Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート03(改訂加筆)
24 Jul 2023更新

2013年7月20日 撮影「燧ヶ岳」


 ちょっと長らく季節に先行して山に入っておりましたが、、、今年の花は早すぎ!(山にもよるけど)。例年なら7月下旬、場合によっては8月5日頃でも十分に見応えのあるお花畑が楽しめるところだと思ったのですが、、、ハクサンイチゲが無残にもすべて終わっておりました。。。なのに天気には恵まれたというこのどうしようもない感じ。う〜む。また撮り直しに行かないとな、と思うわけですが、こんなことばかりだとすぐ人生終わっちゃうよ。なかなか他に進めないのも困ったものです。もちろん間違いなく花は早く咲くだろうとの予測で動いていたわけですが、自然のヤツらの方がさらに上回ってきたというわけで。さすがに7月一桁で入る自信はなかったなぁ。
 でもようやくとりあえず梅雨は明けたようで。天気に恵まれた、などと言いましたが1週間くらい山にいて実は2日しか晴れておりませんでした。最初の3日はずっと山小屋に篭っておりまして、前半はどうなることやらと思っておりました。それまではずっと朝寝、昼寝、夜寝と寝てばかりいたような気がしますが、晴れた2日間は朝から夜まで撮り続けてほとんど寝てないような。何だか天気の良い日と悪い日の差が激しすぎて疲れちゃいます。しかも昼ごはんは食べなかったりするので体もおかしくなりそう。なわけで、そんなことしてると帰宅してから2日くらいはこれといって何もできず無駄な時間を過ごしてしまうので効率がいいんだか悪いんだか。しかし山の上で撮らなきゃならないので仕方がないですね。
 山から帰ってきていつも思うのは、本当に、本当に残念なほど足が遅くなっていること。そういや前回のレポートで手に入らないとわめいていたスパイクをようやく手に入れることができまして、春先は肩が痛くて調子が悪かったのですがようやく少し動かせるようになってきたその流れでスパイクを入手、どうよちょっと軽く流してみるかと走ってみたら11秒2で走れたので気分も上々だったのですが、山から下りてきて全く足が動かせない。多分12秒台が精一杯なんじゃないかという腿の感覚。う〜ん、もっと気分良く人生を過ごしたいですが、山に登る以上仕方がないんだろうか。ちなみにまた明日から少し長めで山に入るので、おそらく9月頃にはまた11秒2に戻せるハズ!と思うのですが、、、すぐに冬がやってきそうです。今シーズンももう終わりかぁ。。。ってようやく体が動かせるようになったと思ったのに、もう来年に期待するしかないのか。人生まさに一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩さがる、でございます。私は、三歩進んで二歩進みたい!!(懇願)

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 この写真の撮影は2013年7月20日。取材自体は前日の19日に出発し、天気を狙って1泊のスケジュールで入山しました。メインの目的は大江湿原のニッコウキスゲと燧ヶ岳であります。私の撮影スタイルとしましては基本、日本アルプスやトムラウシのような「山に入って歩いてから3・4日目がメイン」みたいな山でない限り、天気を狙って短期間で終わらすことが多いです。山の天気というのは「悪い」というと本当に悪くて何も見えないようなことも多く、「もしかしたら」を期待していても無駄になる日が多い。若い頃は1週間山に籠って粘って撮るなんてことをよくやっていましたが、まあしっかり撮れて帰ってきたこともありますけど、1週間という期間を考えると成果が少ないことも多く非常に効率が悪かったりします。昔ながらの写真家らしく粘るのもロマンですが、この景気のよくない現代では通じにくい手法じゃないかな、などと思ったり。かといってもちろん何が起こるかわからない山という環境、粘らないと撮れない写真もあるわけですが、そういうものが必要なときは粘ればいいわけであって、とこかく目的に応じて何を撮るか、どう撮るか、どれだけ撮るか、を毎度毎度よく考えて行動内容を決めていくことが今の時代では大切なんじゃないかな、などと思っていたりします。
 そんなこんなで天気図を見て、スパッと尾瀬に入山したわけです。今回の目的は尾瀬沼周辺なので、大清水から入山、テントで1泊してまた大清水へ帰るルートを取りました。一番の目的の「ニッコウキスゲの群落と燧ヶ岳」は翌日の朝の順光が狙い目なので、初日は焦らずゆっくりと出発し致しました。この年は梅雨明けが早く一応もう夏なのですが、天気は太平洋高気圧ではなく、北からのオホーツク海高気圧だったような。そんなわけでそこまで気温も上がらず、すっきりした天気に恵まれそうでありました。
 大清水に着いたのは午後2時。ずいぶんゆっくりだな。予報通り朝方は曇りでしたが、徐々に青空が広がりはじめていました。夏にしては爽やかな風が心地よく、樹々の緑も心なしか新緑のように透き通って見えました。尾瀬にはなんやかんやで何度も足を運んでいるので慣れた道、さっと三平峠まで登って尾瀬沼へと下って行きます。午後の斜光が美しく、夏らしい雲と青空。きれいだなぁ、とゆっくり眺めていたいものだが、こういうきれいな時ほど写真家にとって酷なものはない。ゆっくり眺めているなんていうのはもってのほかで、大急ぎで撮影に移らなくてはならない。撮りたい!という気持ちが勝るからいいのだろうが、、、非常に忙しない。人生もっと余裕を持って生きたいものである。
 早速到着したキャンプ場でテントを張る。尾瀬沼のテント場はウッドデッキになっており、快適この上ない。周りのテントを見ると皆しっかりと置き石で紐をしっかり張ってホールドしているが、こんな快適な場所、台風のとき以外では何もする必要はないだろう。無論、フライシートなんかもどうでもよい。ちなみに今回は尾瀬ということで、さらにはシュラフも削ってモンベルのシルクシーツを持ってきた。尾瀬や谷川岳界隈は夏は非常に暑く、夜もたいして気温が下がらないので正直シュラフは不要なときが多い。かといって何もないと寂しいので、ぺらぺらの薄皮一枚あれば幸せということだ。しかもシルクなので肌触りがよく心地よい。
 余計な荷物をテントに入れて、いざ戦場へ。キャンプ場からすぐの大江湿原に出ると、まあニッコウキスゲは見頃を迎えていたが、、、、以前に比べてだいぶ減ったような。ニッコウキスゲは多年草なので当たり年はずれ年はあるが、これは明らかにシカの食害では、という具合。半減したような。。。こういう環境の変化が後発の写真家にとってはきついところ。それでも午後の陽光はきらきら輝いていて、燧ヶ岳が姿を現したこともあって美しい光景が広がっていました。花が減ってる感じがするのであまりニッコウキスゲをメインに据えることはなるべく避け、爽やかな夏の尾瀬を主題に撮影をすることにしましたが。。。それでいいのか?
 さて、明日のメイン撮影はどうするか。確かにニッコウキスゲは少ないが、撮り方によって群落のイメージを落とさずに撮ることも可能ではある。たとえば低い視点から撮って画面上の花の割合を増やせば花が多くも見える。ただ、それでよいのか?構図に無理があると不自然な視線になってしまい、「尾瀬の美しさ」ではなく「撮影の技」に寄ってしまうのであまり好みではない。とりあえず仕事と割り切って撮るけれど、個人的満足のいくものではないだろう。まあこれはこれで仕方がない。
 ひとまず撮影を終えるとだいぶ太陽も低くなってきたが、とりあえず尾瀬沼をぐるりと一周歩き、南岸から日が沈むまで撮影しました。早朝は大江湿原に日が当たらないので、日が当たるまでは南岸で沼越しに燧ヶ岳を撮影、日が当たってから大江湿原に移動する予定。テントに戻り晩ご飯を食べ、しばらくしてから月明かりのニッコウキスゲと燧ヶ岳の撮影に出かけました。空には星が輝き、天気は上々。やや蒸す感じがするが、おそらく明日の天気は大丈夫だろう。時折森の中に光るのは。。。シカの瞳である。う〜む、こいつらが夜食べてるんだろう。
 夜の撮影を終え、すぐ就寝。夜11時ごろだったか、何やらやたら寒い感じがするので寝ていられずに起きてしまった。頑張って寝ようとするも寒い!やたら寒い!そうか、しまった!いくら夏とは言え、今回はオホーツク高気圧、いくらか北からの寒気が入っているようで、こんなときに調子に乗ってバカな私はシルクシーツで来てしまったのだった!策士策に溺れるとはまさにこのことで(策士なのか?)、孔明がどこかで高笑いしているに違いない。むむむ、しかしこんなに気温が落ちるとは思いませなんだ。(後から調べると当日の尾瀬の気温は7度。さすがにシュラフなしはきつい。)仕方がないのでテント内でガスを炊いては一旦暖めては寝る、寒くて1時間くらいで起きる、ガス炊いて暖めてから寝るを繰り返して凌いでおりましたが、どうもさすがにガスも減ってきた。しかも軽量化のために1缶しか持ってきてない、、、キタコレ。朝食分だけは確保するためにうまくガス量を調節し、というか後半は我慢し、何とか寒い夜を乗り切った。というか結局あまり寝てない。乗り切ってないような気がする。

臨機応変に対処。できたのか?

 色々と時間をすりつぶしてようやく朝を迎えました。動きだしさえすればこちらのもの。体脂肪率が平均10%くらいでそのほか筋肉なので、動くとすぐに体が温まる自動ホッカイロみたいな装置をすっぴん状態で標準装備している人間にとっては寒さなど(動けさえすれば)敵ではない。ようやく寒さから解放される!と意気込んでテントから出ると、、、く、曇ってる!!しかも高曇りっぽいやつ!!う〜ん、夏場はこれがあるから正直怖い。一般登山者からしたら山はしっかり見えてるし、まあ晴れといってもいい範囲かもしれないが、私が求めてた感じと違う。。。ああ、ララァ、私を導いてくれ。。。しかしまあ、とりあえずこういうときでも焦らずにやれることだけをやるしかない。
 というわけで、檜ノ突き出しの先の燧ヶ岳展望デッキから撮影を始めました。雲は多いながらもさすが尾瀬。こういうちょっと曇天のときでも湿原や山上湖は幻想的な雰囲気を出してくれます。これが標高の高いアルプスだったら、ただの曇りにしかならないのではないだろうか(単に手前に沼があるからだろ)。日が燧ヶ岳に当りはじめると尾瀬沼から靄が上がる。う〜む、さらに幻想的でいい感じだ。このときの問題は、どの瞬間が美しい燧ヶ岳だろうか、である。朝の日差しが燧ヶ岳に当っているのももちろんきれいだが、下部に入れ込む尾瀬沼と岸辺には日が当たっていない。この状態で撮ると視線は燧ヶ岳ばかりにいってしまい、靄の上がっている幻想的な沼の印象はやや薄れてしまう。さらに空には高い雲がかかっているので、透き通った青空というわけでもない。ここは逆にフルフラットで撮ろうと決め、太陽が雲に隠れて日差しが弱まる瞬間を待つ。日の光が雲に遮られ、燧ヶ岳に当る日差しがなくなって山に影がつかなくなった瞬間を見計らってシャッターを切ったわけだ。これがトップの写真だが、どうだろうか。手前にはヒオウギアヤメが何株か咲いていて、しっとりとした感じを手伝っている。
 朝の撮影も終わり、さて、メインのニッコウキスゲだが、、、はい。しっかり高曇りになりました。まあ、、、花も満足のいく量でなかったので晴れても納得いかなかったかもしれないが、メインの目的を果たせなかったのは非常に悔しい。ということでふてくされながらさっさと帰りました。前日の午後とこの日の朝でいくらか撮れはしましたけど、落としてはいけないメインが撮れなかったということで、、、

 この回は敗戦!

 良くて引き分け?

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