Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート101
19 Apr 2023更新

2014年4月15日 撮影・「開聞岳」


 長らく間を空けてしまい大変申し訳ございません。長期ロケに出ておりましたのもありましたし、その前後でやや慌ただしくなってしまいましたのでつい放ってしまいました。いや、ついつい100回でいいかぁ、と甘えてしまっていたのかもしれませんが。
 長期ロケというのは九州はくじゅうに行っておりまして、つきましては5月18日、NHKBSにっぽん百名山にて放送されますので今しばらくお待ちくださいませ。何せ番組がデフォルトで30分から90分へと拡大してしまったので、撮る内容も恐ろしく増えてしまいまってロケも長期になった訳です。しかし90分て長いですよね。。。だがしかしそこはさすがのくじゅう、春先というよくわからない時期にも関わらずしっかりと撮れておりますのでご安心を!90分飽きずに見られる内容かと思いますのでぜひお楽しみに。
 帰ってきたら帰ってきたで動画のBGM作らなきゃいけなかったり、まだまだ何かと忙しい。正直トラック行って走りたいところですが、結構毎日歩いていたのですでに体はボロボロだったり。。。今シーズンは体が動くかどうか心配であります。山はのんびり歩けばいいけど、さすがにトラック競技ではのんびりというわけにはいきませんので。一度歯車が崩れると立て直すのになかなか大変なのが中年の悩みでしょうか。
 さて、今回の写真ですが、開聞岳です。せっかく九州に行っておりましたものですから九州つながりということで。関東の人間からすると九州はさぞ暖かいはず!と思ってしまうところですが、この季節は案外そんなこともなく、朝晩に至っては東京より寒いのであります。しかしまあそれはくじゅう周辺のことでありまして、さすがに鹿児島までくると暖かい、、、ような気がします。言うほど変わらないかも。。。汗。ですが開門まで来てヤシの木を見るとう〜む、暖かい感じがしてくる。。。ぼ、房総でも同じじゃないか?などとは言っていけません!ここは南国なんだ!ともかく事実はどうあれ「暖かい気分」になれればいいのであります!
 撮影は2014年4月15日。前日の午後、というかほぼ夕方に自宅を出まして鹿児島に到着致しましたのは夜8時ごろでしたのでまあほぼ日帰りのようなものです。主な目的は雑誌の表紙と巻頭のグラフの撮影でして、個人的にはもっとゆっくりしたいところですが自分の撮影ではないのでこればかりはどうしようもない。登山的にはサクッと終わりますから十分ゆっくりできてるじゃないか、と言われればそれまでのような気もしますが、やっぱり長崎鼻や枕崎からも開聞岳を眺めたいし、せっかくなので砂風呂も入りたい。やりたいことはいくらでもあるわけですが、本当にストレートに登るだけでございました。それでも何だかほのぼのと暖かいところなのでのんびりできたような気になるのがこの指宿のいいところ?でしょうか。
 15日は早朝に鹿児島中央駅から電車に乗りまして山川駅へ。開門駅まで行かれればそれが一番安上がりなのですが、行程表を見ると山川駅からタクシーに乗っているのでおそらくこのときは電車が山川駅止まりだったのかと思われます。まあしかしだ、ともかく山川駅を出ると目の前に広がる海、海、海の景色。これだぁ〜!という気分です。千葉県民憩いの場、南房総を彷彿とさせるその景色はまさに心を穏やかにする効果があり、幼少の頃を思い出が自然と心に湧き上がってきます(注:私は柏市出身です)。普段は山ばかり撮っているので山を見るともちろん癒されますが、しかしそこは私にとって戦いの場。つまりどうしても「対峙」してしまうのでありまして、癒しだけでなく緊張感張り詰める勝負心が動いてしまうためにどうしても完全にリラックスできないのであります。それに対して海。まるで100m選手が時たまランニング仲間とリレーマラソン出ようよみたいな遊び半分の気持ちで楽しめるのでありまして、つまるところ「専門外だから」とやさしい気持ちで臨めるわけです。まとめると、どうでもいいから海も上手く撮れよ!まあそんなことはどうでもいいか。ともかく雲ひとつない青空の下、キラキラと輝く海を目の前にして気分は昂揚するわけで、高いテンションのままタクシーに乗り込んで開聞岳へと向かったのです。
 このときの仕事は表紙とグラフ、ということで撮るカットは非常に少ないわけでありまして。。。汗、楽っちゃ楽ですがそれなりに意味のあるカットにしなくてはストーリーが組めませんから、ただ良さげなカットを綺麗に撮ればいいというわけでもありません。ですがしかし「開聞岳」というのは半ば出落ち感がありますから、それだけでも助かったりしています。というかそのためにこの山を選んだと言っても過言ではなかったり、、、と。さすが南国、すでに辺りの桜はすっかり終わってもう新緑が眩しいくらいで咲く始めのツツジがポツポツと色を添え始めておりますが、万年緑色っぽい目の前の開聞岳はそんなお花見など気にせずにズドンと聳えております。本当に顕著に迫力ある三角錐の山容を見せておりますが、う〜ん、もうちょっと距離をとって眺めたいものです。真下だと間近すぎて捉えどころがない。
 ふれあい公園で30分くらい撮影をした後、いざ開聞岳へ。南国チックな樹相なので見てくれはそれだけで蒸し暑そうな雰囲気ではあるがさすがに4月、歩けば暑いけどまずまず爽やかである。お得意の螺旋状登山道を登っていくわけだが、南側に回り込むと海が見下ろせるのが何とも開放的だ。もちろん何だかんだで気温は高いから空気が澄んでいるというわけではなく、遠くの山は霞んでいるので桜島や屋久島などは視認できない。桜島はやや見えたような気もしたが、ともかくもっさりした見通しは写真には向かいないかもしれないが暖かみがあって悪いわけではない。ようやく気持ちの良い季節が来たわけなのだ。私の大好きな長崎鼻の海岸線を見下ろしてみると結構大きめのクレーン船が停泊していた。よかった、わざわざ時間を割いて長崎鼻へ行ったとしてもあれがいては何も撮るものはなかっただろう。
 登山的にはこれということもなく、ゆっくり撮りながら歩いても2時間かからずに山頂へ。お気楽のお散歩山なのだが充実感が高いのはなぜだろう。「百名山」を登ったからなのか、周囲の景色がいいからなのか、はわからない。ただ、海に突き出した頂というのは何やら特別なものを感じるのはあるのかもしれない。今回はこの山頂で表紙を撮ろうと思っており、ちょうどそのイメージ通りの岩があったのでそこに立ってもらってあっさり終了。と言ってもポージングやら体の角度やらで何枚も撮っているというのはあるが如何せん狭い山頂ですし、他のバリエーションをそんなに組めないので決め撮りとなるわけだ。それでも標高は低いにも関わらず一気に突き出した山頂からの高度感はなかなかで、麓ののどかな風景と相まって独特の雰囲気を作り出している。麓に街が見えるわけでもないし、他に高い山が望めるわけでもない、池田湖と田畑が広がり、どこだかわからないがここしかなさそうな風景が広がっている。
 ということで山頂でぼちぼちと撮影したのち、下山。登山に2時間かかってないんだから、下山はもちろんもっと早い。下山してきて開門駅へと向かう途中、夕方5時で閉まりそうなコンビニに寄る。とくにこれと言って昼食がとれそうな店がなかったので同行者には申し訳ないがアイスで我慢してもらうこととなった。まあしかしながら暖かい気候の下、できそこないの高校生のようにコンビニ前で座ってアイスを食べるのも悪くない。目の前には開聞岳も見えていることだし。何を食べたかまでは覚えていないが、どうせチョコモナカジャンボあたりだろうことは容易に推測できる。時間が止まったかのようなのんびりした空気感は非常に旅情感溢れるもので、私的には楽しかった瞬間として強く記憶に残っているのだが、同行者がどう感じたかは知らない。おそらく「おい!昼飯がアイスって何だよ!」というところじゃないだろうか。9年ぶりに、失礼しました。久しぶりにストビューでその準コンビニを見てみると閉店しておりました。仕方ないことですが、記憶にあった風景が変わっていくというのは切ないものがあります。せめてアイスだけでなく大福でも買ってあげればよかった。。。と今書いた瞬間に「そういえば大福も買ったような。。。」という記憶が蘇りました。ならナイススティックでも追加で買ってあげたらよかった。

90分って長い

 午後2時ごろ、開門駅から電車に乗り帰路につきました。途中「JR日本最南端の駅」である西大山駅でなぜか5分ほど停車してくれたので思わず記念撮影。確かに開聞岳は見えているけど、海同様ここからの景色は私にとっては勝負所ではないのでお気楽にシャッターが切れるのは嬉しいところ。しかし別にスマホで撮れば十分なのに一眼で撮ってしまったのはやはり山が見えているからなのだろうか。その後はトコトコとローカル線に揺られ、午後4時ごろに鹿児島中央駅、そこからシームレスで空港へと向かいキュッと東京へと戻ってまいりました。必要最低限の仕事しかしなかったので個人的には消化不良、もっと開聞岳が撮りたかったところでありますがこればかりは仕方ないですね。
 さて、開聞岳つながりで思い出しましたが、今度のNHKBSにっぽん百名山出演回はくじゅう山でございます。くじゅうといえばミヤマキリシマ。ツツジ系が多いから秋の紅葉も綺麗。冬も雪が降って霧氷がつくとこれまた綺麗と見どころたくさん。そんなわけで3月から4月の一番微妙な時期のくじゅうに魅力はあるんでしょうか?そもそも出演依頼を受けましてこの時期のロケで雪山以外でできる山がありますか?とお願いされて私がくじゅうをチョイスしたのですが、対して番組枠は90分もあり、普通に考えたら時間持つんだろうか?と思ってしまうところかと思います。でも実は目を凝らすとこの時期ならではの景色があり、あまり有名ではありませんが目ざとく見つけるとこの時期しか見られないような世界が広がっているものです。逆に雪山だったらずっと単調で、時間持たなかったんじゃないかな、、、などと思ったりするほど内容は結構濃いかと思います。90分て本当に長くて、わかりやすく名作映画に例えると「コマンドー」くらいなのですが、あれだけわちゃわちゃ起承転結があって「あれは嘘だ」くらいの名言がないと見続けるのは苦しかったりします。山を縦走すれば90分ってすぐ作れるでしょ、と思う人もいるかもしれませんが、ただだらだら縦走しても映像でしっかり伝えるというのは難しいです。実際頻繁に景色も変わるわけでもありませんから。人様のお時間をいただくわけですから、惰性にならないようにコンテンツを埋め込んでいかないと時間の無駄になってしまいますので、そう言った意味では逆にこの時期のくじゅうで良かった!と思うほどであったり。もしミヤマキリシマの時期だったら、90分どこ歩いてもミヤマキリシマになってしまうので絵変わりせずつまらないものになったかと思います。そんな訳で、この早春のくじゅうの魅力を知らない方は是非お楽しみにお待ちくださいませ!
 ということでロケもしっかり撮れた終盤、この時期のくじゅうでチョイスしてよかったでしょ!とディレクターに意気揚々と語る私はその勢いのまま偉そうに「90分の番組を作るならこのくらい内容を濃くしないとダメですよ」などと語り、「僕だったら開聞岳だって90分持たせるアイデアを生み出せますよ」とまで言ってしまった。

 今回レポートを書いて
 いざ開門岳を振り返って考えてみました

 開聞岳で90分番組作れると言ったな?

 あれは嘘だ

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