Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 19
11 Oct 2017更新

NHK-BSプレミアム・にっぽん百名山2016秋スペシャル放送写真「黒部五郎岳」

 

 この写真は2016年10月31日にNHK-BSプレミアムで放送されました、「にっぽん百名山スペシャル・でっかい秋みつけた!」で使用した黒部五郎岳の写真です。というかまたで申し訳ございませんが、今このレポートを書いているのも、そのにっぽん百名山秋のスペシャルの今年放送分の撮影中でございまして、現在絶賛停滞中でございます。放送は10月30日(もしくは31日、すみません詳しく知らないです)です!
 今年の秋のスペシャルでは昨年とはちょっと趣旨が違いまして、私が作品撮影する現場、ではなく、今年の山の日にNHK総合で放送されましたドローン君絶景を再び、ということでドローンの撮影監督をしております。実のところ私は写真を撮りたいのですが、どんなに美しい瞬間でもドローンで美しい映像を捉える、という写真家にとっては半ば拷問取材でございます。フォオオオオ!こんな絶好の瞬間、しゃ、写真を撮らせろ〜!と暴れてはみますが、当然のことながらディレクターに取り押さえられて粛々と頑張っております。本当のところはスタッフ一同死ぬ気で頑張っておりますので、ぜひ放送をお楽しみに。ちなみに今年の撮影地は八幡平から岩手山をつなぐ裏岩手縦走路。私がここでドローン飛ばしたい!とオススメしたばかりに皆様、避難小屋にアルファ米とともに閉じ込めて申し訳ございません。心からご冥福をお祈り致します。秋にドローン飛すならココ!って自分で勧めておきながら現場では写真撮らせろって、よく考えるとかなり悪質ですね。
 さて、お話を本題に戻しまして、昨年秋のBSにっぽん百名山スペシャルの撮影です。こちらも打ち合わせ時にどこかオススメの場所を、ということで私の好きな、そしてあまりテレビなどでは放送されないから面白いだろうと秋色の黒部五郎岳を推させていただきました。場所が場所だけに行程も長く、オススメしといてこれ晴れるんだろうかと、自らの術中にハマった感じです。写真の撮影ならパッと行ってパッと撮れるんですが、番組撮影となるとだいぶ工程が違いまして、かなりの時間をかけて撮影しながら進んでいきます。ので天気を狙って、と気楽にはいかないのです。うまくいけばいいですが外してしまうと、この写真家は一体何を狙いに行ってるんだか?、とハテナマークをつけられてしまうという。ガイドさんなら、登頂!でなんとか話になりそうなのが裏山でございます。
 撮影日は2016年9月30日。天気予報は前半だけ少し晴れがあるものの、大事な後半が壊滅的だったので取材延期するかと思っており、作成中だったHGUCサザビーのスジ彫りでも進めちゃうかなぁ、とのほほんとしていたのですが、どうも行くらしい。。。と、撮れなかったらどうしよう。というか黒部五郎小舎の営業が30日までだから、行くしかないのね。
 ともあれ5日間の日程で取材決行です。もう逃げられません。予定では1日目は新穂高温泉~鏡平、2日目は鏡平~双六岳、3日目は双六岳~黒部五郎小舎、4日目は目的の黒部五郎カールを撮影して双六小屋に戻り、最終日は双六小屋から下山、という日程。黒部五郎岳は遠いので1日では入れず、帰れず、の場所なので自然とこういう日程となります。予備日なし。なし、、、だと?この壊滅的な予報でワンチャンスってあんた、どーすんのこれ。もはや70%くらいは撮れない写真家として放送決定じゃないですか。もちろん天気予報というのはいくらでも変わるのはわかりますが、ただ単にコース中のどこかで美しい写真を撮ればいいのではなく、黒部五郎岳を撮らないといけないんです。怖いです。思わずぶるぶるっと震えました、おしっこした後みたいに。
 初日はもちろん雨の中を出発です。いちおう翌日の天気は悪くないので、せめて鏡平だけでも撮ろう、という切ない気持ちで歩いてました。構成メンバーは私と、ディレクター、カメラマン、音声さん、それとたくさんの荷物を背負ってくれる歩荷さんが2人、の計6人です。ディレクターと話しながら、暇なときはガンプラ作ってますよーとか、主食はプロテインですよーとか、気楽な話をしながらですが、心の中は撮れるかどうかでピリピリです。でもどちらかというと、「俺の方がもっと荷物を背負えて速く歩く自信あるぜ。やれやれだぜ。」と歩荷さんにライバル心を燃やしていた気もします。小雨の中でもいくらか撮りましたが、たいしたこともなく鏡平へ。この天気ではどうにもできません。
 撮影2日目。予報通り、朝はなんとか晴れました。朝焼けの雲から始まり、いい感じ晴れの日を迎えましたが、まだ鏡平。個人的には走ってでも双六岳に行ってしまい、撮影をしてしまいたいのですが、工程をじわじわと撮っていくわけです。これでは進まんよ。。。でも映像だと急に端折れないから仕方ないのです。わかってはいるけど、走りたい。しかし、走ってどうする。。。はい、弓折分岐につく頃には槍穂高には雲が湧いてしまいましたよ。双六岳すら厳しそうだ。
 さらに追い打ちをかけるように、この年2016年の紅葉は壊滅的という状態でした。雪が少なすぎて花が咲くのも異常に早い年でしたし、全株水枯れみたいな様相。なんかこう、紅葉の写真でごまかすことも出来ない感じです。こ、紅葉の黒部五郎カールの写真なんて、もう遥か彼方の話です。まあ、奴は草紅葉と奇岩という心強いコンテンツも持っているので、何かしらは出来ると思うのだが。うーん、生きた心地が致しません。
 その日の午後は双六岳に向かいまして、夕方は樅沢岳に登りましたが、槍穂高が見えないのでどーにもなりません。ポイントポイントに出掛けるも写真が撮れない写真家って、何なんでしょう。。。晩はいつもお世話になっている双六小屋の小池岳彦さんにお・も・て・な・しをしていただいて大変恐縮ですが、そういう訳で何とか番組でしっかりと双六岳と黒部五郎岳を流せればと思うのですが、天気が悪いのですみませんがどーにもなりません。悲しいけどコレ、現実なのよね。。。
 3日目、大雨。その翌日も予報は悪いので雨の中黒部五郎小舎まで行っても帰るだけ、の可能性が大ですが、とにかく進むしかない。何というか、とにかく大雨でした。登山道が沢になるくらい。途中三俣蓮華岳で雷鳥を見かけ、放送では雨の中でも「癒されますね~」なんて言ってた私ですが、この状況をどう打破するかで心ここに在らずです。ちなみに私たち雷鳥は、天気の悪い日によく出てくるんですよ〜、ってやかましいわ!とも思いましたが、あいつらの方が厳しい自然と戦っておりますな、なのにあたしはどうしたら、、、あきらめたらいいの?あきらめたらいいの?と、どこからか悲しい酒がかかってきてしまいましたが、あきらめたらそこで終了ですよ。
 4日目、雨です、雨。ここしかない大事な日が雨。ですがここで私のメンタルは巻き返し、トランス状態に。墜ちろ、蚊トンボ!というのも最終日はまさかの晴れるかも予報が出たので、ここはひとつ、この晴れに勝負をかけて、とにかく黒部五郎カールを撮る、と。そして朝早く撮って帰れば(急いで)、一日で帰れないこともない、と。途中で倒れて帰れない人も出るかもしれないけど、帰れないこともない、と迷惑にもスタッフ皆さんに説得にかかりました。実際は他人なんか知ったこちゃないという精神の、全く迷惑な話です。
 しかし、何ということでしょう!ディレクターも案外その気だったのです。そしておもむろに荷物から百名山Tシャツを出し、「このTシャツは俺の勝負服で、これを着たときは晴れなかったことがない!」と自信満々で着込んだのです。そ、そのTシャツにそんな付加効果があるなら、初日から着るという選択肢はなかったのだろうか、という疑問を持ってはいけない。とにかく明日は晴れるのだ!ということでこの日は停滞。つまり気合の入った人は別として、それ以外の方々は、一日で、最低でも黒部五郎小舎から帰らなくてはいけなくなりました。晴れたらカール撮影後にその日中に下山しなくてはいけないので、さらにかわいそう。
 さて最終日。晴れ!いやぁ、何とかなりました。まだ何も撮ってないけど。とりあえず朝食後、急いでカールへ。私が焦って速く歩くもんだから、皆さん息が上がってます。でも全体的に早回しで行かないと、本当に帰れない人が出る危険もあるので、色々なことを考えながら歩いてます。他人に鞭を打ってるようですが、実は色々と気を使って、鞭を打ってるんです。
 黒部五郎のカールは独特の風景を持っているので、紅葉が悪くても草紅葉と奇岩で何とか絵を作れます。しかしながらせっかく番組枠をいただいているので、ありきたりの写真ではつまらないというところ。いくらか山岳写真を撮ってる人なら草紅葉と奇岩なんて見たことある風景で、言うなればテレビでやる程じゃねえだろ、と言われそうです。特に私は山岳写真界ではずば抜けて年齢も低いこともあって、目の敵にされて嫌われ者扱いされている、フランダースの犬の犬じゃないほうの貧しいボウズみたいな私ですから、より手厳しく見られてしまいます。
 ということで、まあいつも心がけていることではございますが、私がモットーとしていることのひとつ、「誰もが見たことのある景色で、誰もが見たことのない写真」を考えなくては、とひと工夫加えようと致しました。黒部五郎カールはカール内に沢が流れるほど水が豊富な場所で、いくつか池塘も点在します。しかし実際は池塘はかなり離れた場所にあり、登山道からかなり離れて撮りに行かなくてはならないアンオフィシャルな所にあります。なのでそうやすやすと撮れないのですが、一箇所だけ前から気にかけているオフィシャルの場所があり、そこの池塘を生かそうと決めました。ただ問題は、なぜ気にかけていたのにすでに撮っていないかというと、晴れたら干からびるレベルの池塘、いわゆるどっちかっていうとただの水たまりなんです。なので通常は凹地なだけの場所で、以前見たときに、雨降った直後なら絵になるかなぁ、気にかけていました。今回は大雨たったので、これはいけるかも、と。ということでこの「幻の池塘(格好よく言ってみた)」をポイントに、秋の黒部五郎岳を撮りました。せっかくなので水鏡も加えといてあげました。若干構図を作るのに微妙な場所ではありましたが、なんとか、なんとか及第点はあげられるかな、と。いやぁ、よかったよかった。これからここから一気に新穂高温泉まで下山しなくてはならないけど、よかった、、、のか?

これでは道化だよ。

 さあ、ここからは皆で下山を目指します。何やかんやで一番晴れた日になったので、カメラさんも帰るだけでなく、色んな箇所で撮りながらの下山です。こ、これはどうなるんだろう。本来ならレッツゲラーオブヒアなんだが、どこかほのぼのです。
 双六小屋まで戻ったのが午後2時。みなさんかきこむように牛丼とかカレーなどをお腹に入れます。ちなみに私は登山中にしっかりとした食事を取るのがあまり好きではないので、ケーキをいただきました。2個食べていいと言うので2個いただきました。
 双六小屋からは岳彦さんがたまたま下に用事があり、同行して下山してくれるとのこと。これが本当に助かりました。というのも私も岳彦さんも結構攻め(責め?)の精神の持ち主で、遅い人に対してプレッシャーをかけていく人間なんです。さすがに5人の撮影隊に対して私だけでプレッシャーをかけるのは難しいところ、強力な援軍です。その心強さといったら趙雲並みです。
 我々二人がなるべく早いペースで歩き、歩みが遅くならないように引っ張ります。少し間が空いたらちょっと待ち、撮影隊がうちらに追いつくとすぐに先を進みます。ということで我々は休み休みですが、撮影隊は休みなしで歩き続けなきゃいけないわけです。かわいそうに。最後の方でディレクターは我々に対し、「このドS野郎ども!」と叫んでおりました。すみませんでした。
 新穂高温泉に着いたのは夜の7時30分。ここから待機していたロケバスで一気に帰ったとしても日を跨ぎそうです。翌日ディレクターは仕事、カメラマンさんは八幡平に撮影、音声さんもどこぞやに行かなくてはならないようで、かなり厳しいです。かわいそう。
 最後にディレクターにかけていただいたお言葉がこちら。


 「西田さんは明日サザビー作るだけだもんな!」


 皆様本当にありがとうございました。
 お疲れさまでした。
 サザビー、無事完成しております。

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