Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート04(改訂加筆)
18 Jan 2023更新

2013年1月23日撮影「西吾妻山」


 ご報告が遅くなりましたが北アルプスは双六小屋のYouTube動画を追加致しました。新しく変わった双六小屋のホームページでも見られるのでぜひよろしくお願い致します。追加のメインは「アルバイト募集」と「登山道整備ドキュメント」でございます。どちらも山景色とはやや離れておりますが、見ていただけるとありがたいです。相変わらず制作にはすべて一人で担当しております。「アルバイト募集」の方は爽やかな曲が書けたかな〜なんて思っているんですが、ちなみにちゃっかり出演も果たしております。私は働いているシーンではなくお客様役でございますが。。。今後は西鎌尾根のガイド動画、高山植物の動画と続けていきますので、お楽しみにお待ちくださいませ。
 さて、いよいよレポートも100回か!と思われたかもしれませんがすみません、今回は改訂加筆でお許しください。色々とやることがあってついボーッとしていたら1月も半ばになっておりました。キリがよく100回でこのレポートも終わるのかどうなのか、気にされている方もいるみたいですが、私は真面目に何も考えていません。この「レポート」というのがつまり成仏できなかった過去の魂であるならば、ならば108回が一番キリが良いのかもしれない!

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 撮影は2013年1月23日、小さいが高気圧がうまく東北をかすめていきそうだったので予定に入れていた西吾妻山へ向かいました。天気があまり長続きする感じもなかったので日帰りで計画したのですが、カレンダーを振り返ってみると翌日24日は仕事の打ち合わせ、そのすぐ後は雲取山に行っていることから、「ああ!晴れちゃう!どこか行かなきゃ!あわあわ」という生き急いだ性格によるものだと思われる。
 早朝に東京を出発し、山形新幹線で米沢へ。米沢駅に到着すると上空はほぼ晴れているが、山の方を見やると微妙に雲が残っていた。これからバスで天元台まで、そこからリフトで上がるまでまだ時間がかかるので、朝からスッキリ晴れてしまうよりはこの感じのほうがちょうどよいだろう。米沢の市街地を抜けるとさすが豪雪地帯といったところで、一面銀世界、屋根の上にもメートル級の雪が積もっている。住んでいる方々は堪らんだろうが、たっぷりの雪を見ると子供の頃のように嬉しくなるものでもある。はやる気持ちを抑えながら、バスを降りてすぐにロープウェイへと乗り込んだ。
 ちょうどよく山の雲も取れてきたようで、見るかぎりは青空が広がっていた。ロープウェイの中で現地の高年の人に「あんたどこから来たの?東京?運がいいねぇ、こういう晴れの日はこの山では少ないよ。」と言われたが、そりゃあ樹氷好きとしては晴れにくいことも知ってるし、今日が晴れるから狙ってきているわけで、「いやぁ、本当に運がいいです。」と素直に答えてはいるが、心の中では「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」と思っていたりする。しかしどうでもいいことだが、この2013年の時点でまさか自分がランバ・ラルと同い年とは。。。あそこまで貫禄があったら声に出してその名ゼリフを吐いていたかもしれない。
 天元台高原駅からはリフトを3本乗り継いでゲレンデトップへ。リフトを降りて早速、係の人に「下りのリフトは乗れないからね。」と釘を刺される。以前秋の大雨の中を非常につらい思いをしてこの3本のリフトで下りたことがあったが、冬はダメなのか。。。3本分のゲレンデを歩いて下らなくてはならないので、帰りのバスに乗り遅れないよう早めに行動しなくてはならないことになってしまった。まあ、もともと日帰り、西吾妻山をピストンするだけであればたいした問題でもないだろう。スノーシューを装着し、リフトを降りてすぐの目の前の樹林帯に入ってゆく。
 スノーシューだが、個人的な好みでプラスチックメインのものを使用している。スチールフレームだとどうも熱伝導率の関係か雪がまとわりつきやすい感じがするし、フレーム内に雪がたまりやすい印象がある。ブレードが優れているので登る力は素晴らしいのだが、大量の雪のラッセルとなるとプラメインが使いやすく感じる。最近はプラメインの両脇にスチールブレードというハイブリッド型もあるので、これが最強なのかも。いずれ使ってみたいところだ。
 歩きはじめの樹林帯はまだ樹も大きく、樹氷ではあるがモンスターとまではいかない、やや「樹」の状態である。やはり樹氷は樹のまわりに雪がまとわり付きまくってモコモコで樹の原形を感じさせないくらいまで成長しないと納得がいかない。この程度だと、きれいだね〜、といった感じ。前日は悪天、この日は平日ということもあって登山者のトレースはなく、スキーのトレースが1本だけある。スノーシュー装備で膝下くらいまで潜る積雪の中を歩くこと30分ほどで背の高い樹林帯を抜けた。
 樹林帯を抜けたと同時に一気に展望が開ける。向かう西吾妻山の山腹には無数の樹氷が!何なんだろうか。この無数のモコモコの奇景を見てハァハァ言う自分は。よくはわからないが樹氷の景色は私にとってだいぶツボらしく、いろいろと何度も撮っているがよく飽きないなぁ、と思う次第である。これを心理学で言うと、、などと明確に分析されそうな感じである。モコモコもいいが、グニョッと曲がった感じのも面白いし、見てくれがモルボルみたいなのもいる。西吾妻の樹氷は他の山とちょっと違っていて樹氷の背が低い。それがモルボルを感じさせるのかも。
 気に入ったところで写真を撮りつつ樹氷の坂を登る。思ったよりもなかなかすっきりと晴れてこず、うっすら高い雲がたなびいている天気ではあるがとりあえず視界は良好、周囲を見渡してもどこにも人影がないのが気持ちいい。山頂手前の天狗岩のピークに立つが、これといって目印となるものは何もない。樹氷だけだ。この山頂部の樹氷が特に面白く、自分の腰ほどの背丈のものが首塚のようにずらずらと気持ちよく並んでいる。表現が悪い。兵馬俑。これも微妙か。無雪期に西吾妻に登ると山頂部はそこそこ背丈のあるオオシラビソに囲まれているのだが、この山だけこういった感じになるのは、標高とか、それでも他の山に比べるともともと背が低いのが要因になるのだろうか。標高自体は他の樹氷山よりも高く、なのに山頂部がオオシラビソに囲まれているのはこの山だけかもしれない。モンスタークラスの樹氷山としてはもっとも南に位置していることがそういう要素を産んでいるのであろう(さらに南の苗場山や武尊山、北横岳でも樹氷が形成されるが、「モンスタークラスの樹氷を見るとハァハァする会」調べではやや形成が甘い)。
 西吾妻の山頂に立つ。西側の裏磐梯方面の眺めはよいが、磐梯山は雲の中にあった。やや、高気圧の移動が予想より遅れているのかもしれない。磐梯山どころかお隣の西大巓にもときおり雲がかかる始末だが、樹氷メインのときは快晴だと同じ絵ばかりにもなるので、こういう微妙な変化はありがたいところ。日の光を雲が遮ると日陰と日向の陰影がすばらしく、また一段とこの不気味な奴らに磨きがかかる。暗闇の樹氷の中に差すひとすじの光、そのスポットライトを浴びるモンスターは、快晴のときに見るそれとはまた違う魅力がある。ただ美しいだけでなく、ややグロさが加わると言うか。。。なぜグロさが加わってるのにハァハァ言ってるんだ?

後ろ髪を引かれつつ、山頂を後に

 山頂周辺で格闘すること1時間ほどだったであろうか、そろそろ引き上げねばならない。後ろ髪を引かれつつ、後にする。ようやくこの時間になってさらに晴れてきたところを見ると、もったいない、一泊の予定で来るべきであった、と思った。樹氷の山の中では八甲田山、八幡平、蔵王、そしてこの西吾妻が有名であるが、とにかく無数の樹氷原を見たい場合はこの山がイチオシ。背景に山なんていらない、とにかく画面を樹氷で埋め尽くさせてくれ! という樹氷ファンはこの山に撮りにくるのが一番よいかと思われる。ただ、樹氷の見られる山は天気が悪いのでそこだけは要注意。かく言う私もこの西吾妻の冬はまだこれから何度も足を運ぶ予定であるが、昨シーズンは貧雪、今シーズン(2017)もやや木の枝などが出ている未完成の状態になっているようで、この時以来なかなか入れていない。次は避難小屋かテントで1泊の予定。
 リフト終点のゲレンデトップに戻ると日本海側の雲もすっかり取れたようで、朝日岳が真っ白な姿で聳えていた。そろそろ日も暮れそうな感じで、もうゲレンデには誰もいない。これから長いゲレンデを歩いて下らなければならない。スノーシューの裏側に何かラバーキャップみたいなのを取り付けてスキーっぽくならないだろうか。その前にスキーの練習か。尻で滑る簡易ソリも疲れるしなぁ。

ドス、ドス、とスノーシューでゲレンデを下っていく姿はまるで量産型ザクのようであったと思う。

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