Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 69
18 Jul 2020更新

2013年発行「ヤマケイアルペンガイド14」掲載写真「八海山」


 前回のレポートと同じ始まり方になってしまいますが、とにかく晴れないですねぇ。大きな被害が出ているところに比べればこちらの撮影が進まない、なんていうのはどうでもいい些細なことなのですが、とはいえ仕事が仕上がるのか不安になってまいります。今年のこの時期にドローン大縦走なんてやっていたら、出発のシーンから何も進んでいなそうで今頃どこかの山小屋で悶死してそうです。まあしかし今やっている仕事も同じく締め切りはありますので、悠長に構えてはいられません。なんだかこのまま梅雨明けないんじゃないかな。。。と思ってしまいます。
 2014年でしたか、8月がまるまるひと月天候不順という年がありまして、あのときは本当にどうにもならなかった。晴れないから自宅待機、と天気予報ばかり見ていたらそのままごっそりひと月経ってしまったという厳しい夏。あんな風にはならないといいな、とは思っておりますが、ああいう年もあったということは、、、怖いなぁ。ということで、結局天候によりステイホームになっちゃってるわけですよ。
 それと衝撃の事実が。このコロナ禍おかげで3ヶ月ほどウェイトトレーニングをしていなかったのですが、ちょっとやってないとやっぱり結構落ちてました。まあ体重が2キロほど落ちていましたから筋肉も落ちてるというのはわかっていたのですが、以前ちゃんと上げられていたものが上がらなくてちょっとショック。ですが短距離のタイムは速くなっているものですから、実はウェイトってそこまで必要じゃないのかも。。。くらいの感もあってこれは酷いほどのショックではないですけど。現在焦っておりますのは、その短距離が速くなった!というやつでして。たしかに速くなった。おそらく100m11秒3、4くらいは出るでしょう。200mも22秒台は出せる。走り方がようやくわかった感じがありまして、ちゃんとスピードに乗せられるようになったわけです。しかし!久しぶりにトラックでスパイクを履いて中距離を走ってみたら、、、、た、短距離の走り方しかできなくなっていた。。。400mまでは持ちそうですけど、そこからの足運びがあれ?という感じで。。。一応1000〜1200mとかも練習していたはずだったんですが、フォームはかなりダイナミックになっているようで、どうにも持ちません。
 これ、おそらく若かったら、スピードの底上げができてそれを中距離に活かせる!と思えるのでしょうが、私の場合は底上げっていうんじゃなくて今まで中距離に使っていた分を短距離に組み替えただけ、って感じがするんですね。つまりここから中距離に戻したら哀しいことにまた短距離は遅くなる、と。まあ当然100mのフォームで800m走れるとは思いませんが、100m練習が多かったばかりに筋肉の使い方なんかも瞬発系が染み付いてしまいなんだかよくわからなくなっています。いっそのこと100m200mに全振りしてみるのも一興でございますが、そうするとこの歳ではもう800mには戻れなそうでちょっと怖いかな。結局はそういう中途半端さがいけないんでしょうね。よく考えたら800mってそもそも中途半端ですね。このレポートも、写真家のレポートとは思えないほど中途半端だがいいんだろうか。まあでも写真家が写真のことしか語らないってつまらないし、世界も広がらない。そう、私は800m(中途半端)なんです。
 さて、今回も中途半端に行きましょう。写真はお初になります上越の名峰・八海山です。麓から見てもいい山だし、越後駒や中ノ岳から見ても絵になる山。冬は豪雪地帯で真っ白で美しいし、もちろん登ってもいい山。素晴らしいんですが、ですが上越組。夏はとにかく暑くてどうしようもない奴らの一峰でもあります。夏なのにテルモスをしっかり持って、冷えたスポーツドリンクなどをたっぷり持参していかないと確実に頭がやられますので注意が必要です。歩行の危険よりも熱中症対策、爽やかなはずの山なのによくわからないところが魅力です。撮影は2012年7月16日、まだ梅雨明けはしていなかったと思いますが、晴れ間を突いて出掛けました。
 前日の夜に越後湯沢入りして、駅近くの宿に素泊まり。翌日は始発の電車で六日町へと向かいます。六日町の駅にも宿はあるんですが、夜遅くの到着だと新幹線のみの越後湯沢のほうがギリギリまで天気予報が見られるのでそうしたんだっけかな、と思います。ともかく16日は予報通り朝から晴れておりましたが一応梅雨時、スカッという晴れではない感じだったのでちょっと怖かったです。というのもこの八海山の撮影には晴れろ晴れろと願っても晴れなくて結構何度も通っていたわけで、いい加減そろそろ終わりにしないとと腹を括っていたところでした。腹を括ったところで相手が天気なのでどうにもならないわけですが。
 六日町駅からはタクシーで芝原の駐車場まで、このときは急登の屏風道から登り、稜線歩きのあと新開道で下る周回コースで歩きました。岩場の急登続きのため下山は禁止されている屏風道、標高差もあってなかなか登りごたえがある道です。しかし夏なら朝早くから登らないと暑さできついだろうなぁ。急登とか鎖場とかよりも何よりも、やはり敵は暑さでございます。一般的にはロープウェイから往復で歩く人が多い山だと思いますが、北側の登山道も好きだし、中ノ岳へも繋げられるし、ほんといい山なんです。でもとにかく夏はどの道もどうしようもなく暑い。ルートの危険度はどうせメインの稜線も鎖場だし、どこがどうというより「水がないと危険」です。
 タクシーで駐車場に到着しての歩き出しが7時20分ごろ、八海山が急な壁になっているためおかげさまで朝からガツンという直射日光ではないのが救いです。ハイスピードで歩きましたが屏風道は登る人がまばらでかなり先に一人見つけたくらいでした。まばらって言ってももしかしたら相当早い時間から歩いている人もいるかもしれないので「この時間では」というくらいですが。北アルプスとかに比べると標高の低い上越の山ですが、道は結構微妙なところが多いので登山者は玄人の方も多いです。時折私も午前2時とか3時とかの早い時間に歩き始めて朝日を撮りに行くことがあるのですが、そんなときでも別に朝日目的でないのに結構歩いている人がいたりする。真っ暗の中で先の登山者を追い越そうとしてのすれ違いで「早いね、なんでこんな時間から歩いてるの?」と声を掛けられたことがあるのですが、「いや〜、朝日の写真が撮りたくて。。。」なんて答えておりましたが、内心「あんたも十分早いだろ」と思っておりました。
 登山道は暗い感じの樹林から始まりますが、五合目くらいからはだいぶ視界の開けた急な尾根歩き。振り返ると六日町とか浦佐の風景が広がって心地よい感じ。晩夏あたりからは田んぼの稲穂が黄色くなるのでそのときはもっといい感じ。ぱっと見で目立つ山が少ないかもしれませんが、南側の巻機山がなかなか堂々とした面構えで格好いいです。七合目あたりからはようやく稜線が近くなってきますので、八海山の絵面がよくなってきます。紅葉の時期に午後の日差しでここから撮ったら綺麗だろうなぁ、と思ってしげしげと見ておりましたがさの撮影は未だ実現できておらず。近いうちに行きたいなぁと思います。
 このときはカメラしか持っていないので10時前には稜線九合目に到着。あれだけ偉そうに「冷たい飲み物を持て!」と言っていたにもかかわらず、うっかりテルモス分をしっかり飲み干してしまった。。。まだあと1本ペットボトルのポカリがあるが、ほどよくぬるい。一応稜線の小屋と薬師岳の間には水場があるのだが、そこは稜線の水場、しっかりと出ているところを見たことがない。と言いつつ補給できるかと思っちゃったりして見に行ってみると当然のごとく枯れている。とりあえず小屋でコーラを購入、一気飲みしていざ稜線へ。もっと余裕もっておくんでしたといつも後から思います。
 ということで八海山の八ツ峰を越えていきます。天気は上々、まだ夏本番ではこともあって若干爽やかさもあり、もう少し持ちこたえそうな気がします。登っては降りて、怪しげな鎖を掴みながら登っては降りてを繰り返しますが、歩いてる分には楽しい場所。越後駒方面の眺めもよくて、高度感もあって、しかし一般ルートかって言われると微妙なところがあるような。ガイドで使う扉にはここからの絵にしようって場所は決めてありますので、とりあえずそこへ向かって黙々と歩きます。他の景色としては越後駒方面もいいけど、稜線左手東側の高倉沢ががっぽりと開いて見えるところが好きです。残雪も多くて緑も鮮やかで。高倉沢の流れ落ちる水無川側から見た八海山も素敵な絵なんですよね。やっぱりこのポコポコボコボコの稜線がトレードマークと言いますか、特徴となって、西面も東面も絵になる山です。
 撮影目的の6つ目のピーク、摩利支岳に到着。ここから振り返る稜線、白河岳方面が今回の写真です。個人的にはここの絵がタイトル的な感じ一番しっくりきます。すでに過去に撮っている雲が湧いているバージョンも雰囲気あっていいのですが、やっぱりすっきりと晴れると違います。麓ののどかな田園風景もこの八海山を表す重要な要素だし、しかし!何よりも!ここは新潟県!夏なのにたまたますっきりと言ったのか珍しく佐渡が見えております。右奥のスーッとのびる山なみはこれ、佐渡であります。いやーよかったよかった、これにて八海山を収めることができそうで、とにかく何よりでした。しかし本当はここで粘って夕方の写真とかの作品的なものを撮りたいのですが、この時のスケジュール的に転戦転戦しなくてはいけなかったので泣く泣くお預けです。このあと下る新開道から午後の日差しの八海山で溜飲を下げられればと思いますが、夏だし、どうせガスるだろう。

10%の才能と20%の努力と(以下略

 新開道のカッパン倉からも、屏風道七合目同様八海山の絵面がいい。いいのはわかっているのだが、案の定ガスに巻かれ始めてしまった。先ほどの稜線から1時間半くらいしか経ってないから、実は結構危なかったのね。すっきり佐渡まで見えてなんて喜んでいたけど、実はちょっと遅かったらガスの中かと思うと怖いものがあります。ほんと運頼みの仕事だなぁ。ゲーテだったかシラーだったかの歴史的偉人が言ったプロの条件「10%の才能と20%の努力、30%の臆病さ、、、、残る40%は運だろうな」という言葉はまさにその通りで、聞いた当初は40%も運かよ、なんて思いましたがなかなか絶妙な数字です。
 ガスってしまったのであとは下るだけ。ブナのきれいな樹林帯を通り、二合目の駐車場に戻ってきましたのは午後2時ごろ。振り返ると八海山はすっかりガスの中、、、ではなくて結構晴れてきてるやないか!ああ、これなら少しでもカッパン倉にいた方がよかったかもしれない、と後悔しても意味はなさず、運に振り回されてしまいました。いやだから20%の努力が足らなかったんだって。40%の運頼みだけではダメなわけです。
 下山中の頭の中では、駐車場からちょっと歩いたところのバス停から帰ろうと考えておりましたが、晴れてきているならそれなりに何かやりたいと思うもの。ガイドブックのために来ているわけだし、そういえば麓のロープウェイ駅の写真で晴れたものや八海山が一緒に写っているものがなかったと思い、駐車場から3kmほど歩いて向かいました。ロープウェイ駅まではなかなかの上り坂で、かつ結構な日差し。暑い、暑いと言い続け、汗だくでなんとか到着。無事晴れたロープウェイ駅の写真も撮ることができました。これにてこのときのガイドブック用の八海山の撮影は終わり、お疲れ様でした。

 佐渡が見えて、本当に恵まれた日でした。
 しかし、精神的には一番きつかったのは
 最後のアスファルト路上歩き。

 晴れたロープウェイ駅の写真は
 見事使用されることはなかった。

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