Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 45
31 Jan 2019更新

2016年発行JTBパブリッシング「すぐそばにある!関東の絶景」・掲載写真「剱岳」


 先日とある会から講演のご依頼を頂き、四国は香川へ行ってまいりました。申し訳ないことに四国というとどうしても石鎚山や剣山方面に足が向いてしまい、香川の地に足をつけたのは今回が初めてとなります。むか〜しの昔に鈍行電車で旅をしたときも野宿したのは阿波池田駅前のへそっこ公園だから(勝手に野宿するな)ギリギリ徳島だし、どうしても素通りとなっておりました。
 講演前に金刀比羅宮を奥社まで参拝させていただき、そこから眺める風景は古都奈良を思わせるほどの趣があり、標高こそ低くともすっくと聳える讃岐富士がとても美しかったです。低山歩きも好きですので讃岐山脈にも気を惹かれ、歩いてみたいなぁと思いましたが一体いつのことになるのやら。しかしながら石鎚などの高い山に登ったとときはいかにもな山風景のためかさほど感じませんでしたが、金刀比羅宮からの景色は四国という地の成り立ちを考えさせられる風景でした。山高きが故に尊からず、ですかね。やはりそこかしこどんなところにも当然ながら歴史があり、高い場所も低い場所も、そして大自然も街も、分け隔てなくすべて繋がっているわけです。かの弘法大師も言ったという「ファーストが故に尊からず、Gガンもありだよね」ということです。
 さて、今回の写真ですが、雨晴海岸から撮影いたしました冬の剱岳と毛勝三山でございます。雨晴海岸は世界でも珍しい風景と言われている場所でありまして、海越しに3000メートルの山々をダイレクトに眺められるという絶景が楽しめます。冬はほとんど晴れないから実はほとんど見られないわけですけど、世界的に珍しい言われていても風景写真としてはベタベタのベタベタでして、とはいえ後発の写真家だから撮らないというのも、ねぇ。やっぱり撮りたいし。持っておきたいし。ということで撮影日は2010年1月27日。今回は山を撮ってはおりますが、下からですのでレポートも短くなりそうです。早くも宣言。
 私は山岳がメインの写真家、やはり下から撮ろうが山がメインの被写体になります。桜とかの撮影でもそうですけど風景主体の方だと桜だけに寄ったりとか、山の稜線のラインをあまり気にしていなかったりとか、というかやはり桜がメインの写真になるかと思いますが、私は真逆になるわけです。気づいてみると、桜入ってねーじゃねーか!みたいな。いやもちろんいろいろ撮りますけど、それぐらいの意気込み。雨晴海岸で言うと、女岩が邪魔だぜ!ぐらいの勢い(女岩は海に出ている目立つ手前の岩です)。いや、これがあるからバランス取れるカットが多いので、さすがにそこまでで振り切ってはいないんですけどね。
 さて撮影は9年も前のことになりますが、当時はまだ「急行能登」という夜行列車がありました。天気図を見て最後の最後まで悩んで、それでも予約なしでうりゃッ!って勢いで家を出ても翌朝には富山などに辿り着くことができる便利なアクセスツールでしたが、そりゃあ最後のほうはガラガラだったからなぁ。。。なくなる訳だ。高速バスだって出発直前に行って絶対に乗れるもんでもないし、北陸新幹線はスーパー早くて楽ですけど今回みたいなケースの場合は前泊する分やはり早めにスケジュール決定をしなくてはいけないし、ほんとね、正直便利でした。前日26日、午後5時に出される予想天気図を確認し、上野発23:33分の急行能登に乗り込みました。たしかこの時だったと思うのですが、もうこの年に運行取りやめが決まっていたので出発前の電車の周りにはカメラを持った人が大勢おりました。というかお前ら、乗れよ〜。ということで乗るとガラガラ。
 翌朝5時56分に高岡に着きまして、6時発の氷見線で雨晴駅へ。乗り換えが4分しかなかったので、もしも急行能登がちょっと遅れたりしたら朝日が撮れなくなるという危険がありましたが大丈夫でした。といいつつ乗り換えはダッシュでしたけど。車窓から見える空は本当に全く問題ないほどの快晴で、まだ暗いですけどしっかりとそれがわかるような感じでした。冬の日本海側の天候としてはあまりないわけですから早くも心が躍ります。しかしながら電車が雨晴の駅に着こうとするとき、その例の撮影ポイントである海岸線が見えるのですが、早くもズラーッと何かが見えてくるのです、ズラーッと。人が、、、もうあんなに並んどる、、、、。当然といえば当然でしょうけど、ちょっと萎えてしまいましたよ。
 普段山の中で撮影しているので、風景写真の場所取りの大変さなんかそこまで知らないわけですけど、やっぱり現場の美しさってあると思うので、これだけ混むとちょっと嫌気がさしてしまいます。自分も写真を撮る側ですから撮らない人からすればその「嫌気」側なのは重々承知しておりますが、それでもなるべく避けたいと思ってしまいます。こちとら仕事なのでいくらかグッとこらえて頑張りますが、でも本当に混むところは撮りたい場所であってもそもそも行かないようにしています。とはいえ反面、こうして人集りができるのは景気がいいわけでもあり、ここの場所がやっぱり人気があるわけであり、どういう形にせよ賑わっているというのはいないよりはいいというところもあります。20年くらい前は山でもいろんな場所で三脚が並んだものですが、今ではだいぶ減ってしまいました。気分良く撮れるのはありますけど、それはそれで喜んでいいのか、と。結局つまるところ人集りを気にせず、自分勝手になれない控えめな私の性格がいけないのかもしれない。三脚構えてるときに「そこ、私が撮りたいんでどいてくれませんか」って言われたらどいちゃいそうだもん。いや、でもそんなこと言われたら手が出るかもしれん。で動画で撮られてツイッターに流されると。
 とりあえず駅から降り、撮影ポイントへ。やはり女岩がポイントになるのですが、幸いこれだけ人が並んでいても私が撮りたい場所にはスペースがあって、腕力を使わずとも無事三脚を構えることができました。こういうのがまあありがたいことで、風景メインの人は撮りたいものが様々に分かれますから三脚を構える場所もいくらか分かれるわけです。山メインの私からすると「あそこで構えて何撮るってんだ?」となるのですが、向こうから見ると「あそこで撮ると山の写真しか撮れないじゃん」となるわけです。まあでも人が多いと一度構えたところから移動するのは難しいですから、とにかく自分が撮りたいものに各々が専念してうまく分散されているようで助かりました。
 日の出の時間から30分弱後にようやく3000メートルの山を越えて太陽が顔を出します。残念ながら気嵐が出るほど冷え込んでいなかったので海岸線はすっきりとしていましたが、まあそれでも剱立山を越えてくる太陽は見応えがあります。手前にいい感じの波が来るようにいろいろ撮ったり、絵になる場所は本当に苦労しません。でもおもしろいなぁと思ったのは、地元の方々が多いのか日の出の撮影タイムが終わるとぞろぞろとどんどん帰っていくこと。東京から来た私としましては、えっもう帰っちゃうの?と思いますが、ふと気がつくとつまり、いやお前が暇なだけなんじゃないか?と。皆さんお朝飯前にちょろっと撮ってるだけで、別にあとはいつでも撮れるから、、、みたいな。なので8時前には海岸線にほとんど人はいなくなり、せっせこ色々撮ってるのが自分だけ。まあ気分はいいけど、見方を変えると補習授業のような感じがしないでもない。。。
 ということで海岸線を歩きつつ、10時すぎまで色々と撮っておりました。ホント昼間は誰もいない。お昼休憩にしようと雨晴駅に戻る途中で山を振り返ると、線路の先にぴたりとはまるように剱岳の姿が。おおっ電車も入れて撮っておきたい!と思ったが、そもそも電車がそんなに来ない。いつまでも待ってるとお昼食べらんないし、夕方の撮影まで押しそうなので、遊びは余裕があるときに、、、ということで自重致しました。というか余裕があるときっていつやねん。
 お昼は一度高岡駅に戻りまして1時間ほどまったりと。目の前が日本海は富山湾、海の幸に舌鼓といきたいところですが、結局チョイスしたのはとんかつだったと思います。こう、なんといいますか撮影で動き回ってるときに刺身とかお腹に入れてもあれなんです。やはりしっかりエネルギーになるものを摂取するべきです、とは言ってみるものの、今こうして振り返って書いていると、あ〜なんで海の幸を食べておかなかったんだろう、と思っちゃいます。ああ、ただ今動いてないからってだけか。
 高岡からもう一度氷見線で雨晴駅に戻りまして、午後1時から後半の撮影に入りました。この時間になると午前中はシルエットだった山肌がしっかりと見えて、まさに山の撮影となります。が、なぜか海岸線に撮影している人はやはり誰もおらず。。。ということでゆっくりと波を見ながら撮った写真が今回の写真です。一応ポイントと致しましては下1/3のところに白波が来るように何枚も撮りますが、その白波もただ入ればいいというわけでなく、下1/3の位置に画面2/3くらい埋めるような白波を待ちます。一線に画面を埋めるように白波が入ってしまうと女岩が目立たなくなってしまいますので、うま〜く白波の切れるところで女岩、で背景に山なみという感じです。これは自然のタイミングですから納得がいくまで撮ります。ただ、どこにどのくらい白波が欲しいか、それがわかっている必要があります。このときはフィルムカメラも持って行っていましたが、ホントにこういうのデジタルで何枚も撮れるからありがたい。しかしありがたいけど、撮れるんだからこだわらないといけないわけです。
 そのあとはテクテクと道路沿いを歩き、波打ち際でなくもっと山ががっつりと見えるポイントまで行って、山が夕日で赤く染まる時間帯まで撮っておりました。実際ちょっと暖かかったからか、ちょっと空気感はもっさりしているような気もしましたがきれいでしたよ。薬師岳も見えて、満足満足。
 日没後に今一度波打ち際、海岸線の撮影ポイントに戻って薄暮の風景をおさめます。今度は稜線の向こうから上がってきていたお月さんが山と海を照らし、忙しかった一日を労うかのようなしっとりとした優しい景色を見せてくれました。この雰囲気を壊さぬよう20〜30秒の低速シャッターで波を流して静かな絵を撮って、この時の撮影を終えたのでした。
 帰りはさすがに特急プラス新幹線で帰宅できるので高岡へと戻り、当時の特急はくたかで越後湯沢、そこから上野へと戻りました。高岡駅では乗り換えが15分くらいしかなくて、パパッとすぐ食べられるようなものを買ってはくたかで晩御飯、越後湯沢では10分しかないから新幹線のホームまで小走りと、なかなか帰りも忙しいのでした。とりあえずは撮れてよかったです。

なんとなくなんです

 それと先日17日にはファイントラックさんのTOKYOBASEで山岳写真の講習会をやらせていただきました。定員25名埋まるのか心配でしたが、おかげさまでキャンセル待ちも結構あったようで有難い限りです。しかし参加していただいた方の何かになったのだろうか。正直なところ、もうちょっと面白くしようとネタを用意はしていたのですが、みなさんあまりにも真面目に聞いておりましたのでこっちがびっくりしてしまいました。こ、こんなに真面目に聞いてる。。。
 それと、終了後に何名の方かにサインをお願いされまして、いやホント、これも有難い限りで。山で一匹狼で戦っているものですから(実際は狼というよりヤマネ)、応援いただけるというのは本当に、本当に嬉しいことです。

 ということで頼まれてシャシャシャッと書くと、
 「へぇ〜、ちゃんとサインとかってあるんですね〜」と。
 「ま、まあそりゃあ。。。ははは」

 まさか適当に書いてるだなんて、とても言えまい。

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