Report

— 過去に撮影した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

レポート01(改訂加筆)
25 Jan 2022更新

2014年1月24日撮影・「仙丈ヶ岳」


 なんとか締め切りに間に合いまして、「黒部五郎岳」の動画を2本納品することができました。結構ギリギリではございましたが、よく間に合ったなぁと思う次第です。年末あたりは「まあ、間に合うでしょう」くらいに思っていましたが作曲の進行が遅くなると全く読めなくなるもので、1月10日あたりでは「ど、どうなるかな。。。」という感じでした。しかしきっちり間に合うところはさすがです。というか終わってみると「何で間に合ったんだろう」と思っていたりするんですが。とりあえずはまた来月に2本ほど出す予定ですのでまだ気は抜けないのですが、だいぶ余裕ができたのでどちらかというと燃え尽き症候群になっているところです。少しはお休みしてのんびり過ごすのが良いのかとも思いますが、案外そういうの苦手でして。しかし作業を進めれば良いものができるわけでもなく、なかなか難しいですね。2月にホライゾンの続編が出るし、気がついたらiOSで懐かしの「サ・ガ」コレクションが出てるのでやりたいけどさすがに今ゲームやるほどの時間はないし、う〜ん、、、と色々考えて結局また仕事をするわけですが、やっぱりどこかでオンオフのメリハリつけるのがいいんだろうなぁ。幸い、なのか、今ガンプラは全く手に入らないので、そちらの方はストップしているところだろうか。あんなに溢れていたHGすら高値でしか手に入らないって、これはこれであまりよくない状態ですけれど。まあいいや、仕事しよ。
 とりあえずは「黒部五郎岳」の動画を見ていただけると有り難い限りです。私も大好きでとても良い場所なので、ぜひ行ってみてくださいね。ここのカールの風景は日本のどこにも同じようなものがない景色ですし、人も少ないので非常に気持ちのいいところです。「遠い」と思っている人もいるかと思いますが、実は双六小屋からコースタイム4時間くらいしか離れていませんし、頭がおかしければ1泊で帰ることも可能です。まあそれは冗談として、初日に鏡平に泊まれば翌日五郎の小屋まで行かれますし、次の日カールを楽しんで双六小屋泊、3泊あれば十分です。登頂にこだわらず、午前中の日差しでカールの風景を堪能すれば本当満足ですからぜひ。実は私も結構山頂まで登らないときも多く、撮影対象はほぼカールです。山頂は結構いろんな山が離れているから写真的には撮りづらい場所なんですよね。そのうち稜線コースも紹介したいところですが「登山道がきれいに整備できてないから」と言って紹介しづらいみたいなんですよね。ぶっちゃけ全く問題ないレベルなのですが、小池新道レベルでないとダメなようで。。。稜線コースにもチングルマの群生地があって綺麗なので、そのうちお見せしたいところではあります。
 今回の一連の動画で実は一番大事な場所を紹介していなかったりします。そう、樅沢岳。写真的には槍穂高が一番美しく構図に収まる場所、天下一品の絶景地なのですが、どうしても「双六岳」をまずはフューチャリングするために省いております。というか撮影する余裕もなかったのかもしれないけど。午前中は逆光でやや微妙な上、夏の夕方はまずほぼ晴れないし、秋は雲海が張ってきれいだけど昨年は撮れなかった。なのでようやく双六岳、黒部五郎岳と一連とりあえず終わったので、いずれ樅沢岳も紹介したいなぁと思うところ。でも樅沢岳って写真向きの場所であって、案外動画向きの場所でなかったりもするんですよね。槍穂高がメインでどどーんと魅せる場所だけに、手前に何も入れるものがなかったり、動画にする必要性ってあるのかな、、、と思ったりもします。ドローンで飛んでもあまり変わらないし。でも一連に入れたいなぁ。西鎌尾根はどこからかは槍ヶ岳山荘さんのエリアになるから槍までやるわけにはいかないんだろうし。まあそのうち。とりあえず来月の作品PVをお待ちくださいませ〜。
 さて、そういうわけで私の心もただいま燃え尽きていることから今回は大変申し訳ございませんが改訂版にさせていただきます。と言ってもおそらく誰も読んでいなかった頃の「第一回目」。一体何を発端にこんなものを書こうと思ったのかよくわかりませんが、結構最初は真面目な印象でもあります。先日もとある用事で出かけたときに「レポート好きで読んでます」と言われ、う〜ん、こんな駄文直接言われると恥ずかしくて恥ずかしくて赤面です。「レポート好きで読んでます」とか「恥ずかしくて赤面です」とかいう名前の低級パン屋ができそうなくらい恥ずかしい。なんかこう、ネット上のネタってやはり匿名でやるもんだよね笑。直接会うことなくて言われないからテキトーなこと書けるんであって、改めて言われるとなぜか恥ずかしいものです。こんな駄文をせこせこ書いている自分を想像するとさらに恥ずかしい。しかし、そんなこんなで書き綴って5年くらいにはなるのかな、「2週間おき」というのを結構サボっておりますが、飽きずに毎度読んでくださっている方がいらっしゃるなら本当に有り難い限りです。ページにはコメントを残せたりする仕様にしてませんから、どのくらいの反応があるのかとか果たして人気があるページなのかとか読んでくださっている人には全くわからない状態ですが、なんかこう、そういう謎な状況の方が読み手と書き手の「一対一」に感じていいのかな、なんて思っていたりもします。
 近頃のネットの環境はSNSや発達したリンクが便利な社会を作っているという利点ももちろんあると思うのですが、同時に希薄さも生んでいる気もするんですよね。もしかしてこのレポートは大して人気がない、となると読まなくなったり、逆にこれといって面白くなくても人気があるから読もうとか、人気の有無が顕著にわかっちゃうとそれで判断しちゃったり。本来は自分が好きかどうか、だと思います。社会という集合体の判断が先にわかりすぎるのはあまりいいものを生み出すとは思えないんですよね。やっぱり根本は「一対一」から、そしてその積み重ねかと思ったりします。ちゃんと自分の舌で味を確かめられるかどうか。私は昔から食パンは「ドンクのパン・ド・ミ」一択です。あの水気のない感じが味があっていいんです。しかしお金がねーんで超熟です。
 近頃の写真の扱いもそうですが、いつでもどこでも検索すればそこそこの「山の写真」が見られるのは便利ですが、人間って実はある程度で満足もしてしまう生き物、そうなればそれ以上の「その中でも特に秀でて美しい写真」なんか探そうと思いもしない、なんてことにもなります。そうなると見てるものは結局全部「情報」でしかなくなってしまうかもしれません。芸術作品は「情報」ではないのですが、もうそんなものも希薄になっていく時代なのかもしれませんね。しかしそうなったとき、一体何が楽しくて生きているんだろうか。「情報」だけでは心の幸せは生み出せないと思うのですがどうだろうか。忙しなく過ぎる時間の隙間を埋めるように生きるのと、ゆっくり流れる時間に隙間を見つけて生きるのはどちらが幸せだろうか。どちらも充実はするだろうけど、どちらの充実であっても、周りを意識したものでなく「自分にとっての、自分のための充実」であってほしいものである。

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 取材は2014年1月22日に出発。冬の仙丈ヶ岳はこれで3度目になる。山に入る前にだいたい、連載に使用する写真はこう、作品はこれとこれ、あとはついでにガイド用写真、と構図や時間帯などの細かいイメージを作ってから入ります。リスト化してメモ書きして、現場でノルマをこなしていくという感じです。格好よく言うと「撮る前から撮影はもう終わっているんだ」みたいな感じですが、実際山では想像以上のこともよく起こりますから結局現場でワーキャーいいがならいっぱい撮ってます。最低限これは撮らないと、、、くらいでしょうか。その割には結構しっかり決まってるんだね、くらい。ただこの回、「冬の仙丈ヶ岳」といえばやはり小仙丈ヶ岳からの眺めに尽きます。仙丈ヶ岳といえばこれしかない、くらい。と言いつつも実は過去に2度登っておきながら、朝日に染まる仙丈ヶ岳が撮れていないという体たらく。このときは今回こそきっちりと収めようと予定を立て、それをメインに進めていくだけなのだが、ここで難しいのが仕事と趣味の違いであります。この一点の作品を撮るだけなら難しくはない。が、この年の冬は別の単行本である「厳選雪山登山ルート集」のために他の山の撮影がぎっしりとつまっていたのである。スケジュール的に余裕がないためにミスは許されない上、この撮影回でも同時に甲斐駒ヶ岳のルートも晴れた日に取材しなくてはならないというハードルを越えられるかどうか。
 混雑する正月は避け(というか正月は比較的空いている聖岳にいた)、2日間連続で晴天が来る日を待っていたら1月も下旬になってしまったのでござるの巻。よかったね、晴れたね!の結果論ではダメなのが仕事なので、狙って入るというのはいつも神経を擦り減らします。持ち前の明るさと体力がなかったら、今ごろ廃人なのは間違いないと思います。よくやく粘りに粘って撮影日はこの日と決め、南アルプスへと向かったのでありました。
 そこそこ雑誌などに写真を載せているカメラマンだと、乾ききった戸台の荒野にBMW・Z4あたりでガーっと乗り付けるイメージがあるかもしれないが(トランクにザック入らなそう)、私は免許を持っていないので、なんとガンタンクすら運転できない。ということで新宿から高速バスで伊那市へ、伊那から路線バスで高遠、高遠からはタクシー、とガイドブック通りの公共交通機関利用の優等生アクセスで戸台に到着したのでした。朝に新宿を発ち、戸台に着いたのはお昼12時。遅いっすよ。うっすらと雪の積もった戸台から見える甲斐駒ヶ岳は輝いておりました。う〜ん早く上に行きたい。
 翌日、翌々日が晴れの予報、天気図を読む感じだと翌々日は確実っぽいので、翌23日を甲斐駒ヶ岳、24日を仙丈ヶ岳としました。といっても22日の昼に戸台を出発しているのだから、23日の日の出までに小仙丈ヶ岳に立つというのは気持ちちょっとしんどい。また、一人ならよいがこのときは雑誌の連載写真に写ってもらう同行者もいるので無理をさせることはできない状態でもありました。ということで22日は無理をしないで丹溪山荘跡あたりの河原にテント泊、23日に早めに出発して甲斐駒ヶ岳を往復する予定で進んでいたのですが、無理はしない・させない、と思いつつもせっかちな性格から急遽予定を変更して一気に北沢峠へ。当然お日様もしっかり暮れた午後6時ごろ、北沢峠に到着したわけです。結局同行者には鞭を打って無理をさせるという、いつもの結果となった次第であります。反省はしておりますが後悔はしておりません。まあ北沢峠は水が取れるし、いいでしょ。お許しください。
 翌23日はまあ晴れ。風もなく快適で、だらだらと甲斐駒ヶ岳を往復。午後3時半ごろには北沢峠に戻り、24日のメインに備えることに致しました。冬の小仙丈から朝日の仙丈ヶ岳を撮る、というと五合目あたりにテント泊という戦術を考える人が多いかと思いますが、そこまで装備一式を背負って登っていく労力はちょっと無駄かなと私は思っています。冬の夜に出発というと寒いと思うかもしれないが、着込んで歩いていれば十分に暑いですし、問題はというと暗さだけでしょう。もちろん、しっかりとルートがわかっているのが前提なので、これをモデルケースとしては全くおすすめできませんが。
 24日の日の出は午前6時40分ごろ。甲斐駒登山の感じからトレースはほぼないので、若干のラッセルを考慮して余裕を持って午前3時くらいに出発しました。寒い中じっと待っているのは意味がないのであまり早くに着かないよう時折だらだらと歩きながら進み、小仙丈ヶ岳へと向かいます。まずは作品撮りから入るので私は日の出前に到着、同行者には焦らずゆっくりと登ってきてもらうようにしてもらったのですが、2時起きの3時出発は変わらず一緒なので、たったの15分遅れくらいで小仙丈に到着しておりました。寒い中かわいそうに。
 天気図を見る限り23日に比べるともっと安定しているはずなのですが風が思いのほか強かったです。う〜ん、昨日が良かった。。。日が昇り始め、ゆっくりと仙丈ヶ岳を朱に染めていきます。時間が経つにつれ赤色から金色に、そして雪の白へと変化していきます。作品撮りをひと通り終えると、連載の見開き写真の撮影へと移ります。よくある雑誌の取材写真だと日常的な昼間ばかりが載っているので、ここでは朝の斜光がきつい、もうちょっとこうドラマチックな写真をイメージしました。人が入っていてもやや作品寄り、という感じでしょうか。はは〜ん、そのために同行者もこの時間に登らせてきたわけだ。あと、あえてPLフィルターも使用しています。
 作品撮りをしている時から頭の中では同時進行で人物をどこに立たせるかも考えているので、作品撮影が終わり次第すんなりと定位置へ移動してもらいます。写真の中に人が入っても仙丈ヶ岳の大きさや山の奥行き感が失われないような、人のいない風景写真としても違和感のないような場所を選びます。ここでは稜線に立ってしまうと仙丈ヶ岳の眺めは良くなりますが、平らな稜線だと人が仙丈よりも目立ってしまって絵のリズムが崩れるので、やや東側へと下りてもらっています。こういうパターンの撮影において、夏山は環境保護上登山道から外れることができないという難しさがありますが、冬山は積雪があるために自由に設定できるのがいいところ。もちろんその反面、足跡がくっきりついてしまうので一発勝負という難しさもあるわけですが。前に進みすぎて足跡つけてからやっぱり、となって戻ったら台無しですから、立ち位置には慎重を期す必要があります。加えて人物の体勢と角度も結構重要。手をぶらんと下げるか、腰に当ててもらうかなどは写っている山の形や大きさで考える必要があります。より山を魅力的に見せるのにポージングは大事だったりするんです。そして何よりも一番は体の角度でしょうか。この仙丈ヶ岳の写真では、人の胸が右向きであったら山の斜面から左にかかっている圧を受け止めることができるのですが、右側の、特に右上あたりの手前の雪面にやや余分な空間が出来てしまう上、人の存在感もしっかりと増して仙丈ヶ岳が小さく見えてしまう効果が出てしまったりします。なのでここでは人物は左向きにして、なるべく手前の雪面と同化させることで、この一枚から「仙丈ヶ岳」だけがまず一番に抽出されるようにしています。よくわかりにくいかもしれませんが、まあ簡単に言うと、人が右向きだと写真を見た時の視線順序が人→仙丈となるのに対し、左向きだと、人のインパクトが少し流されて仙丈→人となるのです。一番に見せたいのはここでは何か、これに尽きると言うわけで。もちろん山によっては人→山のほうが活きてくる場所もあります。ということでモデルさんには毎度「もうちょっと右回転〜、あちょっと左回転〜、あやっぱちょっと右回転〜、もうちょい、もうちょい、あ、そこ!」と指示してさんざん時間かけて動いてもらっています。で、撮った後に「そもそもここがあんまり良くなかったなぁ」までがテンプレだったりしますけど。

あとは山頂を往復、下山へ

 小仙丈ヶ岳での撮影は全部で1時間ほどだったか、ここからは作品、ガイド写真を撮りつつ山頂を往復してきます。小仙丈から少し進んだところにきれいなシュカブラができる場所も事前に連載写真の候補として考えていたのですが、山の要素がちょっときつすぎるので却下、やはりここは作品向けであります。仙丈は尾根が広いのでアイゼンに換装せずにスノーシュー、ストックの装備で進みました。同行者にはガイドブック用に「模範的な」アイゼン、ピッケルを装備してもらいましたが、どう考えてもリフター付きのスノーシューのがサクサク登れて楽、見ていて苦しそうだ。決してスノーシュー登頂を勧めているわけではないので注意してください。風が弱くて雪がさほど硬くなかったら楽かもよ、くらいに思っておいてください。
 というわけで私はそのまま快適にスノーシューで山頂に立つ。山頂に立ったのは午前8時50分、撮影もまあ無事終了。下りはじめてすぐ、山頂直下のナイフリッジのところで写真を撮っていたらストックを1本カール側に落としてしまい。。。う、くそう、さすがにこの斜面はスノーシューで下るのは怖いでやんす、ということで、ここだけわざわざアイゼンに履き替えてストックを取りに行きました。ほんとちょっと、5mほどなのですが油断は禁物です。しかし、せっかくここまでスノーシュー1本で来たのに、、、ここだけでアイゼンを使うとは、、、何と戦っているのかは不明ですが悔しいなぁ。
 帰りがけに先ほどのシュカブラの場所で撮影を致します。ここはシュカブラがいつも決まってできますが、午前中だと逆光になって模様がきれいに浮き上がってこないので、帰りがけ、午後に撮るのが望ましいです。3枚目の写真だと北岳の左に見える富士山が写っていないですが、カットしたほうが北岳が際立って絵がまとまったりします。北岳と富士山が並んで見える場所ではありますが、富士山と言えど時にはカットすることも大事であります。
 樹林帯まで下り、仕事が大方終わったもので「お疲れ〜」と和やかな雰囲気ではありましたが、何やら同行者の表情が険しい。無理をされまくるのに慣れたのか、何か嫌な予感がしたようである。わかっているじゃないか。まだ明るいこの時間に下山していて、せっかちな写真家、ということは。。。

 同行者「今日のこの後の予定は。。。(震え声)」

 私「明日天気悪いし、とりあえず戸台まで下っちゃおうか。」

 河原に着いたときは当然すっかり真っ暗でした
 真夜中から夜中まで、ごめんなさい

 反省はしておりますが(以下略

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