Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート88
27 Mar 2022更新

2012年3月29日 撮影・「八ヶ岳」


 すみません、本当にすみません。グダグダとしている間にひと月以上も経過しておりました。色々と忙しく仕事をしているとなかなかそれらを中断してレポートを書こう、という気になれなかったのですが、本当大変申し訳ございません。アマプラでピカード新シーズンも始まってしまいましたし、やや暖かくなってきて陸上トラックに行ってしまったりと。。。え?働けって?いやすみません、ちゃんとやってましたよ。ただどうもやはり頭が重く、所謂自分は二流なのに一流芸術家ばりのこう、なんというか、閃きと絶望の谷間で生に向かって必死に手を伸ばすようなあのいやお前薬やってねーか?みたいな境地に立っている感じでした。まあ二流なのでフリですけど。どうも頭が重いのは本当であまり走る気も起きないくらい体調不良なのですが、とりあえず先週は100mを11秒1で走りました。ありがとうござました。
 ということでようやく一番作りたかった双六岳、黒部五郎岳のPV、プロモーションビデオができましたので、ぜひご覧になってくださいませ。と言っても写真と違って何年も通って作ったものではなく、夏は1回、秋は2回の撮影なので幅に限界はありますが、なんとか仕上がっているかと思います。よくある動画のように「私を見て見て」ではなくて、本当に、本当にこの美しい自然をそのまま汲み取っていただけたら、との思いでございます。あたかも見ている人がその場を触れているかのような、そんなものを作りたいのであります。音楽も心を込めて、作らせていただきました。まあしかし、伝わらなかったらどうでもいいことだな!
 ところで、昨今のコンテンツはどれもこれも陳腐化しているきらいがあります。もちろん自分のも含めて。やはり昔に比べるとどのコンテンツも制作の手軽さが仇になっているところがあるのかもしれません。パパッと撮って、ちょいちょいとBGMを拾ってきて、ポイ、という感じ。ぱっと見の見てくれは出来ていますが、それは大規模チェーンの食事のようなものでもあるのです。大規模チェーンにはもはやおいしい食事を提供したいとか、食の感動を伝えたいとか、そういう料理人になりたいとか、もはやそんな志はありません。ひとえに「いかに儲けるか」であって、ラーメン屋が明日にはドーナツ売っててもいいわけです。下手するとアプリ屋になっていてもいいわけです。ビジネス、という観点では決してそれを否定はしません。実際のところそういうものが無くなって欲しいと思っているわけではないし、当然必要とされる部分もあるでしょう。しかしやはりコンテンツの根本を成り立たせるのは芸術であり、芸術的なものなのです。その根本を失ったものが昨今は芸術を語っているような、そんな世の中であるような気がするわけです。ただ単に声が大きいものではなく、ただひたすらに質を高めて作り込む、というのももうちょっと報われるようなものでないと、文化の発展というものはなされないと思います。もちろん、自分のことは棚に上げておりますが!
 ともかく私と致しましては、本当に撮ること、創ることが好きで、今まで何十年も歩いてきた山でこういう動画を作らせていただけたというのは本当に有難く嬉しい限りです。それに尽きる。初めて双六岳に登ったのはいつでしょうか、あれから何十年、ただ勝手に歩いて勝手に撮っていただけの輩が、その山の山小屋から依頼いただいてオフィシャルでこういうものを創らせてもらえるというのは本当に嬉しいことなのであります。しかも好き勝手に(笑)。なわけでいろいろな山を歩いてきた私としては、よくある公的機関等の映像で、お金を貰ってるのに全く撮れてない映像を見ると非常に腹立たしいわけであります。え?お前も撮れてないって?とんでもねぇ、わたしゃ神様だよ!!
 さて、今回のレポートですが、八ヶ岳は阿弥陀岳からの出場です。撮影は2012年3月29日。雑誌の連載がメインの撮影で、29日に高気圧が乗りまくりそうだからと狙いすまして前日に入山致しました。私の予算の都合上テント泊ということで初日に行者小屋テント、翌日赤岳周って夕方に阿弥陀岳、30日下山の予定で入りました。元々阿弥陀岳からの赤岳を撮るのが目的ですが、赤岳経由になった理由はたしか同行者の方が冬の赤岳に登ったことがないからだったと思いました。まあ普通に登るだけなら難しくないし、せっかくだから見ててあげれば安心して登れるでしょう、という偉そうな上から目線でしたけど、まあせっかくだから、と。何せ私は何度も登ってるし。
 そんなわけで初日は新宿8時出発のあずさで八ヶ岳へと向かったような。なので7時45分ごろ新宿は南口で待ち合わせたわけなんですが、とりあえず合流して早速問題発生。しかも重大である。
 「こいつ、、、ピッケル持ってないぞ。。。汗」「す、すみません、ピッケルは。。。」
 「あっ!忘れました!」
 忘れました、ってあーた。さすがにいくらただの赤岳の尾根登りとは言えそんな適当なものでもないだろう。しかし今更取りに帰っては間に合わないし、電車は来ちゃうし、チケット買っちゃったし。私はそこで考えた。この間世界はもしかしたら大きくもっと時間が流れていたのかもしれない。しかしその間わずか0.05秒、だったような気がする。私の灰色の脳細胞がピキンと閃いて勝手に決断を下したのである。
 「わかった。僕のを貸そう(ニッコリ)。」
 。。。これと言って何の解決にもなっていないのであった。何の目的も果たしてないのに溶鉱炉に沈みながらサムズアップしている状態である。しかしもう何とかするしかないのである。もし、もし無事何事もなかったら、私は選ばれしものだったということで。って本来ならオフレコだな、こんな行為。まあそんなトラブルを抱えた状態であずさに乗り込んだのでした。
 話は飛んで登山口、美濃戸口である。自分の脳内ではストックでも行けるだろうと想像できるのだが、こればかりは雪の状況如何である。1月とかであれば雪はそこそこ柔らかいから行けると思うのだが、3月も末である。場合によってはカチカチになっているかもしれない。でもあのくらいの斜度ならどうでもなるだろうとも思うのだが、不安であるのは間違いない。ともかくも11時スタート。雪が軽く舞う重苦しい空の下、とりあえず目的に向かって歩き始めました。行くしかない。必ず成功させるのである。私は日和らない。
 歩き始めて15分くらいするとだいぶ雪の降りが強くなってきた。当然まだ美濃戸山荘すら着いていない。荷物重いなぁ。。。なんて思い出すと途端に気も弱くなるものである。そうなるとふと思ったわけだ。こんな天気の中わざわざ行者小屋にテント張る意味ってあるのか?いや当然朝イチで稜線に立って染まる赤岳やらを撮るのであればその方がいいだろう。しかしである。ピッケルがない場合は流石に夜明け前に稜線へと登るわけにはいかないだろう。そこまで舐めてはいかんのであります。夜明け前は当然雪も硬くなっているから、登るとしてもいくらか陽が当たってからでないとまずい。う〜む、こういうときのためにバットマンのブレード付き籠手があるわけか。。。そういうものもない、となると雪が硬いうちに登ることもないから最前線にテントを張る意味はなく重い荷物をそこまで運ぶ意味もない。空荷で登山口から日帰りで向かった方が労力があきらかに低い。だって地蔵尾根に光が当たる時間からでしか登れないんだから。。。そして、ふと思うと登山口の八ヶ岳山荘には暖房付き仮眠室があるわけだ。。。ということでこの日28日の登山はあっさりとお昼で終了してしまった。引き返そう。そして明日空荷で歩こう。いや決して日和ったわけではない。アルパインスタイルである。極地法など(以下略。水すら作らなくていいわけだし。
 翌29日は朝から晴れ。6時ごろ出発し、9時過ぎには行者小屋におりました。赤岳、横岳を見る限り昨日の雪もたいしたことなかったようで、白く染まっておらず3月らしい岩肌が見えてましたから、まあ朝に稜線へと登るだけの価値はなかったということにしておきましょうか。行者小屋で準備を済ませ、いざアタック。同行者はここからピッケルですが、私は心もとないストックであります。地蔵尾根もまあピッケルが必要なのは階段登った後だから、前半はむしろストックが楽ですよ。ちなみにもう一度言いますがこれはオフレコですので、真似してストックで行かないでくださいね。行かれるか行かれないか、ではなくてダメなんです、そういうことしちゃ。
 まあ登りだし、斜度的にも別に行かれないこともなかった。アイゼンは履いてるわけだし。ただ懸念していた第一関門に到着、地蔵の頭に出る直前のナイフリッジである。ナイフリッジとは言っても距離は短いし、まあでもしっかり3月の硬い雪で、、、結構怖い。不思議なものでピッケルないとこんなに不安になるものなのね。いつも持っていても別にここでピッケルを刺すとかしないですが、もし滑った場合を考えると手に持っているか持っていないか、これは心理的に大きな差です。ということで転ばないように座り込んで渡ることにしました。短いし。そんなわけで無事稜線到着。同行者を見ると、「別に難しくないですね」という涼しい顔をしておりました。アイゼンで踏んでやろうか?ピッケルを投げつけてやりたいところだが、ストックしか持ってないので、争った場合は負けそうである。
 稜線まで上がればとりあえず山頂まではピッケルがなくても自信がある。まあそんな怖い斜面ないしね。いかにももう春が近い、と言わんばかりの雪の稜線を進み山頂へと向かいました。決してこの時期が悪いわけではないですが、やっぱり厳冬期に比べると雪山の覇気がなくなるといえばなくなるし、同調するようにシャッターを切る回数も減ってしまいます。これは反省するところであります。その時期にはその時期の美しさがあり、そういう機微に気づいてこそ表現者であるからです。わかりやすい時期は探さなくても向こうから提供してくるから逆に簡単ですが、微妙な時期は目を凝らさないとそういう細かい移り変わりが見えてこなかったりします。よく山だと朝夕にこだわって撮る方もいらっしゃると思いますが、そういう方の多くは真昼間の12時には魅力がない、とバッサリと撮らなかったりします。確かにインパクトは欠ける。ですがその時間も事実であり、存在しておりますから、その時間帯の良さというものも山全体の美しさ表現の1ピースなのであります。そういうところに手が届くかどうか、というのも表現者のレベルに関わってきます。偉そうなこと言いましたが手元にストックしかない私、この時ばかりはそんな心の余裕なんてないのでお許しください。
 11時40分ごろ、赤岳山頂到着です。やや春めいて靄っておりますが、まあ快適な天気。夕方の阿弥陀岳からの撮影も問題なさそうなのでひと安心です。だがしかし、第二関門の赤岳山頂から文三郎分岐までの「下り」を考えるとあまり嬉しくないな〜。鎖場ではあるから鎖が埋まってなければまあなんとかなるか。登りは上に力をかけるからどうとでもなるんですが、下に力がかかる下山ではさすがにピッケルが欲しいところ。とは言え八ヶ岳でツンツルテンの氷斜面になっているというのはほぼないので、とりあえず焦らず行くのみです。結構岩も出てるし。今回の撮影の目的はこの先にありますから行くしかないわけです。
 2箇所くらいかな、「いや〜ん」という感じのところがありましたが、とりあえず乗り切りました。残るは阿弥陀岳のみです。文三郎分岐から阿弥陀へと登る道は雪量が多く、今までの道と比べるとしっかりと雪に覆われています。分岐の真東側から真正面に登るルートを見ると雪で岩場が埋まってる分のっぺりした壁に見えるのですが、いざ取り付いてみればそこまで傾斜があるわけでもない。時間的にも雪は緩んでいますからえっちらおっちらと問題なく登れます。山頂に登りきるところだけはぼちぼち急だったので、あんまりストックで下りたくないなぁと思いました。ので、下りは御小屋尾根で下山しようかな、と。

春の嵐

 阿弥陀岳山頂は午後2時着。もうすぐ4月ということもあってポカポカ陽気、展望はいいですが富士山はやや霞んでる感じも。キュッとしまった冬の空気感はもう全くありませんが、だがそれがいい。暖かい陽気にこれからの季節を感じてウキウキな気分と、冬が終わることの安心感なのか哀愁なのか、ちょっと寂しい感じの気分が同時に心の中に押し寄せてくるのはこの時期ならではです。赤岳横岳にはそんなに雪がついていないですが、いくらか夕方に赤く染まるといいなぁと期待を込めて山頂にて待機しておりました。結局午後5時半ごろまで山頂にいましたが、やはりボヤ〜っとした陽気ですので光の当たりも弱いです。阿弥陀岳からちょうど真西あたりの御嶽山に向かって太陽が沈んでいく様は本当に美しかった。ボヤ〜っとした空気感は空全体の色を橙にする感じで、どこか感傷的であります。誰もいない山頂、そう言えば赤岳でも誰もいなかったし、静かな、静かな八ヶ岳でした。まあ、誰かいたら「ストックのやばい奴がいた」とか通報されそうだからよかったけど。
 そんなこんなで業務をこなし下山に取り掛かりました。下山開始がやや急ですのでアレですが、今までのストック縛りの難所越えに比べれば楽勝であります。少し下れば樹林帯も近くなり、あとはぐんぐん美濃戸口へ向かって下っていくだけです。この日はまた八ヶ岳山荘の仮眠室泊なので急ぐこともありません。だらだら下って夜8時過ぎには着けるのではと思って歩いて行きました。まあどうしても後半は暗くなってくるのでもうちょっと時間がかかってしまったと思いますが。
 しかし問題はそんなことではなく、最近はそんな症状になることもないのですが、昔は1年に2回くらい、お腹にガスが溜まってかなり痛くなることがありました。御小屋山あたりだったかな、下山開始あたりは気にならなかったんですがだんだん痛くなってきて、騙し騙し歩くように。一日中腰にレンズポーチを巻いているのも原因かと思うのですが、大きいおならがブーっと出てしまえばスッキリするばずなんですが、出ない、出せないんです。だんだんとどんどんガスが溜まるような感じで時間が経つにつれ腸が破裂するんでは?というくらい痛い。ようやく下界に辿り着き、仮眠室に入ってしまえばなんとかなる、と思うも真っ暗な別荘地で結構迷ってしまい、というかもう正常な判断もできそうになく、ここまできて途中で座り込んでしまいました。休み休みいけばなんとか、という感じです。あとちょっとなのに、苦しい。おならが出ればいいのに、出ない。
 別荘地にて長いこと苦しみ抜いてようやく八ヶ岳山荘に到着致しました。とりあえずうつ伏せになって腰あげてストレッチです。う〜んでも全然解消されない。。。これではご飯を食べるのもままならない。どうしたら、と思いついたのがコーラです。そう、疲れた時も、苦しい時も、やはり下山後はコーラなわけで。幸い美濃戸口ですから自販機は万全。ガスにはガスで対抗です。つまるところ、炭酸のゲップを上からでなく下から出せばいいのだ。

 ということで早速コーラを買ってきて
 一気飲み致しました
 もちろん、疲れた体も癒してくれます
 なんと一気に解消されたのでありました

 マナー上、音は出しておりません
 それで許されるのかは

 知らない

TOP

Past Articles

※過去の記事は4回まで掲載。それ以上は順次削除します。

TOP