Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 23
16 Dec 2017更新

2014年発行「厳選雪山ルート集」掲載写真「焼岳」

 

 どうも毎度。世界一の山岳写真家、西田省三です(カメラにぶら下がるオーナメントの数で世界一申請中)。ここ最近はちょこっとテレビなどに出ることもあり、見ていただいてる皆様からのお便りメールも増えております。ありがとうございます。絶滅危惧ジャンルの写真家ですと、本当に一匹狼で孤独に活動しておりますので、大変励みになり、また明日一日でもいいから生きていこう、という気持ちになります(いや、いい写真撮ろうと思えよ)。できるだけお返事をさせていただいているのですが、何かとガンプラつくったり、ホライゾンゼロドーンやったり、アクアビーズ作ったりと忙しい日も多く、メールを返してないこともあったりするのでこの場を借りて、ひとつお返事を。
 えーと、ペンネームは「板橋区のひとみちゃん」からのお便りです。
「西田さんが苦労して登って、寒さに耐えながら必死に撮った写真を、私たちは暖かい部屋で鱧と松茸の土瓶蒸しを片手にネットで見て、きれい~とか言ってるのってどうなんでしょう?」
 いや、、、いいんじゃないでしょうか、それで。むしろ鱧と松茸の土瓶蒸し、というところがちょっとひっかかりますが。何と言いましょうか、私も一応芸術家の端くれ、皆様に見ていただいて喜んでもらえるのは有難いのですが、やはり根源的には自分のカタルシスのためにやっておりますもので、結局のところ自己満足でございます。山の写真をどうしても撮りたくて、撮らないと暴れちゃうぞ~という自分を抑えるためにやっております。なので撮った瞬間に自分の中では完結しており、そこからは別物でございます。
 その行為だけだとさすがに暮らしていけませんので、何とかそれを売り物にしているわけで、それでお恥ずかしくも皆様の前に作品とか言っちゃって露出しているわけです。ということで、写真を見せる、見ていただく、というのはすでに二次的なことなんですよね。なのであとはどんな形であれ、炬燵に入りながらだろうが何だろうが、見ていただいて楽しんでいただければ、と。ただ、そこで楽しんでもらえなかったら、この写真は美しい!と思ってもらえなかったら、私の写真家としての社会的存在意味はありません。
 蛇足ですが、撮り手で「自分が撮った写真でこの大自然を多くの人に伝えたい」とか「この美しい瞬間を皆と共有したい」というのが自分の第一撮影目的、という考えの方には、私としては疑問に思われます。自分の撮影欲求が第一目的ではなく、「伝えたい」「共有させたい」が第一目的というのは、もはや写真家の仕事からは離れているわけで、芸術とは違うものかと。やはり芸術家たるもの、芸術とは何か、芸術を成り立たせるそのものに迫っていかねばなりません。
 ああ、すみません、テレビ番組は出演させていただいておりますが、皆様に楽しんでいただくこと、エンターテイメントが目的で頑張っております。写真家としては、撮りたくても撮れない瞬間ばかりで、現場では芸術活動を止められて暴走寸前なのを堪えて頑張っております。
 ということで前説が長くなりましてすみません。メールを送っていただいた方はこんなのを真面目にメールで返されたら迷惑以外何者でもない、と書き綴ったあとに思いました。失礼しました。
 さて、今回のレポートですが、拙のガイドブック、厳選雪山ルート集からのものです。前説でこれだけ書いといて何ですが、ガイドブックの写真ということで、、、その、、、これ「作品」なの?と言われたら、違いますね。。。テヘ。すみません。ガイドブック用の写真です。一体どこからが作品なんだよと言われたら、「俺の心が震えたとき、かな(止めて引く)。」と言いたいところですが、まあ何でしょう、現場状況、地形の説明とか、植生状況みたいなものがパッションを超えてしまったら、ガイドブック用、と言うんでしょうか。やはり作品は山というものも超えて「美しさそのもの」に集約されなくてはならないと思っております。拙の人物を立たせた著書「究極の絶景」はそのハイブリッド、ということで楽しんでくださいませ。
 撮影は2013年12月17日。この年は雪の降り始めが遅いわけではなかったんですが、焼岳という微妙な標高の山のためにだいぶ待たされたというか、ちょうどいい積雪のタイミングを見計らっていたら月も半ばになってしまったでこざるの巻。雪崩の危険もあるルートなので早めの時期に終わらせたいのですが、なかなか天候が折り合わず難しかったです。結果、絶対晴れるというわけでもない、でも晴れるかも、という微妙な天候で突っ込んだ撮影でしたが、まあガイド用なら何とかお許しいただける、というところでしょうか。
 焼岳は登山口に中の湯温泉があるので、軽荷で出かけてまったりと温泉泊、朝早く出れば日帰りできるのでもう楽々、のんびり行きますか、とだらけていた私に背後から厳しい愛のムチ、なんとこの年は旅館の改修で冬季一時休業中でした。ということで一気に荷物が増えてのテント泊、天と地ほどの差です。しかもテントを張ったのは登山口から急坂を登った先の樹林帯なので、旅館と標高差100mくらいなんじゃないかという、温泉の煙が届きそうなところ。うーん、泊まれたらどんだけ幸せだったことか。
 初日は悪天なのでゆっくりめで自宅を出発、夜が長いのが寂しいので、ちょうど真っ暗になるころにその幕営地に着くようにしました。パッとテントを張って、パッとご飯食べて、パッと寝ました。
 翌日は朝焼けを撮ろうとも考えていましたが、いまいち気持ちが盛り上がる構図が浮かばなかったのと、結構雪が深かったので、無理に急ぐのはやめることにしました。今考えると甘ちゃんです。樹林帯の雪の深さは深いところでスノーシュー履いて膝下くらい。わさわさと雪を掻き分けて登っていきます。見上げると霧氷がなかなかきれい。なかなかのラッセルでやはり時間がかかり、樹林帯を抜け出るのに2時間ほどかかってしまいました。
 樹林帯から出て、雪崩の危険のあるボウル状の沢に入っていきます。積雪、雪質ともに雪崩の起きる感じはなさそうでしたので、気持ちよく突っ切るように歩いていきます。とはいえ何だかんだ万が一雪崩が起きたときに喰らいにくそうな場所を選んで進んでます。
 そんなこんなでボウル状地形の上部で撮った写真が今回のものです。ガイドブック用の写真を撮るときも、これをメインカット、あれをサブカット、と頭でページを組み立てながら撮っているのですが、焼岳のメインはこれがいいだろうな、と思いました。夏山だったら、まずはどんな容姿の山なの?という登る人が一番最初に興味を持ちやすいカットをメインに据えることが多いのですが、一般的には誰でも登れるからそれでよいかと思います。
 一方雪山だとまず夏山は登っていて当たり前で、積雪による変化など、それ以上の情報を盛り込んでいかないと、情報不足だと思っております。焼岳は上高地から見る景色か綺麗で有名ですが、雪山ガイドブックでそれを載せても、写真はきれいでもあまり意味はない、となるわけです。
 その他メインとしてはボウル状地形に入る手前からの、南峰と北峰と地形がわかるカットもいいのですが、何というか、「ザ・ガイドブック」という感じが出てしまいます。ここからは私の個人感、趣向みたいなものですが、「ザ・ガイドブック」からもう一歩踏み込んで、ここ登ったら面白そう!という感情が追加されるようなカットを使いたい、と心がけております。ということで、今回のメイン写真のような感じになります。

面倒くさがり屋です。かなりの。

 ボウル状地形からスノーシューのまま稜線の分岐に上がり、北峰山頂まであと10分くらいでしょうか。ほんのあとひと登りなんですが、ちょっとここだけ岩場になってますのでアイゼンに付け替えて、登頂。到着した午前10時頃には残念ながら高曇りみたいな、ちょっと残念な天気になってしまいました。まあですが、もともとそんなにいい予報ではなかったので、何とか、といったところでしょうか。展望はいいのですが、光が薄いのであまり山に陰影がつきません。とりあえずガイドはなんとかなったけど、、、、作品系が撮れていないので正直欲求不満が溜まります。う〜ん、残念。
 ちょうど登頂した頃に頭上をヘリが旋回していました。平日のこんな天気の日に登ってる奴いるよ、暇な奴だなぁ、と思われてるだろうな、と。すみません、と考えてしまう性質の人間です、私は。
 南峰方面を見下ろすともくもくと噴煙が上がります。熱いのか寒いのかよくわからん山です。正直焼岳の山頂風景につきましては、碧い池の見える夏が好きでございます。しかしながら穂高の眺めは最高の場所で、ドズンと大迫力、なつかしのジャンボマックスのように立ちはだかります。これは冬のほうが壮観ですね。
 一通り撮ったら下山、テントを回収して中の湯バス停まで下っていきました。幕営地から山頂まで、登りで結局5時間ほどかかりましたが、下りは約1時間半。なんでしょうかこれ。あ〜中の湯温泉~。風呂ぐらい入らせてくれ~。結局毎度の通り、入浴せずに帰宅しました。寄ろうと思えば平湯とか、松本周辺にもあるんですが、いかんせん車がないもので面倒です。


雪山は泥とかで汚れないから、いいよね。。。?
やっぱりダメでしょうか?

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