めた頃はまだそこそこ雲が残っておりましたが青空率も高く、歩いているうちに晴れそうであります。マチガ沢に着いたのが9時半頃、まだ稜線に雲は少しかかる感じはありましたが撮っているうちにすっきりと晴れてきました。
この日は冬至、このくらいの時間にマチガ沢にいるともうおそらく一ノ倉沢ではライティング的に間に合わないとはわかっておりましたので、今回の撮影はここに専念することとしました。前日にだいぶ降った様でここまで来る道もこの時期にしては思ったより雪がありました。トレースはなく、記憶では一日を通して誰にも会いませんでしたので贅沢な時間が過ごせました。ともかくやっぱり自分の足跡しかないっていうのは気分がいいものです。誰かの足跡を辿っているとどこかつまらないものがありますから。周りに生えるサワグルミやブナの木には雪がまとわりつき、何とも冬らしい、寒いけどどこか温かみのある景色を見上げながら歩いて行きました。面白いものですよね、雪がついているとなぜか温かみのある景色になる。雪がなくて禿げた木だらけだと逆に寒々しい景色になる。雪を見ると楽しくなるというのは犬だけでなく、人間、それも大人の人間でもなんでしょうかね。
ということでマチガ沢。マチガ沢からの景色って一ノ倉沢に比べると淡白ですが、ある意味山らしい風景が見られるので好きです。一ノ倉沢はもちろん山らしくないなんてことはないのですが言ってみればシングルカットされ過ぎ感が強くてもう本当にどハマりのヒットソングという雰囲気なんですよね。それはそれで無論問題ないのですが、その代わりこの景色は自分だけのものという印象よりかは社会で共有されている景色、みたいな感じを抱きます。なのでどう撮っても自分だけの写真にできない、自分の色を絵の中に落とし込みしづらいといったところがあります。その点マチガ沢や幽ノ沢はやや迫力が落ち着いている分、切り取り方に余裕があって親近感を抱くところがあるわけです。あとは何だかんだ言ってもちゃんと山頂が見えているというのも大きいだろうか。トップ写真左手の小さいコブみたいなピークがトマの耳になりますので、一応ちゃんと見えているという強み(?)はあるかも。これをカットして右の東尾根メインでいくか、しっかりトマも入れて「谷川岳」を意識するか、などなど色々自分の考えを入れるのは楽しいことであります。
一ノ倉沢に着いたのがお昼ごろでしたので、振り返ってみるとずいぶんとマチガ沢にいたのね。。。一ノ倉沢は案の定すでに全面陰っておりましたが、やはりいつ見ても迫力があるものです。しかしさすがに冬至、本当に陰るのが早いものだなぁ〜とわかってはいても感心して眺めておりました。指の方ですが今のところ問題がなさそうで、さすがに怪我する前に比べると寒さで指が悴む、痛くなるスピードは格段に早いですが、細かい作業をしないときはダウンミトンでカバーすれば大丈夫な雰囲気でした。さらにミトンの中にカイロを入れていましたので、インナーで作業して悴んだらミトンの中のカイロを握りしめる、という感じです。これは暖かい。ううむ、初めからダウンミトンを使っていれば凍傷になることもなかったかな、と思いましたが、そもそもダウンミトンって過剰だよね。でも暖かいので、難しい登山をしない人には正直おすすめです。ピッケル、ストック握るだけならミトンで十分ですから。
しばらくしていると、陰るのは構わないんですがなぜか空まで曇ってきました。今回は撮影をそんなに気にしてませんからここで帰ってもいいのですが、いつもの巡礼ルートとしてはやはり幽ノ沢まで足を延ばしておきたいところ。初めて冬の旧道に来たのはこの時からさらに10年以上も前、それから毎度来るたびにとりあえず幽ノ沢までは行くのでなぜかとりあえず行ってしまいます。曇っているので私にとっては行く意味もないのですが、もうこれは宗教みたいなものなのでしょう、お参りです。一ノ倉沢を過ぎるとやや雪が深くなるのでまあそれも楽しかったり。時折届く日差しが降ったばかりの柔らかい雪面に樹々の影を落とし、音のない何とも言えない世界を作り出していました。
何とかなりそう
幽ノ沢では山はすべて見えておりましたが高曇り、寂しい景色ではありますがしっとりとしていて、見るだけなら十分いい景色です。こちらも一ノ倉沢に比べると完璧性みたいなものが落ちるのでやや見劣りしてしまうところではありますが、その分自分だけの景色が見えるところであります。堅炭尾根だけカットしてもいいし、全体でいってもいいし、一ノ倉岳をメインにしても良い。どことなく足りない華を補う部分が私の世界だと勘違いできる余地があるのは有難いこと。どこを削ってどこを取り上げるかはそれを作り上げる人間にかかっているということでしょうか。ほんの些細なことでありますが、人間だけの楽しみであります。私が南アルプスが好きだったり、北アルプスだと黒部五郎岳が好きなのはそういうところがあるのだと思う。
はてさて、午後2時すぎになりようやく帰ることにしました。自分でつけた自分の分だけの足跡を辿って、ゆっくりと土合へと戻って行きました。まあ、環境が緩かったですが、この分でしたら指は何とかなりそうかな、と思ったわけでした。
年が明けて
普通に登っていたので
まあどうにでもなりそうです
しかし14年経っても
まだすぐ霜焼けっぽくなるのは
情けない
気合いが足りない!