Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 28
08 Mar 2018更新

雑誌 アサヒカメラ・2016年2月号掲載写真「八甲田山」

 

 いきなり暖かくなってきました。今冬はだいぶ寒かったので、本当にようやく、スパイクを履いての練習が始められる、と思いきや暖かくなった途端に花粉症が。体調がやっとよくなってきたかなぁ~というところなのに、鼻は詰まるは眼は涙目、頭がボーッとしてしまい、何でしょう、このダメさ具合。逆療法で花粉を浴びに高尾山でも行った方がいいんでしょうか。
 暖かくなってそんな日を送っておりましたが、今は東北に来ております。マイナス10度、ありがたい。花粉飛んでない。ということで、また外出先にてレポートを書いております。時折外出先でたいした資料もないままにスラスラと原稿を書いたりするのですが、何せ記憶力がいいもので、どの取材の時でも事細かによく覚えております。もちろん今まで撮った写真もほぼ全て頭に入っており、外出先で写真の注文が入った時でも、あれがある、こういうのはない、とかは普通に即答できたりします。
 記憶力は風景とかの写真を撮るにはとても重要なことで、山を歩いているときもだいたい頭の中でフレームに風景を収めながら、あそこで撮るとか、あそこはよくないなどと記憶していきます。こういうスタンド能力があるかないかで、風景の写真家に向いてるかどうかを判断できるのでは、とも思います。時々、気持ち悪い、と言われるぐらいは記憶がよかったりするのですが、本人は気持ちいいです。ちなみに記憶力がいいと黒歴史の記憶ももちろんはっきりしているので、これは気持ち悪いです。まあヤバいくらい記憶力がある必要はないですが、いくらか強い方が何かといいのでしょう。
 さて、今回の写真ですが、雑誌アサヒカメラにて掲載したもののワンカットです。撮影は2012年2月29日、八甲田山での写真です。この時は他雑誌での連載の撮影も兼ねていましたので、同行のモデルさんを伴っての撮影でした。写真はその連載をまとめた単行本「究極の絶景」にも載せていますので、ご参考まで。
 この他雑誌の連載は私の企画、立案、撮影、プロデュース、とハイパーメディアクリエイトしているものでありまして、無論取材費用もすべて自分で負担しております。というと格好よく聞こえるんですが、撮影に失敗すると二人分の取材費が重くのしかかるので、撮れるまでは生きた心地が全くしません。また、そんなに贅沢もできませんので、二人分の青森までの交通費、、、、ということで同行してもらう人には申し訳ありませんが行き帰りとも、あのパンダ号でこざいます。交通費では無双を誇るパンダ号。しかし、、、行き帰りとなると体への負担は如何程だろうか。何せ冬の八甲田、0泊3日、みたいな感じである。行く前からもう死にそう。
 冬はなかなか晴れない八甲田。天気図を見るに、これは行くしかねぇだろ!という高気圧が巡ってきたのでパンダ号に乗り込んで青森へ。と言ってもギリギリでチケットを取ったので朝7時着の便が取れずに2便で参戦。八甲田の上に着くのがお昼になってしまうので、撮影時間が少ないのはやだニャーと悩みましたが、この天気は見逃せないのでとにかく行くことに。こんな天気はまたとない。ちょっとでもいいから撮れれば及第、贅沢を言っている場合ではない。
 半分死に体になりながらバスの中で朝を迎え、カーテンを開けてチラッと外を見るとすっきりと岩木山が、、、、見えてねえ!!ど、ドン曇りじゃねえか!わざわざ体に鞭打ってパンダ号で来たというのに、どうしたらいいのかわからずオロオロ。目の前で何が起こっているのか全く理解できず、とりあえず、考えるのをやめた。
 青森駅に到着、女性車両から降りてきた同行者にはかける声もない。ほ、本日は大変お日柄もよく、、ようこそ青森おいでやぁんせ。来ていきなりまた来てくんろ。みたいな片言の方言しか出てこない。わざわざ遠方まで来てもらっているのに何たる醜態。青森駅に着いてもなお、八甲田方面は雲の中、という感じでした。
 とりあえずどうにもなるまい。最悪はここから八甲田に行かず、時間潰してまた夜行バスで帰るというシュールな行動が頭をよぎるが、パニックにならないよう、いつも通りの行動を心がける。いつも通り、そう、青森駅に着いたらアウガに行き、地下1階の丸青食堂で三色丼を食べるのである。
 朝から早速三色丼。二人で3400円。よくわからない。お金をかけて何しに来たんだ。。。もうどうにでもなれ、そんな気持ちで食べまくり、頭の中はとりあえずお花畑に(現実逃避)。ため息をつきながら地上へ上がると、は、晴れてる!バス早くしろ~!と躁鬱になりそうなテンションです。
 ということではやる気持ちを抑え、どっピーカンの八甲田山へとやって参りました。いつも通りのセリフ、こういう天気になることは天気図を見ればわかりきっていたこと、普通でしょ、今回も一瞬の焦りも見せなかったね、戦いとは常に二手三手先(以下略)と吐いてみるものの、同行者はことばの意味はわからんがなんだかすごい自信だね、程度の反応。おいおい、お金賭けてみろって、生きた心地しないから。っていつの間にか岩木山までくっきり晴れてやがる。罪な奴だぜ!
 ということでお昼にスタート、いられる時間は4時間です。とりあえずロープウェイ駅の目の前から樹氷原がはじまりますので、どんどん撮っていきます。いつも後から気づくんですが、実は撮影って結構時間かかるので、こだわって撮ってるとどんどん時間が過ぎていくんです。時計を見ては焦るのなんの。ようやく最初の樹氷原を切り上げ、宮様コース分岐まで下ります。とまあ、ここの樹氷も良いのでまたも時間がかかるかかる。他雑誌の連載写真はここで抑え、できる限り進もうと赤倉岳へと向かっていきます。
 宮様コース分岐から赤倉岳まではやや急な登りですが、樹氷に囲まれているので撮影がとまらない。そんな中で撮った一枚が今回の写真です。今回はちょっとレンズのお話を入れてみようと思って、この写真をチョイスしてみました。
 この太陽ピカーンという「光条」ですが、これはレンズによって写り方が変わってきます。レンズには絞り羽根というものがありまして、これの枚数によって線の出方が変わってきます。カシャッといった瞬間に閉まるアレです。この羽根が偶数枚のレンズは光の線がそのまま、たとえば6枚だったら6本出るのですが、奇数のときは倍の数の線が出ます。これ、結構好みがあるかと思うのですが、私はと言いますと、6本のようなきれいな感じは単純過ぎてお絵描きみたいで嫌、この時使っている羽根7枚レンズの14本が上品でナチュラルな感じがして好きなんですね。光降り注ぐピカーンという感じで。
 ということでキヤノンのEF17-40mmF4Lという広角レンズをわざわざ使っているんですが、現在では広角レンズはさらに描写のよいEF16-35mmF4L・ISというのが出ているのでそちらも常用しております。この八甲田のときはまだ発売されていなかったEF16-35mmF4L・ISですが、困ったことに絞り羽根が9枚となっており、光条を撮るとギラッギラのギランギランになるわけです。山に登ってるとこの光条の写真というのをよく撮るもので、かといってギラッギラのギランギランでは納得がいかないわけですよ(これの方が好きという方はごめんなさい)。なので最近はほぼ同じ焦点距離のレンズを2本、わざわざ持って山に行っている、という。正直何だったらEF17-40mmF4Lと心中してもいいのですが、EF16-35mmF4L・ISの方はブレ補正まで付いているために使い勝手良過ぎて、これまた外せない。というわけで光条だけのためにEF17-40mmF4Lもお供させているこの頃です。一概に光条といっても、このように好みがありますので、気になった方はこれから光条の形も見てみてください。見比べ慣れてくると自分の好みとかが出てくるかもしれません。夜景とかなら、ギランギランのほうがいいかも。

そんなふうに考えてた時期が、俺にもありました。

 私は自分のことを「俺」だなんて絶対言いません。ですが、そんなふうに考えてた時期がありました。スノーシューの話です。このときは同行者にスノーシューを使ってもらい、私はワカンだったのですが、赤倉岳の登り、断然ワカンが速かったです。というのもこのとき用意したスノーシューはリフターがないやつだったんですね。なので登りにはめっぽう弱い。未だに山に行くと「この山はワカンだよ、スノーシューなんかで来る奴は山知らねえ奴だ」などという声を聞きますが時代は変わりました、リフター付きスノーシューは無敵です。というか主役はリフターです。登りでの強さといったら月光蝶なみです。しかしこの八甲田のときは私もまだリフター付きスノーシューを使っておらず、やっぱり山はワカンだね、とそんなふうに考えてた時期がありました。
 ともあれこのときは赤倉岳に登ったところでタイムアップ。もう戻らないとロープウェイ最終便に間に合わない。ということで同行者は赤倉岳すら踏めず、下山へ。帰り際、見下ろす広大な樹氷原がきれいでした。こういう広範囲の樹氷原を撮るときに注意しなくてはならないのがスキーヤー。パッと見ではきれいでも、目を凝らすと樹氷原に紛れていたりします。シュプールもです。もはやコンボイの謎の敵の弾レベルです。なので隅々まで確認してから、シャッターを切らないと爆死するわけです。
 ロープウェイ山頂駅に戻り、到着時に撮っていた場所で夕方バージョンを撮影。ギリギリまでできる限り撮ってました。でも、これこの日八甲田山赤く染まるぞ。。。まさかこんなチャンスの日に下山するって生殺しではないですか?しかし、帰りのパンダ号もありますし、何せテントも持っていないんだからどうにもなりません。うわあぁぁぁ~と駄々をこねながら、泣く泣く下山。
 帰りのバスからは真っ赤に染まる八甲田山を見せられ、挙げ句の果てには夕日が岩木山の山頂めがけて沈むダイヤモンド岩木山まで出る始末。と、撮らせてくれ~という叫びもどうにもならず、こんなことになるなら生まれてこなければよかったと思いました。


 「ちょっとでもいいから撮れれば及第、贅沢を言っている場合ではない。」
 という先程の冷静さはどこへ?
 ああ、思い出すだけでも悔しいですよ。

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