Report

— 過去に発表した作品の取材レポート。撮影時の舞台裏を、約2週間間隔でほのぼの更新。

REPORT - 18
23 Sep 2017更新

2016年発行JTBパブリッシング「すぐそばにある!関東の絶景」・掲載写真「苗場山」

 

 この写真はJTB関東の絶景で使用しておりますが、正確には掲載したのはこれの縦カットでして、つまりその、このレポートの幅には収まりが悪い、ということで勝手ながらここでは横カットを使用しております。じゃあ違う写真じゃん!、ということですが、同じ時間・場所、まあほぼ同じ写真ですので御許しください。
 こういうことは仕事上よくあることでして、誌面の都合に応じて対応しなくてはならなかったりするので、あ、これは使いそうだな、という場所やシチュエーションでは縦位置写真も横位置写真も撮っておくことがあります。というか写真業の基本です。ちなみにそういうのが体に染み付いているからか、以前デジ一眼で動画を撮っていて、その癖で縦で動画を撮ったことがありました。後でそれを見て、これ、一体何に使うんだろう。。。。と思ったものです。でも現代ではみなさんスマホで縦動画ふつうに撮ってるか。
 さて今回の写真ですが、こちらは2013年9月28日に撮影。通常山岳の紅葉というと、早い北海道で9月20日あたり、3000mクラスの山で稜線が9月下旬、一番見どころの中腹あたりが10月上旬くらいで見頃を迎えるのですが、この苗場山、2145mの山の割に早いんです。お隣の標高同じくらいの谷川岳はもうちょっと後なので、ここらだけ早く迎えるという、何となく生き急いでいる私に似ている気がしないでもないです。そんなこともあって、大好きな山のひとつであります。
 何で紅葉が早いかというと、おそらくこの苗場山の特徴であるテーブル状の山頂部がそうさせているのでは、と思っています。周りを高い山に囲まれているでもなく、入りくんでもいない空も開けた平らな高原は、日の沈んだ夜の放射冷却の効き目が凄いんでは、と。昼間は結構暑い山なので、その寒暖さもツンデレレベルなのでは、と。
 撮影は天気を見定めて、小屋に一泊のプランです。前日の27日は日頃の人生の悩みによる疲れや世界内存在のディオニュソス的解釈からの地平の設定研究、深夜に及ぶeスポーツのやり過ぎ、などの理由で夕方狙いでゆっくりと出発しました。
 いつも通り、私は車のライセンスを持っておらず殺しのライセンスしか持っていないので、越後湯沢からはタクシーで和田小屋へ。登山口あたりだとまだ青々としており、展望が開けてくる中ノ芝の木段まで、チャッチャッと歩いていきます。
 中ノ芝あたりではドウダンツツジがなかなかの赤色を出しており、いい感じでした。明日はここ撮ろうとか、あそこ撮ろうとかロケハンしながら、気分良くアーロン・ネヴィルなみのエンジェルボイスで歌を口ずさんでの登山です。ここら辺りの木道は本当に気持ちがよくて歩きやすいので、苗場山ってもっと人が増えてもいいのになぁ、と思ったりします。
 神楽峰を越えると、ドスンと苗場山が見えてきます。苗場山というと山頂のそのテーブルばかりがフューチャーされて、あまり苗場山の山容というものが見えてこなかったりするのですが、神楽峰から富士見坂にかけてはザ・苗場山、といえるゴツい山容を見せてくれます。そして富士見坂の紅葉もなかなか。ツツジは株が強く、ナナカマドとか弱っちい木に比べると、毎度結構いい色を出してくれます。今年は紅葉が悪いかも!という年はツツジ系の山に切り替えたりするぐらいです。
 急な坂を登り切って、テーブルに出ると、おお!秋!ここまでは笹の緑も目立つのですが、広大な山頂湿原はきれいな草紅葉がメイン。真っ赤なナナカマドもポツポツとあり、その中に緑のラインで模様を描くシラビソが映えます。この広さ、もっと多くの人に知ってほしいと思いますよ。たいして山に登らない人でもちょっとの頑張りで行かれるので、ぜひ登ってみてもらいたい。ここまで一気に誰でもヘリツアー、なんてやったら相当な人気が出そうだ。ヘリポートのスペースもあるし、ビッグサンダーマウンテンを作っても違和感がない、ほど広い。ここでビッグサンダーマウンテンやったら気持ちいいだろうなぁ。。。プーさんのハニーハントとかの室内系はいらないです。個人的にはサンダードルフィンが好きです。
 そもそもいくらか山頂が平らな山というのは日本にもいくつかはあり、車道がつけられて山頂まで車で行かれる山もいっぱいあるのですが、苗場山は山頂は平らですが元々火山ということもあって、山頂に至るまでは緩くない、車道がつけられないガレた山なんですよね。そういうところが、この山頂部を守ってきたというところでしょうか。もし道をつけることができたら、自然環境を無視していた開発時代につけてそうです。尾瀬ももともと開発を突っ走っていたら、福島県の沼山峠から群馬県の大清水まで道路つけちゃう気でいたらしいし。もしそうなっていたら、今ごろ尾瀬沼湖畔には駐車場があり、ドライブインがあって、ビッグサンダーマウンテンが作られていたということか。。。。苗場山は守られていてよかってですが、でも正直もうちょっとだけ木道ルートを増やしてくれたらうれしい、なんて思ったりしてます。実はあれだけ広大なのに、案外歩ける箇所が少なかったりしますので。
 小屋で素泊りの受付を済ませて、夕方の撮影に出発です。私、小屋利用のときはたいてい素泊まりです。やはり撮影が主だとご飯の時間を気にしていられないので。かと言ってしっかり自炊していたらそれも時間を食うので、お湯を沸かす程度の質素なもの。菓子パンとか、コンビニおにぎりとか、カップ麺というまあ質素なものです。質素倹約なのに暴れん坊、というまさに徳川吉宗の生き写しのようです。まあ、だいたいはコーラが手に入ればあとは何でもいいのです。
 夕方はロケハンしながら坪場辺りまで行き、鳥甲山と池塘が絵になるいつもの場所で撮影。日が沈んでいく感じも秋らしくて良かったです。ここ最近は秋でも夏っぽい雲が湧いたりしてしまい、季節感が美しくない残念な日が多かったりします。日が沈んでからの静寂な雰囲気の湿原と遠くに見える岩菅山、なんていうのも渋くていいです。一歩間違えると地味に転ぶ恐れあり、ですが。夜中には一度起きて、星空撮影。明日の天気は良さそうです。
 28日、朝から快晴。谷川連峰の眺めもくっきりでした。テーブルを写した全体像は草紅葉の色をあまり強くは赤らめたくないので、朝一には撮らずにまずは池塘へ。今にも日が昇りそうな赤い線が美しいときに撮影したのが、今回のメイン写真です。朝焼けの遠くに見えるトンガリの山は皇海山です。
 その後は日が昇るにつれ、テーブルを色の良い紅葉と撮っていきます。だいたい前日にポイントを決めてあるので、一箇所ずつこなしていく感じです。なるだけ午前の光りで富士見坂あたりからの苗場山も撮りたいので、キリのよいところで下山。早くもやや雲が湧いてきましたが、なんとか。北アルプスもくっきりと見えて、絶好の撮影日和でした。

いつも時間きっちり。

 前日すでにお昼12時に時間指定してタクシーの配車をお願いしていたので、時間きっちりで私もタクシーも和田小屋で合流。だいたいこういう時、タクシーの運転手さんは、よくピッタリきたね、普通待たされることがほとんどだよ、と言われます。確かにわかる気もしますが、ピッタリ、というのもあまり褒められたものでは。。。どちらかというと、頼んだ方は早めに着く、または遅めにタクシー頼んどけと思いますよ。時々きっちりすぎて、というかギリギリまで撮影している欲深さが原因ですが、、、あと5分あったら最後に全力ダッシュせずに余裕もってバス停に到着するのに、ということが多々あります。というかほとんどです。そして、どこでその5分を作れなかったんだろうとイライラしながら焦りながら、ダッシュするのです。ダッシュで間に合ってしまう自分がイケナイのかもしれません。
 ともかくこのときの苗場山、ほのぼのと登山できて、ほのぼのと撮影できた、楽しい撮影でした。

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