Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート82
06 Jul 2021更新

NHK-BSプレミアム・にっぽん百名山2021スペシャル放送「鳥海山」


 またまたレポートの間隔が空いてしまい、大変に申し訳ない。というのも先日鳥海山ロケから帰ってきてからというもの、その撮ったものをいろいろと処理したりなんなりと忙しく、というかどうも感覚的に映像を処理したりするものだから言語の作業がなかなか捗らないという、感じでした。つまり右脳ばっかり使っていたために言葉が喋れなくなってしまい、ずっとデスクワークで座りっぱなしの影響で海馬とをつなぐコネクタも抜けて記憶への接続もままならず、まあもともと海馬も80GBしかなかったりするわけだが。。。簡単に言うと使うとこが違うので全然動かなかったわけです。そろそろ私もM1チップに変えたほうがいいのかもしれない。そういうわけで色付け作業から補正作業、編集なども少しと色々と仕事がございました。
 編集、、、は一番の肝だったりしますがあくまでも番組がメインですので自分の希望通りの編集がなされるわけでもなく、とは言ってもできる限り意思は込めたいから一応時間をかけて作ったりするのですが、、、反映されるかというとなかなか難しいですね。本当は自分に明確なビジョンがあるので自分の思い通りにしたいところですが、結局は「私だけの」場でもないわけですからさすがにいくらかは引き下がらないといけないところがございます。この辺の気持ちの処理が難しいのですがそれは気持ちが疲れるだけであって、実際大変なのは肉体的に疲れる補正作業でしょうか。
 山の上だと風も強かったりしますから望遠レンズで撮影したものなんか映像が結構ブレてたりするわけです。写真だったらワンカット、ハイスピードで撮ればブレないけども。そして今回は一応作品であって、ただの記録映像ではないですからあまりブレとかはよろしくないわけです。記録の臨場感よりも表現したい絵作りが必要なわけです。なのでそういうブレカットの補正をあとからするんですが、映像撮影は番組では60fps、つまり1秒間に60コマで撮影しており、例えば20秒撮影したものは1200コマあるわけで、、、、1200コマ分1コマ1コマ丁寧にブレを手直ししていくわけです。もちろんアプリで自動スタビライズという機能もあるんですが、これがうまくいく時といかない時があってですね、場合によってはバカ正直な手直しが一番綺麗にいったりします。なのでバカ正直に作業するんですが、、、結構廃人になります(笑)。個人的にはこういう細かい事務作業は嫌いじゃないので進むほうなのですが、それが1カットだけならまあ、、、でも何カットかあるとさすがに。。。挙げ句の果てにその直したカットはあえて3倍速とかで使用したりもしますから、放送ではたった4秒とか5秒。そのために一体どれだけの命が奪われたことか。。。と、そんなことばかりやっておりましたのでレポートの方は放置状態になってしまい、、、大変申し訳ございません。
 今回放送の番組で見ていただきたい一番のものはやはり「色」でしょうか。こちらももちろん私が手掛けております。写真家なわけですからもちろん撮るだけでは納得がいかないので、そういう色管理も自分でやらないと気が済まないタチでして、仕事が増えて迷惑と言われればそれまでなんでしょうけど、やはり譲れない部分であります。実際一般的にテレビ番組というのは普通にビデオで撮ってちょっと補正して流すだけ、なのであまり色が良くなかったりします。なので映画のようにイメージの色をしっかりと出して世界観を作り込むこともやらないと、まあ言ってみれば写真家が映像を撮る意味もなくなっちゃうだろ、というところです。ただ問題はいつものように、皆さんの見るモニター次第で最終的に色はバラバラになっちゃいますから、、、どこまで再現出来るのか、もしかして意味ない?とまでは言わないけど、しっかりとお届けできるのかどうかやや疑問だったりします。なのでこれからは視聴者のみなさまもしっかりとカラーキャリブレーションをしていただいて、しっかりと基準の色が出るモニターやらテレビを用意していただけるといいのですが、ってそんな無茶な。さらにキャリブレーションしたとしても、テレビ放送だと電波の問題で一体どこまで削られずに届くものなのか、これまた微妙なところがあります。YouTubeだと自分の作成した本データとアップロード後のもの、キャリブレーションしたモニターで見るとほぼ一致しているのですが、どうなんでしょうね。どうなんでしょうね、ってものに心血を注ぐ私もどうなんでしょうね。
 そんなわけで7月10日土曜日午後7時半から放送の「にっぽん百名山スペシャル」に出ることもあり、今回はちょっと趣を変えてその番宣レポートでございます。まだ発表していないもののレポートというのは今までにないケースなのですが、レポートといいつつ撮影現場レポートではございません。現場レポートは番組の方を見ていただけましたら。事前準備といいましょうか、色々と写真と映像のことを書き綴らせてもらい、そんでもって番組を見ていただけたらと思います。
 先月のエキシビジョンで今回のロケ、鳥海山の写真を掲載しましたが、あくまで動画撮影ロケというのをわかっていただきたくて映像からの切り出し画像で組ませていただきました。その「写真」(止まっている画像は写真というくくり、という意味で)を見て、とくにトップの写真で「おや?」と思った方もいるのではと思います。「さっすが西田さん、色がとってもキレイ!」と素直に思った方はただの信者です(笑)。高価な壷やサプリを買わされないよう注意してください。「何となく、うまくは言えないんだけど、キレイなんだけどなんか違うような。。。でもまあキレイ。」くらいに思っていただくのが普通といったところでしょうか。「うわ、こいつムービーカメラで撮ってちゃんとした色出せなくなっちゃってるよ、もうダメだね」まで行っちゃう方はちょっと判断が早いのでもう少し考察したほうがよいかと。。。つまるところ、あれは「写真作品」としては私も良い色だと思っておりませんのです。
 では「色」とはどうしたらよいのか。色によって表現したいものがあり、意図があったりします。ただキレイ、自然に、現物に忠実な色が必ずしも「良い色」ではなかったりします。ことに「表現」という意味ではそうなりますし、写真と映像という違った用途では当然出すべき色というのが違ってきます。もちろん好みというのがありますから写真では、映像では絶対にこの色の出し方、みたいなものはないのですが、とりあえずトップの画像は私が普段撮影して出している「写真の色」もしくは「写真作品として見せたい色」ではありません。
 まずひとつ大きな違いとして明暗の「コントラスト」が挙げられます。写真と映像の大きな違いは当然のことながら鑑賞している間の「時間」、「尺」です。写真はずっと止まっており、絵であり、そこから動き出すことはありません。一瞬の場面とはよく言いますが、渓谷や星空で長時間露光した写真となると一瞬ではありませんから、どちらかというと一瞬とか時を止めた感覚が感じられる要素として大きな比重があるのは写っている対象よりかは「絵」というその形態かと思います。一方映像だととにかく鑑賞している分の尺というものが生まれます。写真ではある程度光をコントロールしてコントラストをつけてあげないと「何を見て欲しいか、どこを見て欲しいか」というのが生まれなかったりします。シャドウを潰してハイライトに視線を集めて、見せたいものに視線を寄せているわけです。写真はずっと止まっておりますが鑑賞時間は無限ですので、その間でもその間でも「何を見せたいか」を外してしまうと鑑賞者はどうしていいのかわからなくなりやすいと思います。一方映像では尺が生まれて動いているので、鑑賞者としては見ている間に視点が決められすぎると苦しくなる部分があったりします。普通に風景を生で見ているときに、ずっと一箇所だけ見ないだろうし、色々視点を動かすかと思います。となると全ての箇所でいくらか見やすい露出にしてあげないと逆に不自然になってしまいます。ですから一般的には映像のほうがコントラストは浅くするほうが現物を見ている感じになるかと思います。写真だとコントラストが浅すぎたりすると絵が止まっているからか不思議と現物に見えてこない感じになります。
 もちろん、上記のことは一端の話であって、写真でも「HDR写真」のようにもはや逸脱した表現方法もあるから絶対ルールとかではないです。わかりやすく言いたいだけで、映像だと一般的な写真のようなハイコントラストだと視点が固定化されすぎて尺が持たないところがあるのかなと思う感じです。映像だって尺の時間とか場合によってはハイコントラストが使える部分があるとも思いますけど、限定的というところでしょうか。
 話は逸れますが「HDR写真」というのはどんなものかググればいくらでも出てきますが、個人的には私は写真では使わない手法です。映像ではコントラストを浅くするということはHDRの部類なんでしょうが「ハードHDR」までいくともはや何だかわかりません。あくまでも写っているものをしっかりと伝えたいわけですから、やはり節度というものがあるかと。しかしながら「HDR写真」が嫌い、とか邪道、とかまで言うかというとそんなことはないかと思います。それはそれで表現方法として生まれてきたものだと思いますから、無理にその窓を狭くする必要はないでしょう。使い場所によっては人の目を惹きつけられるものには変わりありませんから、その世界はその世界で広げていくことが大事です。ただ私は世代的にも「ベルビア」で育ってきてしまっているので、どうしても「写真はハイコントラスト」が好きなんでしょう。どちらにせよ何にせよ、写真でも映像でも、作者が「何を言いたいか」。これが何より一番大事です。
 さて「色」なのですが、これは映画とかをよく見る方はわかると思うのですが、色はただ単に写っているものそのものの色だけでなくムービーの世界観も作り出します。現物のものを忠実な色で出すことも非常に大事ですが、映像は1つのクリップだけでは仕上がらずいくつものクリップを編集して初めてムービー作品になりますからどうしてもストーリーというものがいくらかは生まれます。ですのでそのストーリーの世界観を作り出すためにもいくらか脚色が必要だと思っております。もちろん写真でも同じことではありますが、私のよく撮っている「山岳写真」だとあまり独特の世界観を出しすぎても嫌われちゃうでしょうね。なぜなら多くの人にとって「私の世界観」よりも「山そのもの」をみたいと思う人が多いですから。というか私も写真では「山そのもの」を撮って伝えたいと思っておりますし。しかし映像では「山そのもの」を「そのまま」伝えてもまあ成り立ちはしますが、いくつかのクリップを並べたときには見ている間に飽きないようにストーリー的なものも必要となってきますから、やはり何らかのアクションは必要になると思っております。とは言ってもよくある最近のアメドラみたいに「ずいぶん緑色強くしたなぁ」とか「全体的にブルーだな」までいくとあれはあれでストーリーの割合が多いから成せる技であって、ノンフィクションのネイチャームービー、山の自然をそのまま見せたい場面でのやりすぎはよくないです。
 と、まあここまで言った割に大きな問題があるのが「結局その色をそのままお届けできるのか」ということです。今までYouTube上や展示モニターではそういうのはクリアできておりましたが、それだって結局みなさんそれぞれ見ているモニターでかなり違います。「これが私の決めた色!」と私のキャリブレーションしたモニターではちゃんと決めてはおりますが、YouTubeだってみなさんどんなモニターで見るかわからないし、展示モニターだって安物テレビを使われるとどうやっても色は再現できません。それはもう本当にどうしようもない。PCやテレビってみなさん普通に見てこれが普通だと思っているかと思いますが、実はかな〜りどぎつい色が出ていたりするんですよ。。。ちゃんと設定したモニターに比べると。なので実際は色に文句を言われても、まずご自分のモニターを疑ってくださいとしか言えなかったり。
 でもそんなところでもありがたいのが、ここ数年で一気にみなさまが手にするようになったスマホ。もちろんスマホも色々なので一緒のことなのですが、機種によっては色を設定できたりとか、iPhoneだとそのままでもそこそこ綺麗というのがあるので、PCモニターやテレビよりかはバラツキが少ないかなと思っております。確実に同じ色ではないですが、まあこのくらいなら範疇かというそこそこの色が出ております。

用件を聞こうか・・・・・

 ということで散々長い話をしてきてしまいましたが、多分これ興味ない人には面白くないですよね。。。すみません。とりあえずわかっていただきたいのは作品の構造上の違いのために「写真と映像の色の出し方、魅せ方は違う」というところです。そこをちょっと皆さんでも考えていただけると、写真撮ったり、映像撮ったりというのがまた少し面白くなってきたりというのがあるかもしれません。
 今回も番組ではドローンでの撮影もしておりますが、操縦はドローン大縦走でもお世話になっております新垣さんにお願いしております。今では私も自身で飛ばして撮影しておりますが、色々と局の制約もあって番組では自分で飛ばしておりません。今までぼちぼち「自分で飛ばしてないのに何なのコイツ。自分が撮ったみたいになって。」と言われることもあり、ウ〜んそういう問題ではないのだけど、、、と思うわけですが、ともかく色々決まりもあって飛ばせるようになっても飛ばしておりません。というか「自分で飛ばしてない」とか言い出すと映画監督も全部自分でカメラ回さなきゃいけないんかい?と聞きたくなってしまいますが、そういう感想を言う方っておそらく監督業や撮影監督とか知らないんだと思います。。。映画だとカメラマンはカメラを回して動かすだけで、絵は撮影監督が監修し、ピント合わせだけをやるピントマンなるものもいる程です。なんならカメラマンに「自分でピント合わせてないのに自分が撮ったみたいになって。」と言ってもらいたいところです。分業して、かつ大事なのは最後にどんな作品として仕上げるかであって、それが「ドローンを操縦している人がスゴイんであって、、、」とかいう話になると正直訳わかりません。
 ですがですが、ですがですよ。ドローンで怖いのはやはり万が一の事故。もし事故ったら某局からは出禁レベルの処置を食らいます。そんなん、飛ばせても飛ばしたくないですわ。怖くておしっこ漏れちゃう。そんな中でも、このシチュエーションで飛ばすと事故りそうで怖いなぁ、とか、こういう動きで撮影したいけど事故るでしょ、みたいなときでも難なく飛ばして生還できる新垣さんはやはりさすがで、まあやはり操縦は操縦が上手い人に任せるのが一番です。新垣さんは絵作りもわかる方なので意思疎通もしやすく、これが結構面白いところなのですが、操縦ができても絵作りがわからない人がいたりするんです。そうするとこちらも細かすぎるほど細かい指示を出さなくてはならず、動くスピードから何から、全部一度か二度テストテイクしないとダメで「では本番」でもなかなかうまくいかなかったりします。新垣さんだと飛ばしてカメラ回しながら「空の割合はこのくらいで〜、山頂はこの位置にしてください〜、この角度で回って〜、そのまま〜、そのまま〜、そろそろゆっくり止まって〜、ハイ、OKです。ありがとうございます。」とテストテイク一発で終わったりします。なのでこちらも予定通り、思惑通りの絵が撮れたね〜くらいの感覚で、よく「もうちょっと、、、スゴイのが撮れたリアクションが欲しいんですが。。。」と言われたり。しかしよく漏らさないなぁ。。。と毎度思っております。
 それから、双六小屋のプロモーションビデオを制作させていただき、YouTubeにアップ致しました。とりあえず昨年秋に撮影した小屋の紹介のものを3つ、です。どうせだから夏も作りたいよね〜と思うところですがどうなんでしょうか。夏は夏で秋ほど天気が落ち着かなかったりしますから、時間がかかりそうではあります。。。あとは黒部五郎がいないので、これは欲しいところではあります。色とかコントラストの話は各ムービーの岳彦さんの魅力まとめインタビューシーンがわかりやすいかもしれません。何となく映画っぽいというか。こちらのムービーでは私がドローンを飛ばして、、、というか全部総合して作っておりますので、文句言わないでね。構成がつまらない!と言われたらどうしようもないですが、そもそも小屋の紹介ムービーなので。。。風景だけをまとめたムービーも作ろうかと思案中ではありますが、どうなることやら。再生回数とかはさすがに小屋の、つまり宿のPRムービーだからそんなにいかないと思っておりますが、多くの人に見ていただけたらありがたいです。どうぞよろしくお願い致します。たぶん動画内容としては「ガチ本気!岳彦さん鏡平のかき氷早喰い!世界記録!ポロリもあるよ」とかそういうくだらない企画だったら伸びたりするんだろうなぁ。。。哀しい。
 ともかく、10日の放送ぜひご視聴ください。本当はロケ部分でもう少し知的な鳥海山の自然について話していたのですが、「楽しい登山」に集約されてしまった感はあります。それはそれで哀しいですが、真面目な地質とか地形とか歴史とか、そういう話では退屈になってテレビ向きではないところもあるのかと思います。そういうのも大事だけど「登山=楽しい」が伝わらなかったら、それはそれで意味のないものになってしまいますし、「登山=楽しい」が多くの人が共感できるものでもあると思います。本当は大潟溜池は東鳥海馬蹄形カルデラが良くわかる場所で、この付近もその崩落跡で形成された場所だとか、奈曽の白滝は奈曽川にかかっておりこれをそのまま遡ると奈曽渓谷、つまり鳥海山から流れてきており、とかまあいろいろあったのですが、「疲れます」「難しいです」とか言われたらそれまでのような気がします。言うならばもしかして、今回のレポートのような。。。ドタバタ撮影記録のほうが楽しく読めて、あんまり頭使いたくないんですよ、と言われそうな。。。

 番組コーナーの最後のショートフィルム
 本当は7分弱くらいあったのですが
 これも長いからと4分にされてしまいました。

 でもこれも同じく、たしかに長いかも。
 でも短くすると伝わらないような。。。
 難しいなぁ。。。
 私は7分Verのほうが良いような気がするのだが、、、
 私のコーナーですよ?
 おや?誰か来たy

 ズキューン・・・
 ビシッ!

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