Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 76
08 Dec 2020更新

2016年発行JTBパブリッシング「すぐそばにある!関東の絶景」・掲載写真「梅ヶ瀬渓谷」


 前回のレポートでは「ここ最近とはちょっと違って寒い」なんて書いておりましたが、今年も順調に雪が少ないですね。半月前は今年は例年並みの冬が来るのかな、と思いきやいつも通りで、というか今のところはいつもよりもさらに雪が少ない感じで、結構歴代最低なんじゃないかなという積雪量なんでは。まあ今のところなんでここからしっかり降ってくれるといいのですが、どうなんでしょうね。毎年こうだと一体何が例年並みなのか、もはや基準が変わってしまいそうな。
 もう20年くらい前のことになりますが、12月半ばに槍ヶ岳を目指したものの雪が多すぎて進まず、天候にも恵まれなかったので中崎尾根でやめたことがありました。ここ最近だと槍沢とか飛騨沢でサクッと登れてしまいそうな感じの年が多いので、本当にだいぶ変わりました。あのときはほぼ新穂高からワカン着けてたから、ホントよくやってましたよね。そんでもって雪というのもなかなか簡単ではなく、積もればいいというものでもないので撮影を考えると困ったものです。ただ雪山、というのであれば3月くらいが間違いなく積もっているかと思いますがただ白ければいいわけでもなく、3月になれば太陽の傾きも変わり、雪がテカってきたりします。ちゃんと季節感というものがでないとやはり絵になりませんから、その時期その時期の「雪山」になってくれないとダメなんですね。でも、もうそんな環境でもなくなってきてるのかな。。。
 ここ最近は相変わらず映像編集が続いておりますが、ずっとデスクで固まってるとおかしくなるようで、、、、右の僧帽筋下部と大円筋あたりが痛くて痛くて。はじめはひと晩寝れば治るだろうと中学生みたいなこと考えていたのですが、、、もうずいぶん長く痛みが続いています。おそらく犯人はタイムラプスの画像処理だと思うのですが、まあ何百コマという画像を一枚ずつ色々したりして、その間ずっと集中して体の形がキマッてますから、所謂マウスのカチカチの連続疲労かと思っております。なんだレポート書けてるじゃないかと言われそうですが、左ナナメに全身を傾けて、マウスを右腕伸ばして後ろの離れたところに置いて書いております。。。ちなみに走ったり、さらにはウエイトトレしても全然大丈夫なのですが、いざデスクにまっすぐ座って定位置でマウスに右手を添えると、、、激痛です(笑)。とりあえず定期的に筋膜ローラーで軽くマッサージしてからヨシッって感じで続けてますが、ヨシッじゃねーよ。
 映像の方は今のところ順調かちょっと遅れている感じで(遅れてるんじゃねーか)、谷川岳以外のものも作成しております。なんとか年明けて、、、という頃にはその「以外」の方を先にお披露目できるかな、と思っております。今年はナントカ大縦走はやりませんでしたので、そちらでお楽しみいただければ。でもまだまだ先は長いもので、ようやく編集のほうが固まったところでして、これからカラーリング、音響といろいろ作業が待っております。そんなわけでとりあえず早く背中の痛みがなくなって欲しいのですが、どうなることやら。これならラッセルしてた方が全然楽ですよ。
 さて、今回の写真ですが、ちょっと緩い感じのところで千葉県の小さな渓谷です。しかも渓谷という程の渓谷でもありませんが、いやいや、水の流れが小さいからと言って渓谷でないなんて言ってはいけません。元々千葉県民ということもありますから県民贔屓なのかもしれませんが、たいした山もない県ではございますが房総方面は案外自然に溢れております。昔は結構ぶらりと電車で回ってみたり、自転車で遠くまで行ってみたりとよく触れていた房総、まあしかしその他の県民からしてみたらおそらく日本では一番の魔境なのでは、とも思います。地理的に言って一体何があるのか、どんな土地なのかが一番知られていないような気がするわけです。海沿いはまだしも、、、内地は多くの方にとって謎でしょう。その辺りはさすがに元県民、養老渓谷などは何回も行ったことがありますが、いやでも県民だからって行かないような気もしますし。。。かく言う私も房総にはまだ解明できていない場所がありますので、山らしい山はないけれどまだまだ足を運ばねば、と思っております。と言っても気軽にのんびり散歩したいだけですね。やっぱりデカイ山ないし!
 撮影は2015年12月7日、千葉だから、房総だからと侮るなかれ、実はこのくらいの時期に紅葉が結構綺麗なんです。年が明けるとスイセンが見頃になったりして年がら年中花が咲くような房総ですが、案外しっかりとした秋もあるのですよ。最近は9月になかなか冷え込まないから高いお山の紅葉はなんだか色の出があまりよくないような気もするのですが、房総の紅葉の見頃は12月というさすがに冷え込む時期だからなのかなかなかの色合いを見せます。まあそんなこんなで本当は紅葉の写真を載せたかったのですが、紅葉の扱いってのもなかなか難しいもので、結局使用した写真は「渓谷」という感じのものになりました。
 秋の紅葉というのは美しい反面、その場所の特性を失わせるほどの力を持っていたりします。この写真を見て、この場所だから綺麗なのか、紅葉してるから綺麗に見えるのか、なかなか判断が難しいという事象が起きたりします。ですから私は山の写真でもなるだけその場所の特性を活かそうとすると結構夏とか冬とかが多めで、秋を削ったりします。秋は綺麗なのは間違いないのですが、これは「山」が綺麗なのか、「秋の紅葉」が綺麗なのか、その比重次第でちゃんと扱わないと伝えたいことや考えていることがなくなってしまうわけです。紅葉が綺麗というだけならその山や場所じゃなくてもよくなっちゃうというわけで、その場所にスポットを当てたい場合は秋を避けた方が無難ではあります。まあ秋の紅葉であっても、それでも「その山、その場所」の特性が出るっていう場所は、相当なもんなんでしょう。逆に言うとなかなか「この山、この場所」の特性が出しにくい場合は、、、「紅葉」に逃げる手段があるということでもあったりする。
 早朝5時半頃に家を出まして千葉駅方面へ向かい、五井駅から小湊鉄道で養老渓谷へと参ります。家を出るときはまだ寒いし、暗いしでいつも通りなら「あ〜なんだか面倒だなぁ。。」と家を出たくない気持ちが10%くらいある冬ですが(布団から出られない、みたいなやつ)、いつもとは違う方面に進んでいるとそんな気持ちは出てきません。つまるところ新宿方面に向かうとなんだか通勤気分となるわけですが、普段あまりにも行かない方向だと旅行気分になるようです。五井駅でお得な往復乗車券を買い、のんびり電車旅でございます。
 養老渓谷駅周辺はみなさんどこへ向かうのかわかりませんが、結構混んでおりました。まだ8時すぎにも関わらず、活発な人たちでございます。梅ヶ瀬渓谷の方へと向かうと誰もいなくなりましたので、みなさん粟又の滝のほうだろうか。まあ梅ヶ瀬の方は風呂もないし、というか何もないし、結局一日こちら方面はほぼ人影はなかったわけですが。赤い鉄橋で養老川を越え、20分ほどで梅ヶ瀬渓谷の駐車場へと着きました。何というかこう、地層がよくわかる露頭の断崖がババンとのっけから出てきまして、まあ地質的にも規模的にも、いい意味で「房総」って感じがします。
 規模は小さいものですがこの梅ヶ瀬渓谷、地質地層好きの人には結構刺さるものがあるんではないかな。ただ単に水の流れだけで見ればまあ水は飲めるようなもんでもないし、流れはもうどこにでもありそうな細いし、、、なわけですが、この断崖はまさに水の流れが削った証拠でもあるわけです。地層を見ればその形成時期もわかるわけで、規模は小さくともまさに地球のロマンなわけです。なので今でこそチョロチョロ水流の寂れた谷ですが立派な渓谷ではあるわけで、そういう色々な視点で見ないと現代的で個人的で矮小な価値観だけで物事を測ってしまうことになります。いやでも流石に称名廊下とかグランドキャニオンとか持ち出されると困るわけだが。。。紅葉はぼちぼちという感じで、まあこんなもんだろうね、というところ。結果的には甘く見ていたわけですが。
 とにかく規模は置いといて、それなりに見どころがあったりします。でも一番は、日によってどうなんだかは知らないが人が少ないことだろうか。渓谷を歩き出して40分くらい歩いたちょうどルートの中頃が今回の写真の場所です。「せせらぎの階段」という名が付けられているようだが、ミニ千畳のナメみたいなもんだろうか。写真では広角レンズで低い目線で撮っているからちょっとはダイナミックさというのも出るわけだが、まあ実際の規模は小さい。でもなんとなくこの規模の小ささみたいなものが役立っているところもあったりして、嫌いではない。要は階段状とは言ってもその段差は非常に小さなもので、でもこの小ささが逆に繊細な雰囲気を作り出してくれるとも思う。なんでもそうだが大きいものって、その写真を見たときに心のなかでは「うおおおおおおおおおおおおおお」という心境になるのだが、ここではそういう類のものではなく、静かなか細い音のピアノ曲みたいなものが感じられるというか。やはり色々な種類の感情を作り出したい、とも思うわけで、いつもは大きいお山を撮っておりますがこういうのもたまにはいいものです。
 渓谷のどんつきに日高邸跡という三本のモミジの大木がきれいに並んで植えられている場所があるのですが、その手前だったかな、進行方向右手に大きな断崖が見えてきて、、、そこの紅葉が、もう「うおおおおおおおおお」という感じで染まっておりました。とくにモミジの赤の染まり方が尋常じゃない。ナナカマドの赤とか言ってるレベルじゃない。ここは房総だぞ?どうなってる!というぐらいの紅葉の見応えがありました。房総でこんな紅葉が楽しめるという意外感、12月だというのにという意外感もプラスされると、う〜んなんだか得した気分です。ちょっと進むとイチョウの落葉で黄色の絨毯となっているところもあったり、もうなんだかパラレルワールドでした。日高邸跡に寄ってからは尾根を登って上の道路へと出るのですが、そこの「もみじ谷」の紅葉も素晴らしく、う〜ん侮れないものです。日頃は「環境が厳しければ厳しいほど自然は美しい!山岳地帯の紅葉に敵うものなんてないだろ!」くらいに思っているわけですが、、、色々とハンデ補正も加えると完敗ですわ。。。(どんなハンデだよ)
 まあでも先ほどの話に振り返ってみると、これは「この場所が綺麗」なのではなく「紅葉が綺麗」なわけなんじゃないか?という疑問もあるわけですが、この梅ヶ瀬に至ってはそのバランス感が良いというか。規模の小ささのおかげなのか、紅葉がきれいだからといってその場所の特性まで抑えてしまうほど紅葉ばかりに目がいくわけでもないし、かといって紅葉してない他の季節だったらちょっと物足りないところもあったりと、まさに紅葉と場所が切り離せないような関係であるとも思うのである(だいぶハンデ補正)。

大人になるとわかる

 尾根を上がると長めの良い展望台があり、すっきりと晴れた青空の下、何もない房総の眺めを楽しみました。これといって目立つものは何もない。山だらけ、ではある。しかし大きい山は見当たらない。大自然、というような感じではないはずなのだが、どこまでも続くような低い山なみは不思議と広大な大地を思わせる。何だろうね。谷もあるし、山ではあるんだけど、何でもない感。でも気持ち良い。大きな山だからスゴい、というのはちょっと浅はかな考えで、色々と考えさせられるものがありました。
 展望台からはだらだらと駅まで2時間弱だったかな、ぼちぼち歩いて帰りました。晴れ渡っていた空もいつの間にか雲が多くなり、一気に寂しげな風景になりました。途中せっかくだから来た時と道を変え、一段上の高い道で駅へと向かいます。養老川を越えるところの橋からは朝方通った赤い橋がだいぶ下に見えていました。「行き」に通った道を「帰り」に遠くに見やる、となんだか寂しい気持ちになります。
 養老渓谷駅に戻り、電車が来るまで少し時間がありましたので駅前の足湯をちょっと覗きに。誰もおりませんでしたがどちらかというと足湯は苦手なのでとくに入る(というか足を入れる)わけでもなく、まあホント覗いただけ。足湯って何だかいまいちよくわからない存在なんですよね、私には。まあ私はよく歩き回っているというのもあるからなのか足ってたぶん結構汚れてるし、つまりかけ湯しないで風呂にはいるような感じだし、入ったあと足を拭く用のタオルとかがあるわけでもないし。。。皆さんはどうしているのだろう、というも入っている人を見て思ってしまいます。それとも私がまだ足湯の魅力がわかっていない子供なのだろうか。。。いやそりゃあ温泉に足をつける、というところだけなら気持ちいいのはわかります。でもそのほか諸々のことを考えると、う〜ん、靴下脱ぐの面倒臭い。
 やや小腹が空きましたので、駅前のちょっと田舎感のあるコンビニで菓子パンとたけのこの里を買いました。足湯はまあどうでもいいですけど、たけのこの里につきましては断然「たけのこ」派です。どう考えてもたけのこの里のほうがおいしい。

 そんなことを考えていたのは5年前。
 まだ子供でした。。。

 最近はすっかり「きのこの山」派です。
 チョコが食べたいのです。
 たけのこ、あれはビスケットです。
 しかし、そのすべてを満たしてくれるのは

 アルフォートです。

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