Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート102
14 May 2023更新

2018年5月15日 撮影・「塔ノ岳」


 ということでNews欄にも書かせていただましたが5月18日放送のNHKBSにっぽん百名山「春のくじゅう山」、ぜひご視聴お願い致します。くじゅうと言うとミヤマキリシマ一辺倒のところがございますが、目ざとく探すと微妙な春の時期も魅力がたくさんありまして非常に参考になるかと思います。いやむしろこの時期がもしかしたら一番色々なものが見られるかもしれない、というくらい見所がありますのでお楽しみに。ミヤマキリシマの時期は確かにベストシーズンではありますが、山中ミヤマキリシマだらけでそれ以外に何がある?と言われるとそればかり、というところがあります。もちろん十分綺麗なんですが、やはりどの山のしっかりと四季の景色を見てナンボなわけであります。今回はその中でも一番微妙っぽい春なわけですがもしかしたら一番良い季節かもしれない、、、と思うのは何度も行っているからでしょうか。まあともかく見てくださいまし。
 そんなわけで番組内では3泊4日の行程と言いつつもロケはひと月弱もくじゅうへ行っておりましたわけで(実際毎日晴れれば3泊4日なんだからね!)、ある意味一番大事な時期にトレーニングを積めなかったせいで今シーズンの陸上は厳しい感じであります。いつもひと月ほど山に入ったりすると100mで0.5秒、200mで1秒ほど落ちるのですが、今年はいつも一番自分が調子の良い春の時期にタイムが出ないので、、、もう今シーズンが終了してしまった感じです。スパイクで走ってなんとか11秒台が出るといったところだし、走りもめちゃくちゃでもうどうにもならない。200mに至っては23秒台すら出ない。ボジョレー的に言うと「豊潤ではないが甘さもなく、歴代の中ではやや味が落ちるもののどうせ日本に売りつけるのでどうでもよい」という感じであります。シューズでも11秒4とか出てたはずなんだが、このまま歳とって終わりそうで怖い。なんとか戻したいところですが、、、毎日眠い!
 さて今回の写真ですが、丹沢は塔ノ岳です。メインで撮りに行ったのは蛭ヶ岳やら丹沢山やらいわゆる「丹沢」の景色なので「塔ノ岳の写真」ではないのですが、撮った場所が塔ノ岳ということでお許しを。
 撮影は2018年5月15日、このときは夕方の西日狙いでゆっくりと自宅を出発致しました。メインの題材はツツジと丹沢の山なみですが、ツツジというのも年によって花付きにバラツキがあり、以前撮ろうと思ったものの日差しは良いのに全く花が咲いていなかったということがありまして、ちょっとしっかり撮っておこうと出かけたわけです。以前見たときの日差しはすごく良かったので時間帯はバッチリ、あとは花さえ咲いていればガッチリです。撮影ポイントも決まっているので完全に西日狙いということですが、せっかくなら、なら朝日でも撮っとけよとは思うのですが、頑張りすぎちゃいけない!と自分に甘いのでありました。ツツジは優しげな西日が似合うから、、、というのは言い訳でしょうか?
 なわけで大倉に着いたのはぴったしお昼という、今時の社長がそうなのかは知らないが社長出勤である。早速大倉に着くなりバス停の「どんぐりハウス」がなくなっており、のっけから寂しい思いをした覚えがありますが、実際ひどいことに私は利用した思い出がないのでなぜ寂しいのかもわからないですが、とりあえず人生折り返すと下り坂にあるものは何でも寂しく感じてしまいますものでこれはどうしようもない。山の景色はなかなか変わらないものでいつまでも待ってくれますが、人の世は本当に変わっていくもので、、、人は哀しい、哀しいものですね。まあ空を見上げると雲ひとつない青空ですから、これはイケる、人の世はどうでもいいっちゃ。
 暑いのか寒いのかまだ何とも微妙な季節ではありますが、そりゃ歩き出せば暑い。登山口付近はもうすっかり新緑というかは濃い緑色になりつつもあり、見た目爽やかではあるが暑い。とりあえず早く稜線まで上がってしまいたいがおそらく稜線でも暑いだろう。目的はひとつの予定だったのでサクッと上に上がってしまうつもりでしたが、思いのほか小さい春の花に足止めを喰らい、何やかんやで駒止までで1時間、花立までさらに1時間もかかってしまった。バカ尾根と言われているが歩きやすいのでサクッと行くときはサクッと上がれるが、もしかして一番足を止められる時期かもしれない。登るにつれ新緑になってくるし、山野草が綺麗だし。さすがに登りはじめの時間が時間だけに登山者にほぼ合わないのだが、まあ平日だからというのもあるだろう。
 花立付近まで来るとさすがに展望が開けるので暑さも吹っ飛びます。振り返ると麓の街並みと海岸線、相模湾が見えて何とも気分がよい。山から見る海岸線はいつも気分が良くなりますが、これまた何故なのだろう。塔ノ岳に限って言えばここまで来るとほぼもう終わりなので、面倒なところが終わった安心感みたいなものも気分高揚の要因のような気も致します。花立を過ぎると少しずつツツジが目立ち始め、ようやく撮り始め、気持ちも仕事モードに入ったような気がします。
 5月中ばともなると気になるのが天気。いやまあ5月はすっきり一日晴れる日が多いといえば多いのですが、ここ近年は気温も高いですし、いつ何時雲が湧いてきて終わってしまうということも無きにしも非ず。もうどうなるかわからないから行くしかないわけですが、こればかりは祈るしかない。しかしこのときは花立到着ですでに午後2時すぎ、さすがにこのままの天気で持ちそうです。さすがに少しモヤってはおりますが夕方になるにつれクリアになってくれると思います。自分の決めたベストポイントで午後4時30分に撮影できれば今回の任務は完了でございます。これはもう、撮れたようなものですね。ちなみにですが今回のメイン写真はそのベストポイントの写真ではありません。というのもその写真はそんなにこういう場で軽く出したくないなぁ、という訳でありましてご了承くださいませ。
 所々ツツジを楽しみながら塔ノ岳山頂に着いたのは午後2時半ごろ。ここから丹沢山にかけてが山なみの風景も好きだしツツジも多いしで今回のメインとなるわけですが、自分が決めているベストタイムまで2時間もありますからちょっと足を延ばして丹沢山方面へと向かいました。とくにシロヤシオが綺麗で、ミツバツツジは蕾も多くやや抑え気味。今回の目的の絵はシロヤシオの木がメインになるのでちょうど良かったですが、そうじゃなかったら結構危なかったかもしれない。まあそれでも代用がきく景色は他にもありましたからそれでもいいっちゃいいけど、やはり「ここで撮る!」と決めていた目的は果たさねばなりません。ベストポイント到着、メインの木の前に来てしっかりと咲いているのを確認し、抑えで撮影しておきました。やや風が強かったのでバチッと撮るにはちょっと時間がかかりましたが最低限の任務は果たしたと思います。とりあえず及第、あとは西日のベストタイムに撮影でここから完璧に仕上げていくわけです。

山をなめるなおじさん「山をなめるな!」

 ということで頃合いの時間まで丹沢山方面へ。頭上を囲むツツジを撮りつつも足元の花にも気になって案外時間が過ぎてゆく。日高あたりからツルシロカネソウかな、白い花が綺麗なので良い状態にものを探しているうちに日は傾いてゆく。振り返る塔ノ岳の北側斜面もツツジが咲いていて綺麗だし、樹々の間から差し込む西日もなかなか。な〜んて、だらだら撮っているうちに時間は過ぎていき、気付いたらベストタイムの午後4時30分。まあでもまだ日は高いところにあるし、10分20分くらい過ぎても許容範囲でしょうに。ここは焦らず撮れるものを撮ってから戻ればいいでしょ、と日高〜塔ノ岳付近でのんびりと過ごしておりました。
 さて、ベストポイントに戻りましたのは午後5時すぎ。よし、では撮らせていただきましょうかとカメラを構えるもどこか納得がいかない。何となく山にかかる陰の割合が多いような。。。いや、こんなはずでは。。。何か納得いかないな。。。と思ったのだが、時すでに遅し!やっぱりベストタイムは午後4時30分なのか。。。な。と今更になってわかったのでした。ものの30分しか変わらないし、見た目太陽の高さはあまり変わらなかったので余裕ぶっこいてたわけですが、やってしまいました。。。もちろん、素人目にはわからないかもしれない。でも私が求めているのはそこじゃないんだ。微妙な違いが大きな差になるような、厳しい世界の人間なのだ。。。なら、ちゃんとやっとけよ、と。う〜ん、猿も木から落ちる、河童の川流れと言うとなんか一流のちょいミスっぽくて慰めの言葉のような気もしますが、現状結果だけみれば猿が頭から落ちて頭蓋骨骨折脳挫傷、もしくはカッパ溺死くらいの、というか即死ですよ。レベル5デスって感じ(2018年当時私は40歳)。もう何やってんだか。
 もう何やってんだか、と本当に思いながら塔ノ岳山頂に戻るとどことなく優しげな夕暮れの富士山が。う〜むドラマチック。頑張りましたよ私は、と夕陽に包まれて体も心もキラキラしている感じですが無事遺体で救助されましたというところでしょうか。せっかく「これぞ」というのを撮りに来たはずでしたが、自分の心を満足させるためにはまた来なくては、必ず来なくてはいけないという遺恨を残してしまいました。。。
 失意のまま山頂を後にしたのは日も暮れかかった午後6時半。大倉のバスが午後7時20分だから、まあもうムシャクシャしてガーっと降りちゃえば間に合うでしょう。もうさ、早く帰ろう!とは言っても最低限のものは撮れたんだし、、、いやでもそれじゃ満足はいかないし、う〜む、精神のカタルシスのために撮っているというのに最後の最後で一気に不満が溜まってしまったカタストロフィ。この気持ちをどうすれば?せめて、バスに間に合うよう、走るぞ!

 ということで大倉まで下ってきました。

 が、バスには乗り遅れました。。。
 乗り遅れる珍しいケース。

 でも、丹沢だから30分後にまだバスはある!
 丹沢だから、いつでも撮り直せる!

 。。。かな?

TOP

Past Articles

※過去の記事は4回まで掲載。それ以上は順次削除します。

TOP